第2話 全員、分かり合う気はない
全員が揃ったのは、神の説明が終わってから、しばらく経ってからだった。
無人島といっても、想像していたよりは広い。森、岩場、浜辺、小高い丘。
ご丁寧に「バトルロワイヤル用です」と言わんばかりの地形配置。
神の趣味が悪いのか、効率がいいのか、その両方なのかは分からない。
俺――INTJは、距離を保ったまま全体を見ていた。
人数は16。減っていない。
つまりまだ誰も、殺す決断をしていない。
……いや、正確には違う。
「ねえねえ! とりあえず名前交換しない?」
最初に声を上げたのは、ENFPだった。
明るい。軽い。今この状況でそのテンションを維持できるのは、ある意味才能だ。
「自己紹介しよ! 性格タイプもさ! 隠す意味なくない?」
何人かが反応した。
何人かは、露骨に視線を逸らした。
――この時点で、もう分かる。
同じルールの中にいるのに、優先順位が全然違う。
「賛成だな」
ENTJが一歩前に出た。
声がでかい。立ち位置が自然と“中央”になる。
「情報は共有した方がいい。無駄な警戒はリソースの浪費だ」
「えー、でもさぁ」
ENTPが笑いながら割って入る。
「その“共有された情報”が、どこまで正しいか分かんなくない?
そもそも神が言ってた能力、全部本当だと思ってる?」
空気が一瞬、ざわついた。
早い。
もう“定義”を揺らしにきている。
「疑うのは結構だが、行動しない理由にはならない」
ENTJは譲らない。
「ふーん。じゃあさ」
ENTPは肩をすくめた。
「君が“指揮官”だって名乗った瞬間、
真っ先に裏切られる未来も想定してる?」
俺は内心で頷いた。
ENTPは厄介だ。
戦う前から、構造を壊しにくる。
「……喧嘩はやめない?」
間に入ったのはENFJだった。
声は柔らかいのに、不思議と通る。
「この状況で対立しても、誰も得しないよ。
まずは生き残ることを考えよう」
周囲の緊張が、ほんの少しだけ緩む。
これが“感情同調”か。
無意識に、皆がこの人の言葉を聞いてしまう。
――危険だ。
集団になった瞬間、主導権を握る。
一方で、誰にも混ざらない影があった。
森の端。
ほとんど動かず、視線だけで周囲を観察している。
ISTP。
武器もない。
喋らない。
だが、立ち位置が完璧だった。
逃げ道、遮蔽物、全てを計算している。
ああいうタイプが、一番長く生きる。
「……ねえ」
今度は小さな声だった。
INFPが、胸の前で手を握りながら言う。
「これって……本当に、殺し合いをしなきゃいけないの?」
その問いに、誰も即答できなかった。
神は言った。
最後の一人が最強だと。
でも、“殺せ”とは言っていない。
言っていないが――意味は同じだ。
「……」
INFJが、遠くを見るような目で呟く。
「たぶん、誰かが最初に壊れる。
それが合図になる」
俺はその言葉に、妙な確信を感じた。
そして、その直後だった。
――気配が、一つ消えた。
「……え?」
ESFPが振り向く。
「さっきまで、ここに……」
誰だ?
全員の顔を、脳内で高速照合する。
足りない。
一人、いない。
ISFP。
音もなく、姿を消していた。
逃げたのか。
隠れたのか。
それとも――もう、戦いを始めているのか。
神の声が、再び空から降ってきた。
『ああ、言い忘れてた』
最悪だ。
『能力は、もう発動しているよ』
誰かが、息を呑む音がした。
俺は理解した。
この島では、「何もしない」ことも、もう選択じゃない。
性格は、勝手に動き出す。
止められない。
そしてたぶん――
最初に死ぬのは、一番優しいか、
一番考えすぎるやつだ。
俺は、後者でないことを祈りながら、
静かに一歩、後退した。
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