第13話 〈設計者〉が“優しさを否定しない反逆”を仕掛ける

――正しい人間ほど、罠にかかる


〈設計者〉は、

〈王〉を否定しない。


それは、

戦略ではなく前提だった。


否定すれば、

この島では負ける。


〈王〉の「保護」は、

合理的だった。


疲弊した者を切り離し、

全体を守る。


数字で見れば、

何も間違っていない。


だから〈設計者〉は、

その正しさを全面的に肯定する。


最初に仕掛けたのは、

提案だった。


反対ではない。

補強だ。


「王の判断、

 間違ってないと思う」

不安層の一人に、

そう切り出す。


相手は、

少し安心した顔をする。


否定されないことが、

今は何より救いだ。


「むしろさ」

〈設計者〉は、

静かに続ける。

「もっと“早く”

 保護できたらよかったよね」


相手が、

言葉を失う。


それは、

王への批判ではない。

王の優しさが、

 足りなかった可能性を

示唆しているだけだ。


「昨日の人も」

〈設計者〉は言う。

「限界、

 もっと前から出てた」

「……」

「気づいてた人、

 多かったはずだ」

それは事実だった。


だからこそ、

胸に刺さる。


〈設計者〉は、

責任の矛先をずらす。

王ではない。


**“気づいていたのに、

 何もしなかった全員”**へ。

別の場所。


別の不安層にも、

同じ構図で話す。

「王は、

 ちゃんと守ろうとした」

「でも」

「守られる側の声、

 上がってた?」

誰も、

自信を持って首を振れない。


この反逆は、

命令を破らせない。

叫ばせない。


ただ、

自分を責めさせる。


夜。


不安層たちは、

同じ言葉を、

別々に考えている。


――王は優しかった。

――でも、

  自分たちは?


〈観測者〉の記録。

王への直接的否定:0

王の判断に対する補足意見:増加

自責発言:王派内で顕著に増加

結果:集団判断速度、さらに低下


〈王〉は、

その変化を感じ取っている。

だが、

理由が違う。


「……皆、

 思いやりを持つようになった」

そう、

解釈してしまった。


それが、

最大の誤算。


〈設計者〉は、

最後の一手を考える。


次は、

誰かを否定しないまま、

誰かに選ばせる。


王か。


仲間か。


どちらを選んでも、

秩序は傷つく。


〈共感者〉は、

この動きを見て、

気づいてしまった。


――これ、

  誰も悪くならない。

――だから、

  誰も止められない。


〈設計者〉は、

焚き火を見つめながら思う。


反逆とは、

刃を向けることじゃない。


正しさを、

 正しさのまま、

 食い合わせることだ。


王は、

まだ王だ。


だが、

王を支える理由は、

もう揃っていない。

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