第5話 【炎上】元パーティが「バフなし」でSランクダンジョンに挑んだ結果、雑魚モンスターにボコボコにされて放送事故になりました

「ん……ユウト、あーん」


 六本木タワマンの最上階。 イタリア製の高級ソファで、俺はSランク美女の神代レナに膝枕をされていた。 レナは最高級のブドウを俺の口に放り込みながら、とろんとした瞳で俺の髪を弄っている。


「……おいレナ。距離が近いぞ。あと、このブドウ一房でいくらするんだ」


「一万円くらい? ……ねえユウト、もう一回『メンテナンス』していい? さっきの余韻が消えてきて、また身体が疼くの……」


 レナが艶めかしい手つきで俺の胸板をなぞる。 昨晩、あれだけ濃厚な魔力循環(マナ・サーキュレーション)を行ったというのに、彼女の「渇き」は収まるどころか増しているようだ。Sランクの燃費の悪さには呆れるしかない。


「今はダメだ。……ほら、始まるぞ」


 俺は彼女を宥めつつ、壁一面の巨大モニターに視線を向けた。 画面には、動画配信サイト『D-Tube』のトップページが表示されている。


『【緊急生配信】ジャスティス・ブレイブ、Sランク「新宿大深度地下」攻略! アンチ黙ってろ、これが実力だ!』


 俺を追放したカズマたちの配信だ。 同接は5万人。炎上騒ぎのおかげで注目度は高いが、コメント欄は荒れに荒れている。


『バフなしでSランクとか自殺志願者か?』


『昨日の神配信見たあとだと、こいつらがショボく見えるわ』


『お手並み拝見』


 画面の中で、カズマがカメラに向かってイキり散らしていた。


「ようお前ら! 今日は俺たちだけで、新宿ダンジョンの深層ボス『アダマンタイト・タートル』を狩るぜ! あの役立たずの支援師がいなくなって、動きが軽くなったところを見せてやるよ!」


 後ろで聖女アリスと魔導師リナも手を振っている。  ……馬鹿な奴らだ。  俺はため息をついた。


「『アダマンタイト・タートル』は物理無効、魔法耐性特大の要塞タイプだ。倒すには、リナの貫通魔法を俺のバフで威力3倍にしなきゃ通らない。それに、あいつのブレス攻撃は、俺がカズマの俊敏値を上げてないと避けられないぞ」


「……ふふ。ユウトがいなきゃ、あんなのただのサンドバッグね」  


 レナが冷ややかに笑う。


 そして、戦闘が始まった。


「オラァ! 死ねカメ野郎!」  


 カズマが大剣を振り下ろす。  


ガギィィィン!!  


 硬質な音が響き、カズマの手が弾かれた。亀の甲羅には傷一つついていない。


「なっ!? 硬ぇ! おいリナ、魔法だ!」


「わ、わかってるわよ! ――『フレア・ランス』!」  


 リナが炎の槍を放つ。だが、亀の魔法障壁に阻まれ、小さく爆ぜただけだった。


「うそ……!? いつもなら貫通するのに!?」  


 リナが悲鳴を上げる。 当たり前だ。今までは俺が【魔法貫通付与(ペネトレイト)】をかけていたんだから。


『あれ? 弱くね?』


『全然効いてないじゃんw』


『いつも一撃で倒してたのに、やっぱりバフのおかげだったんじゃ……』


 コメント欄の空気が変わる。 焦ったカズマが無謀に突っ込む。


「うるせぇ! 気合で割るんだよ!」  


 その瞬間、亀が口を開け、圧縮された水流ブレスを放った。


「カズマ、避けて!」  


 聖女アリスが叫ぶ。 だが、カズマの反応速度は「通常通り」だった。俺の加速バフがない彼は、迫るブレスを目で追うことすらできていない。


ドゴォォォォォン!!


「ぐあぁぁぁぁっ!?」  


直撃。  


 カズマがボロ雑巾のように吹き飛び、壁に激突した。 鎧が砕け、HPバーが一気にレッドゾーンへ突入する。


「カ、カズマ!? いやぁぁぁ! 回復、回復しなきゃ!」  


 アリスがパニックになってヒールをかけるが、その回復量は微々たるものだ。俺の【回復量増幅】がない聖女のヒールなど、深層では絆創膏レベルでしかない。


「い、痛ぇ……! なんでだ……!? なんで避けられねえんだよぉぉ!」  


 カズマが涙目で這いずり回る。


『うっわ、弱っ』

『これ放送事故だろ』

『見てらんない、誰か助けてやれよ』

『ユウト君が偉大すぎた件について』

『同接5万人に見守られながらボコられる勇者www』


 画面の向こうで、彼らの「メッキ」が剥がれ落ちていく。 これが現実だ。 俺という土台を失った彼らは、Sランクどころか、Cランクの冒険者にも劣る素人集団でしかなかった。


「……ユウト。行く?」  


 レナが俺を見上げる。 彼女の目には、同情など微塵もない。ただ、俺の判断を待っているだけだ。


「……そうだな」  


 俺は立ち上がった。 助ける義務はない。だが、このまま彼らが全滅して配信が終われば、俺の「凄さ」の証明も中途半端に終わってしまう。  


 それに――どうせなら、一番いいところで「格の違い」を見せつけてやるのが、最高の復讐だ。


「ドローンを準備しろ。……本物のSランク攻略を、教育してやる」


 ◇◇◇


 新宿ダンジョン、地下20階層。 カズマたちは絶望の中にいた。


「はぁ、はぁ……! なんで死なねえんだよコイツ!」  


 カズマは全身血まみれで、剣を杖にして辛うじて立っていた。 リナは魔力切れで座り込み、アリスは恐怖で泣き叫んでいる。


「もう嫌ぁ! 帰るぅぅ! お化粧が崩れちゃうぅぅ!」


「無理よ……転移結晶を使う隙がないわ……!」


 目の前には、無傷のアダマンタイト・タートル。 亀がゆっくりと口を開け、トドメのブレスをチャージし始める。


「くそっ……! 俺は……俺は選ばれた勇者なんだぞ……! こんなところで……!」


 死ぬ。  その恐怖がカズマの脳裏をよぎった、その時だった。


『――おいおい、無様だなあ。元リーダー?』


 天井から、聞き覚えのある、気の抜けた声が降ってきた。 同時に、閃光が走る。


 ズドンッ!!  


 亀の目の前に、何かが着地した。 舞い上がる土煙。 その中から現れたのは、ユニクロのパーカーを着た男と、ドレス姿の美女だった。


「ユ、ユウト……!?」


 カズマが目を見開く。 俺の周りを、小型ドローン『ハチ公』が旋回し、その姿をバッチリと映し出していた。


「救援に来てやったぞ。……感謝しろよ、配信のネタにしてやるからさ」


~~~~~~~~~~

#4&#5、お読みいただきましてありがとうございました!


#6『【格付け】死にかけの元パーティの前で、Sランク美女を『限界突破』させたら、圧倒的すぎて言葉を失いました』は1月5日19:20  


#7『【Sランク昇格】ギルド「君の実力を見誤っていた」と掌返し。一方、元パーティ「Sランク詐欺」で活動停止処分に』は1月5日22:20


に公開です!


「続きが気になる!」と思っていただけたら、

作品フォローをお忘れなく!


「いいぞもっとやれ」と思っていただけたら、

【★】での応援をよろしくお願いします!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る