Lv.9999の魔王が事故でLv.1になって勇者パーティに加入した件について
ミヤザキ
プロローグ: Lv.9999の魔王、俺(勇者)の仲間になる
魔王(Lv.9999)によって世界は壊れる――はずだった
崩れ落ちる魔王城。空は裂け、雷鳴が地を引き裂き、魔力の嵐がすべてを飲み込む。
その中心で、二人の男が向かい合っていた。
「……ここまでだな、魔王」
剣を構える男――勇者。
だがその肩書きに、彼自身はいまだに慣れていなかった。
勇者は、生まれながらに勇者ではなかった。
かつて故郷の村に魔物が出て、たまたま剣を振ったら倒せて、気づけば“勇者様”と呼ばれていただけの男だ。
「そうだな、勇者よ」
一方、魔王は違う。
生まれた瞬間から、王であり、世界の敵であり、勇者に討たれる存在だった。漆黒の髪と鮮血の瞳はその証だ。
こんな、種族も立場も正反対の二人だが、互いのことを知り尽くしていた。
何年も続いた戦争。何度も刃を交え、仲間を失い、国を滅ぼし、それでも進んだ末に今の最終決戦があるからだ。
「では勇者よ…行くぞ!!!」
魔王の背後で、魔力が爆発的に膨張する。
Lv.9999。
世界が許容できる限界を、とうに超えた力。
「……来い!」
勇者が魔力を切り裂くように剣を振り下ろした、その瞬間――
光が、すべてを呑み込んだ。
⸻
◆
「――起きろ! いつまで寝てる!」
頭に、鈍い衝撃。
「痛っ!? な、なんだ!?」
勇者は飛び起きた。
そこは、魔王城でも、戦場でもない。
草原。
朝露に濡れた草。
見覚えのある――勇者結成当時の集合場所。
「夢……じゃない?」
「何を寝ぼけている。早く準備をしろ」
声の主を見て、勇者は固まった。
見覚えのある黒髪、赤い瞳。
マントを羽織った青年。
「……魔王?」
「は?」
青年は首をかしげた。
「誰だそれ。俺の名前は――」
言いかけて、青年は一瞬黙り込む。
「……名前?」
困惑した顔で、青年は頭を押さえた。
「……おかしい。思い出せない」
勇者は、嫌な予感しかしなかった。
震える手で、青年のステータスを確認する。
名前:???
種族:魔族(?)
Lv:1
職業:なし
「……は?」
「なんだその顔は。俺が何かしたか?」
その時、後方から声が飛んできた。
「おーい! 勇者様! もう一人の仲間も揃ったか?」
振り返ると、神官、戦士、魔法使い――
最初の勇者パーティが、そこにいた。
全員、若い。
誰も死んでいない。
世界は…巻き戻っている。
「なあ……お前、本当に何も覚えてないのか?」
勇者が聞くと、青年は真剣な顔でうなずいた。
「気づいたら、ここにいた。
それに……なぜか分からないが、胸がざわつく」
「ざわつく?」
「……お前を見ると、だ」
勇者の背筋が、冷たくなった。
⸻
◆
その直後、空が歪んだ。
黒い渦が生まれ、異様な魔力が溢れ出す。
「な、なんだあれは……!」
神官が叫ぶ。
渦の中から、**玉座に座った何か**が現れた。
「――我こそは、新たなる魔王」
声は、若く、傲慢で、どこか未完成だった。
「世界は一度、壊れた。
ならば、次は――私が支配する」
勇者は、剣を握り締める。
「……なるほどな」
彼は隣を見る。
Lv.1の青年――かつての魔王。
「どうやら、お前の席を奪った奴がいるらしいぞ」
「……そうか」
青年は、しばらく空を見上げてから、静かに言った。
「なら、取り戻しに行こう」
「正気か?」
「正気だ。理由は分からないが……」
青年は、勇者を見て、少しだけ笑った。
「――あいつは、気に入らない」
勇者は、ため息をついた。
「……まあ、いい。どうせ俺は、流される人生だ」
こうして――
魔王(Lv.1)は、勇者パーティに加わった。
事故の真相を探すために。
新たな魔王を倒すために。
そして、かつて世界を壊した勇者が、もう一度“世界を救う”ために。
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