EP2_異世界転移とバッドスキル



 東京駅、バスの停留所。  


修学旅行の終わりを告げる喧騒の中、俺は息を切らして集合場所に滑り込んだ。  


存在感の薄い俺のことなんて、誰も待っちゃいない。


案の定、俺以外にも遅れてきた数人を待って、ようやくバスの荷物室が口を開けた。



「うわ、重そう……佐藤、お前それ何が入ってんだよ」


「あ、いや……お土産とか、いろいろ」



 クラスメイトも土産袋を抱えているが、俺の荷物は段違いだった。


戦利品が詰まったパンパンのキャリーケースと、入り切らなかった数箱の段ボール。


 荷物を預けた者から順に、我先にと陽キャグループたちがいい席を取るためにバスへ乗り込んでいく。



 その時だった。  入り口近くにいた女子の一人が、素っ頓狂な声を上げた。



「え……? 何、これ。プロジェクションマッピング?」



 アスファルトに、見たこともない強大な光の模様が浮かび上がる。


 逃げる暇もなかった。光はバスも、東京駅の雑踏も、混乱するクラスメイト全員を飲み込み――。



 一瞬の静寂の後、目を開けると、そこは豪華絢爛な「王の間」だった。



 俺はまだ、バスに預けるはずだった大量の荷物を両手に抱えたまま、


冷たい石床の上に呆然と突っ立っていた。



「おお、勇者様方! よくぞ参られた!」



 高笑いする王の前で、クラスメイトたちの「能力鑑定」が始まった。  


クラスの主役であるリア充が『聖剣士』を、その取り巻きたちが『賢者』や


『魔法剣士』といった強力なスキルを引き当て、会場は歓喜に包まれる。



 そして、最後の一人。俺の番が来た。



「鑑定……。おや、珍しい! スキルを二つ保持しております!」


「おお! 素晴らしいではないか! して、どんな能力だ?」



 王の期待に満ちた問いに、鑑定士が眉をひそめて首を傾げた。



「えっと……一つは『ペーパー・ワーク』。無限に無くならない紙と、書いても減らない墨の入ったペンを出せる……だけ?

聞いたこともない無能スキルですな。そしてもう一つは……」



 鑑定士の顔が、恐怖に引きつった。



「『強制締切』……。国王様、これは『バッドステータス』ですぞ! 定められた時間が過ぎれば、持ち主に不幸が訪れる呪いの類です!」



「なんだと!? そんなゴミのような無能、我が国には要らぬわ!」



 さっきまでの笑顔が嘘のように、王が忌々しげに顔を歪めた。



「とっとと国外へ追放しろ! 衛兵! 運気が下がる前に、その疫病神をつまみ出せ!」



 俺は反論する間もなく、屈強な男たちに腕を掴まれた。  


せっかく手に入れた戦利品(同人誌)の山と共に、俺は異世界の冷たい路上へと放り出されることになった。


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