第1話 神はだいたい、説明が雑


 目を覚ました時、俺は砂浜に倒れていた。

 いや正確には、「倒れていたらしい」という記憶だけが先にあって、体はまだ状況を理解していなかった。脳だけが先に起きて、「あ、これヤバいやつだ」と結論を出している。


 こういう時の判断はだいたい当たる。外したことがない。外してたら今頃もっとマシな人生だった。

「……最悪だ」

 口に出した瞬間、自分がちゃんと声を出せていることに気づいて少し安心する。


 五感は正常。空は青い。波の音がうるさい。無人島、ってやつだろうか。修学旅行でもサバイバル番組でもない。そういう空気じゃない。


 その時、空が割れた。


 比喩じゃない。


 物理的に、空がひび割れるみたいに音を立てて、そこから――声が降ってきた。


『おはよう、人類の性格たち』

 声はやたら軽かった。


 神様ってもっと荘厳とか威厳とか、そういうのを大事にする存在だと思ってたけど、どうやらこの神は違うらしい。たぶん深夜テンションで決断してる。


『君たちはMBTI診断によって分類された、16の性格タイプを擬人化した存在だ』

 嫌な予感しかしない。


『そして今から、無人島でバトルロワイヤルをしてもらう』

 ほらな。


『最後まで生き残った1タイプが、“最強のMBTI”だ。おめでとう』

 祝う気が1ミリも湧かない。


 周囲を見ると、いつの間にか他にも人がいた。

 明らかに「こいつと同じ世界観に生きてきたとは思えない」連中ばかりだ。


 無言で状況を観察してるやつ。


 すでに誰かに話しかけてるやつ。

 「意味分からんけど面白そうじゃん」と顔に書いてあるやつ。


 目を逸らして現実逃避してるやつ。


 ああ、分かる。

 全員、性格が違う。


『ちなみに能力は、君たちの性格を基に与えてある』

 神が言った。


『強さは平等じゃない。でも欠点も平等だ』

 最悪のバランス調整だ。

 俺はその時、胸の奥に“何か”があるのを感じた。

 知識でも筋力でもない。


 「先に考えすぎて動けなくなる癖」そのものみたいな感覚。


 理解した瞬間、胃が重くなる。

 ――ああ。


 俺はたぶん、INTJだ。


 そしてこの島には、俺より厄介な性格が、あと15人いる。

 神は笑った。


『さあ、性格で殺し合おう』

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