第9話 【略奪】元パーティが起死回生でSランク『鉄壁の姫』を勧誘した結果→「あなたたち、弱すぎて話にならないわ」と秒で振られて俺の元へ来ました


「くそっ……! なんでどいつもこいつも俺たちを無視するんだ!」


 銀座にある高級冒険者向けサロン。 かつてはSランクパスで顔パスだったこの場所に、カズマたちは一般客として入店し、必死の形相で声を張り上げていた。


「頼むよ! 俺たちには『盾(タンク)』が必要なんだ! 報酬は弾むからさ!」


 カズマが声をかけているのは、全身を白銀のフルプレートメイルに包んだ小柄な少女だった。  彼女の名は、ミナ。  巨大なタワーシールドを軽々と操り、どんな攻撃も通さないことから『鉄壁の姫』と呼ばれるSランク探索者だ。


「……お断りします」


 ミナは兜を外すと、冷ややかな視線をカズマに向けた。 ショートカットの黒髪に、意志の強そうな瞳。その顔には露骨な不快感が浮かんでいる。


「『ジャスティス・ブレイブ』……でしたっけ? 先日、Sランク剥奪処分を受けた落ちこぼれパーティですよね?」


「ぐっ……! そ、それは一時的なもんだ! お前みたいな強力なタンクがいれば、すぐに返り咲ける!」


 カズマが食い下がる。 今の彼らにとって、ミナは最後の希望だった。 アリスのヒールは間に合わず、リナの火力も落ちた今、敵の攻撃を完璧に防げるタンクがいなければ、Dランクダンジョンですら命懸けなのだ。


「悪い話じゃないだろ? 俺と組めば、また人気が出るぜ? 俺のカリスマ性は健在だ」


「カリスマ? ……笑わせないでください」


 ミナは冷たく吐き捨てた。


「あなたたちの配信、見ましたよ。……支援師の方を追放してから、無様極まりないですね。敵の攻撃すら避けられない前衛なんて、守る価値もありません」


「なっ……!?」


「それに……私が興味あるのは、あなたたちじゃありません」


 ミナの視線が、カズマたちの背後――入り口付近に向けられた。 そこには、買い物に来ていた俺とレナが立っていた。


「あ……! ユウト様……!」


 ミナの表情が一変した。 先程までの氷のような冷徹さが消え、パァッと花が咲いたような乙女の顔になる。 彼女は重い鎧をガシャンガシャンと鳴らしながら、俺の元へ小走りで駆け寄ってきた。


「ユ、ユウト様ですよね!? 『伝説の支援師』の! 昨日の配信、見ました! スパチャも投げました!」


「え? あ、どうも……」


「ユウト様、お願いがあります! 私を……私を、あなたのパーティに入れてください!」


 ミナが俺の手を両手で握りしめ、上目遣いで懇願してくる。 その光景に、カズマたちは口をあんぐりと開けていた。


「は……? おいミナ! そいつは俺たちが捨てたゴミだぞ!? なんで俺たちよりそいつを選ぶんだよ!」


「ゴミ? ……訂正してください」


 ミナが振り返り、カズマを睨みつける。その殺気に、カズマがヒッと悲鳴を上げて後ずさる。


「ユウト様は、レナさんの潜在能力を引き出し、深層ボスを一撃で葬らせた天才です。……あなたたちのような、彼の足元にも及ばない凡人が侮辱していい相手じゃありません」


 ミナの言葉は、鋭利な刃物のようにカズマたちのプライドを抉り取った。 Sランク冒険者からの、明確な「格付け」。 カズマは顔を真っ赤にして、ワナワナと震えている。


「く、くそぉぉぉ! 覚えてろよ! 後悔させてやる!」


 捨て台詞を吐いて、カズマたちは逃げるようにサロンを出て行った。  ……哀れな奴らだ。


「……ふん。泥棒猫ね」


 隣でレナが不機嫌そうに呟く。 彼女は俺の腕に抱きつき、ミナに対して威嚇の視線を送っていた。


「私のユウトよ。タンクなんていらないわ。攻撃される前に私が殺すもの」


「そ、そんなこと言わずに! 私、硬さには自信があります! ユウト様の盾として、どんな攻撃も受け止めてみせますから!」


 ミナも負けじと俺の反対側の腕を掴む。 右にSランクアタッカー、左にSランクタンク。 サロンの客たちからの視線が痛い。


「……はぁ。とりあえず場所を変えようか。……君のその『硬さ』、どれくらいのものか試させてもらうよ」


 俺の言葉に、ミナは頬を赤らめ、力強く頷いた。


「はいっ! 私の鉄壁、ぜひユウト様の手で……こじ開けてください!」


 ……言い方が誤解を招くんだよな、この子たち。 俺は二人の美少女を引き連れ、個室のトレーニングルームへと向かった。

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