第4章 first task【選別】
露木は俺に初仕事を依頼してきたが、安っぽい笑顔は俺の心の薄皮を容易く剥いた。
「まだ自分が龍かどうかも確信していないのに、はいそうですか。って引き受けられない」
「私が半身白龍の姿でいても然程動揺されないのに?」
改めて言われてみればそうだ。
露木が龍の姿に変化したのは驚きはしたが、逃げたくなったり失神したりはしていない。
「私と目が合えば興奮し脱皮が触発され」
「興奮!?興奮なんてしてない!!」
「私に裸体の姿で身を預け薬を塗られ」
「あれはたまたま風呂だったからだろ!?」
「私が1日現れないだけで癇癪を起こしたのに?」
「はあ!?そ、それはお前が…!!毎日しつこいのに急に連絡もよこさないから悪いんだろ!?
事故にあったのかな?とか、女に入れ込んでないかとか!!」
露木の安っぽい笑顔は、一瞬で特上の満面の笑みに変わった。鰻で言ったら松竹梅の松だ。
「私が連絡先を交換した女性と親密になっていないかと妄想され、嫉妬していただいたんですね」
露木は光栄です!と叫び俺をギュッと抱きしめた。軽いハグなんかではなく白い鱗のついた長く大きな手で俺を包み込んだ。
ドクン。ドクン。ドクン。
露木の心臓の音が聴こえる。
音なのに熱をもった塊が直接鼓膜を振動させているようで、心地良さと苦しさが剥がされた薄皮を貫いた。
「!!何やってんだ!!やめろ!!」
不味い、3秒ほど露木の腕の中の感触を堪能してしまった。咄嗟に離せと藻掻いたが更に力を込めて抱きしめられる。
「ふふふ、少しだけいいじゃないですか。私いい匂いでしょう」
「変態!!離せ!!」
「せっかく久しぶりに触れ合えたのに。仕方ないですね」
露木は寂しそうにパッと手を解き、口を尖らせた。
「久しぶり?お前とハグなんてしたことないだろ」
まさか…こいつ男もイケて、男は久しぶりという意味か?
いや、今はそんな事を言っている場合ではない。俺は欠落者を選ぶ作業なんてしない。
「信じてはいないが、西高15人の全員の人生欠落なんてさせない」
露木の顔から笑顔が消えた。蝋燭に灯った柔らかな炎がフッと一息で消された様に、余韻も残さず暗くなった。
「罪ない女性の心身を蝕んだとしていても?」
「わからないだろ。証拠がない。」
「そう仰ると思われまして。ご用意させて頂きました」
露木はやれやれとため息をつくと立ち上がり、
ポケットに入れていたスマートフォンを操作した。
トットコ♪
トットコ♪
トットコ♪
トットコ♪
露木から一気に30以上のメッセージが到着し、
スマートフォンから受信音が鳴り止まない。
「おい、一気に送るな!」
俺は露木に文句を言いながら、メッセージを開封した。露木とのトーク画面いっぱいに卑猥な画像が広がる。
それは単なる男女の絡みではない。男性が女性の手首を拘束している。違う女性は、前髪を捕まれ涙を流している。
俺は男だが、女性が嫌がる性交渉には嫌悪感を抱くタイプなので反射的に目を背けた。
トットコ♪
露木から動画付きメッセージが到着した。
俺は目を背けたままだったが、露木が俺の隣に座り直しスマートフォンを持っている手を包む。
「星様。私だってこんな事をするのは良心が痛みます。ましてや星様にこんな卑猥で下劣な人間の性交渉を見せるなんて」
「ならやめろ!こんなの見たくない!!」
露木が俺の手を片手で包み込んだまま、もう片方の手で俺の頭を優しく撫でて、そのままスマートフォンの画面に向かせた。
「二人で見たら…怖くない。怖くない」
耳元で、露木はわざと低い声で囁き俺の人差し指を再生ボタンへ誘導した。
まただ、身動きが取れない。
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