そこには誰もいなかった
☒☒☒
第1話
「みんな、あなたの悪口言ってるよ」
転校したばかりでクラスに馴染めずにいた私にとなりのクラスの女の子が教えてくれた。
名前もよく分からないけれど、合同体育とか給食の準備で廊下で見かたことのある子だった。
馴染めてはいないと思っていたけれど、こうも悪口を言われているとはっきりと示されたのはショックだった。
別に誰かに悪く言われるようなことはしていないのに、みんなで私の悪口を言っているなんて、一瞬でおなかの底から燃え上がる様にイライラが喉を這い上がり、脳みそがかあっとあつくなった。
私は、教えてくれた子のいうとおり、放課後、学校の裏庭に行った。
田舎の学校で敷地の中に坂がある。
正門から校舎まで結構急な坂になっていて、その途中に脇道にそれると、沼のある小さな空間があるのだ。
しっとりとコケに覆われた地面に、たくさんの木が生えていて、夏場の昼までも涼しい不思議な場所だった。
だけれど、放課後は生徒だけで行くのは禁止されている場所だった。
禁止されている理由について私はしらない。
よそ者だから。
「ダメです」といわれたら、「はい、そうですか」としか言えない。
これが、兄や姉がいる生徒ならば他の学年の話をきいて、誰かしら理由を知っている人に出会えただろうが、私は転校生だ。
禁止の理由はしらない。
大方、なにかしら危ないことが過去にあったからだろう。
または、今回のようにいじめに当たる行為が教師の目が届かず行われたとか。
だけれど、危険とか言っている場合ではない。
だって、みんなが私の悪口をいっているのだから。
私は何も悪いことをしていないというのに、みんなで私のことを悪く言うなんて許されていいのだろうか。
せめて、現場を押さえてやろう。
やられっぱなしでいると、いじめはもっとひどくなる。
私はいじめにあっていいような人間じゃない。
ちゃんと気づいて止められる人間だ。
今は、まだ転校したてで遠慮していただけ。
周囲をうかがって適切な距離を取ろうとしていたのに、勝手にそれを破ったのはむこうだ。
ならば、私はそんなことをしていい人間でないことを分からせてやらなければ。
私はランドセルも持たずに、裏庭の沼まで走った。
みんなで悪口をいうなんて卑怯なことは許さない。
きっといままでだってそんなことをしてきたのだろう。
他にも被害者がいるかもしれない。
そんなことを考えながら裏庭まで走る。
喉がからからで、頬はほてり、息苦しいけれど自分の頭ははっきりしているつもりだった。
裏庭に入る。
しかし、そこは思っていたより静かだ。
てっきり多くの生徒が放課後の遊び半分でそこでお喋りしながら私のことを悪く言っていると思ったのに。
そこには誰もいなかった。
ドンッ
いきなり、後ろから押された。
危うく、沼に落ちそうになる。
悪口だけではあきたらず、今度は私を突き落とそうというのだろうか。
ふと、先日よんだ少女漫画のいじめのシーンを思い出した。
スカートを切り刻まれていた主人公を思い出して私はさっと血の気が引くのがわかった。
「なにをしているんですか!」
大声がこちらにとんできた。
助かったと思った。
そして、私は叱られた。
私だけ。
そう、そこには私しかいなかった。
しばらくして、私はクラスに上手くなじむことができた。
一体だれが私を突き落とそうとしたのだろか。
今でも謎だ。
そこには誰もいなかった ☒☒☒ @kakuyomu7
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。そこには誰もいなかったの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます