1話 Lv.1の魔王は戦闘に加わらないでいただきたい
結束直後の勇者パーティは、チームの連携を強めるという名目でギルドから最初の依頼を受けていた。
内容は――村の近くに出没するゴブリンの討伐。
本来なら「勇者としての肩慣らし」「チームワーク確認」程度の軽い仕事だ。
……本来なら。
「よし、じゃあ基本通りに行くぞ!」
勇者が声を張り上げる。
「戦士が前衛、俺がサポート。神官と魔法使いは後方から――」
「俺は?」
Lv.1の青年――元・魔王が、自然な顔で聞いた。
「えーと……」
勇者は一瞬言葉に詰まった。
正直、扱いに困っていた。
昨日いきなり仲間に加わった謎の青年。
職業なし、Lv.1、記憶喪失。
どう考えても後衛か、荷物持ちだ。
「……後ろで様子見。無理はするな」
「分かった」
素直すぎる返事が、逆に不安を煽る。
⸻
◆
「ギャアアアア!!」
ゴブリンの群れが、草むらから飛び出してきた。
「来たぞ!」
戦士が盾を構え、魔法使いが詠唱に入る。
――その瞬間。
目の前のゴブリン一体が、あり得ない角度で彼方へ飛んでいった。
「え?」
そして次の瞬間ゴブリンは――地面に埋まっていた。しかも頭から。
「……?」
全員が固まる。
ゴブリンを投げた張本人は、Lv.1の青年だった。
「危なそうだったから」
「な、なにした?」
「投げただけだが…力加減、間違えたか?」
青年は首をかしげる。
勇者の脳裏に、嫌な記憶がよぎった。
――魔王城で、城壁ごと兵士を吹き飛ばした、あの一撃。
「……いや、今のは忘れろ」
「分かった」
だが、忘れられるはずがなかった。
⸻
◆
戦闘は異様な速さで終わった。
剣で斬るより早く、魔法が発動するより先に、
ゴブリンたちは次々と**“事故”**に遭っていく。
・足を引っかけて転び、岩に激突
・投げた石が跳ね返って自滅
・近づいた瞬間、気圧に押されて吹き飛ぶ
「……なあ」
勇者は小声で青年に話しかけた。
「お前、無意識で魔力漏れてないか?」
「魔力?」
「……いや、いい。何でもない」
青年は自分の手を見つめる。
「正直に言うと……」
「?」
「俺、自分が弱いとは思えない」
勇者は、深くうなずいた。
「だろうな」
⸻
◆
討伐報告を終え、村を出た夜。
焚き火を囲み、仲間たちが眠りについた後。
勇者は、青年と二人きりで座っていた。
「……そろそろ話そうか」
「俺が魔王だったって話についてか?」
「…そうだ」
青年は、静かに勇者を見た。
「お前は――世界から恐れられる魔王だった」
焚き火が、ぱちりと弾ける。
「世界を壊すほどの力を持っていた。
そして、俺に倒される寸前だった。
謎の事故が起きて、世界が巻き戻るまではな」
「……」
青年は、驚いた様子もなく、少し考えてから言った。
「それで、今は?」
「Lv.1、記憶喪失の元・魔王だ」
「ふむ」
「反応薄いな!?」
「いや……妙に納得がいく」
青年は胸に手を当てた。
「理由は分からないが、
俺は“王”だった気がする」
勇者は、視線を逸らして言う。
「……それともう一つ」
「?」
「新しい魔王は、自然発生じゃない」
勇者の声が、低くなる。
「俺たちが最終決戦で起こした“事故”。
あれが、きっと世界を歪めた」
青年は、ゆっくりとうなずいた。
「なら、責任は半分ずつだな」
「…そうだな」
二人は、同時に焚き火を見る。
「――倒しに行くか」
「ああ」
Lv.1の青年――元・魔王は、静かに立ち上がった。
その背中を見て、勇者は思った。
――やっぱり、こいつは生まれながらの魔王だ。
力ではなく。
存在そのものが。
Lv.9999の魔王が事故でLv.1になって勇者パーティに加入した件について ミヤザキ @miyazaki_01
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