第19話 【嫉妬の階層】「私のアイドルたちが『メス堕ち』しているだと……!?」 完璧NTR後の、童貞オタクくんたちで乙


「な……な、な……ッ!?」


 ネビュラ本社ビル、最上階。 帝は、モニターに映る信じがたい光景に、言葉を失い、わなわなと震えていた。


 画面の中。彼が「絶対服従」をプログラムし、最高傑作と誇っていた機巧魔人(ドール・ソルジャー)――元『スターライト・ガールズ』たちが、無様な姿を晒していた。


 鉄の処女のように無表情だったセンターのメグが、今は頬をだらしなく緩め、焦点の合わない瞳で、敵である九条ユウトの腕に自身の豊満な胸を押し付けている。


『あぁん……♡ ご主人様ぁ……♡ 私、こんなに濡れてるの……機械になったはずなのにぃ……♡』


 その姿は、「戦闘兵器」などではない。 完全に「オス」の魅力に屈服し、開発され尽くした「メス」の顔だった。 さらに、彼女たちはあろうことか、モニターの向こうにいる「元・飼い主」の帝に向かって、残酷な言葉を投げかけてきた。


『帝……♡ ねえ見てますかぁ? お前の命令(コード)ねぇ、冷たくて痛くて、ずーっと嫌いだったのぉ』

『ごめんなさいねぇ……♡ 私たち、もう「アイドル」に戻れません。……だってお腹の奥が、この人の魔力(あじ)を覚えちゃったんですものぉ……♡』


 メグが、ユウトの指先を口に含み、いやらしく舌を絡める。 それは、帝が見たこともない艶かしく、そして幸福に満ちた表情だった。


「バカな……! ありえん! 彼女たちの他の男に対する性欲など除去したはずだ! それを、たかが一介の支援魔法が、『女』として再起動(リブート)させただと……!?」


 ガシャーン!!  帝は「女をアテンドしたお礼に」とメジャーリーガーからもらったサインボールをモニターに投げつけた。 硝子の破片が散る。だが、画面の中の愛欲劇は止まらない。


 悔しい。腹立たしい。 何より許せないのは、自分が「家畜」として管理し、磨き上げてきたコレクションが、「ただの支援師」によって「女」の喜びを知り、帝の元にいた時よりも遥かに美しく輝いているという事実だ。


 それは、「お前の管理より、俺の愛撫の方が彼女たちを輝かせられる」という、オスとしての完全敗北の証明。


「くそっ……! NTR(寝取られ)だと!? この私が!? 私が手塩にかけて育てた家畜を、あんな薄汚い男が……ッ!!」


 帝の絶叫が虚しく響く。 彼女たちはもう、二度と帝の元へは戻らないだろう。  あの蕩けた顔は、知ってはいけない蜜の味を知った顔だ。


「……いいだろう。 そこまで『女』になったのなら、相応しい相手をぶつけてやる」


 帝は血走った目で、ユウトたちのいるフロアのひとつ上、2階層のモニターを操作した。 そこに映るのは、ヘドロのように澱んだ空気の中で蠢く、無数の影。


「女を知らぬまま、女に飢え、社会に絶望して死んでいった弱者たち……。 彼らの『嫉妬』と『性欲』は、お前たちが浮かれている『愛』などよりも遥かに重く、呪わしい」


 帝は歪んだ笑みを浮かべた。 ユウトは今、7人の美女ハーレムを引き連れ、イチャつきながら階段を登ってきている。 そんな「リア充」の極みのような男が、女に飢えた亡者たちの巣窟に足を踏み入れたら、どうなるか。


「食い殺せ。……お前たちが欲しくてたまらなかった『女』を独占し、あまつさえ私のアイドルを堕落させた男を、八つ裂きにしてしまえ!」


◇◇◇


 1階ロビーを制圧した俺たちは、脈動する肉の階段を上っていた。 背中には、まだ余韻に浸っている元アイドルたちが、ひっつき虫のように張り付いている。


「んぅ……ご主人様、いい匂い……♡」

「ねえ、次は私、お尻の方も攻められたいんだけど……♡」


 ……やれやれ。帝の洗脳(と性欲抑制)の反動が凄まじいな。 彼女たちは今、抑圧から開放された反動で「発情期」のような状態にある。


「……ユウト様。彼女たち、少しはしゃぎすぎです」

「そうね。後で序列(ランク)を教えてあげないと」


 ミナとレナが、少し頬を膨らませて嫉妬している。 だが、そんな甘い空気もここまでだ。


「……止まってくれ。空気が変わった」


 俺が指差した先。 階段の踊り場の向こうから、じっとりと湿った、不快な空気が漂ってきていた。 それは、先程までの華やかなアイドルの残り香とは真逆の――腐った生ゴミと、エナジードリンク、そして古びた紙のような匂い。


「ここは、帝の帝国の『土台』にされた連中が詰め込まれている」


「土台……?」


「ああ。ネビュラの繁栄を支えていたのは、表舞台のアイドルだけじゃない。……夢を食い物にされ、搾取され、捨てられた数万人の『弱者男性』たちだ」


 探索者になれば、金が稼げる。女にモテる。アイドルと付き合える。そんな甘い広告に釣られ、ネビュラに入社したものの、最後は「行方不明」として処理された男たち。  


 つまり――佐藤健太と同じ、「人柱」にされた被害者たちだ。あまりのおぞましい光景にコメント欄は沈黙を貫いている。


「彼らの無念が、ダンジョンの魔力と混ざり合って、強力な魔物に変異している。  ……気をつけてくれ。ここから先は、ドロドロした『怨念』と『嫉妬』の世界だ」


 俺の警告に、メグたちアイドルが青ざめて身を寄せ合う。 彼女たちも本能で感じ取っているのだろう。 かつて自分たちを熱狂的に応援し、そして裏返った愛情で攻撃してきた「ファンの負の側面(アンチ)」のような気配を。


「行きましょう。ユウトがいれば、どんな悪意も怖くないわ」


 レナが毅然と前を向く。 俺たちは頷き合い、二階層エリアへの扉を開け放った。


 ギギギィ……。


 重い扉が開くと、そこは異様な空間だった。 オフィスフロアのはずなのに、窓は黒い粘液で塗り潰され、床には無数のPCモニターや、破れたアイドルのポスター、フィギュアの残骸が散らばっていた。 まるで、荒れ果てたインターネットカフェと、ゴミ屋敷を融合させたような光景。


 そしてなにより壁や床の至るところから、怨念と嫉妬を象徴するかのように屹立したぺ〇スの形をした肉塊。いや……それが、「本物のペ〇スかどうか」を確認するには不潔すぎるものが飛び出ている。いまにも白い液体を発射しそうだ。


『オンナ……オンナァ……』

『許サナイ……リア充……死ネ……』


 部屋の隅、デスクの下、天井の隙間。 あらゆる「陰」から、”それら”が湧き出してきた。


 猫背で、肌は土色。目は充血し、口からは怨嗟の言葉を垂れ流す人型の魔物。  『ジェラシー・グール』。 その数は、優に数百を超えている。


『俺タチハ……選バレナカッタ……』

『ズルイ……ズルイ……ズルイ……ッ!!』

『アアア……オレノヨメ……オレノヨメ……メグタァ⤴⤴ン!!』

『ドウテイナメンナ』

『シ……ボウフラグ…デ…オツ……』



 彼らの視線が、俺に侍る7人の美女たちに突き刺さる。 得られなかったものへの渇望と、それを独占する者への、どす黒い嫉妬の炎だ。


「ひッ……! こ、こっち見ないで!」

「いやぁぁ! その目、嫌い! 握手会の時の……剥がし損ねた厄介オタクと同じ目!」

「視姦されてる……!」

「ヌ……ヌいてあげたら落ち着くかな!?!?」


 メグたちが悲鳴と困惑の声を上げて俺の背中に隠れる。だが、俺は逃げない。逃げる必要がない。


「……哀れな連中だ」


 俺は静かに杖を構えた。 彼らも被害者だ。帝に夢を見せられ、搾取され、最後はこんな姿にされた。 その怒りの矛先を、間違った方向(ヒロインたち)に向けさせられている。


 必要なのは「討伐」じゃない。 彼らが死ぬまで満たされなかった「渇き」を癒やすことだ。


「……大丈夫だ。ここも俺の『楽園』に変える」


 俺は一歩前に出た。 殺意と嫉妬の濁流を、正面から受け止める。


「おい、お前ら! そんなに女が憎いか! 羨ましいか!」


『ウラヤマシイ……! 妬マシイ……! 俺タチニハ……何モナイ……!』

『ケツ…ノ…ウシロ…カラ…ブチコミタイィィイ!』

『イヤイヤ……オレノヨメ……オレノヨメ……メグタァ⤴⤴ン!イヤ

『ム…ム…セン…セッショクゥゥ…ジタイィィ!!!!!』


「そうか。……なら、教えてやるよ」


 俺はニヤリと笑い、背後の美女たち――怯えながらも、俺を信じて見つめるヒロインたちを指差した。


「ここにあるのは、帝が独占していた『極上の夢』だ。 お前らが人生で一度も味わえなかった、最高の『快感』と『癒やし』……俺が特別にプレゼントしてやる!」


 嫉妬に狂う童貞モンスター軍団 VS 全人類を気持ちよくする最強の支援師。  帝が仕組んだ最悪のマッチメイク。 だが、俺には勝算しかなかった。


「準備はいいか、みんな。……今度は、少し『マシマシ』&『濃いめ』で行くぞ」


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#19お読みいただきまして、ありがとうございます!

#20は1月11日17:20 #21は1月11日19:20 に公開予定です!


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