第4話 【同棲】六本木タワマンの最上階で、Sランク美女が「禁断症状」に震えている。……仕方ないので、夜の『濃厚メンテナンス』をしてあげました

「……ここが、お前の家か?」


 俺が連れてこられたのは、六本木にある超高級タワーマンションの最上階だった。 広すぎるリビング、足元に広がる東京の夜景、イタリア製の高級家具。 公園でのホームレス生活から一転、俺は現代の宮殿に立っていた。


「シャワー浴びてきたわ。……君も浴びてくれば?」


 バスルームから出てきたレナは、サイズの大きなワイシャツ一枚という、男の夢を具現化したような姿だった。 濡れた銀髪から滴る水滴が、透けたシャツの襟元に吸い込まれていく。 その隙間から見える鎖骨と、豊かな胸の谷間に、俺は思わず視線を逸らした。


「……ありがとな。でも、なんでそこまでしてくれるんだ? 命の恩人とはいえ、拾った男をいきなり家に上げるなんて」


「……言ったでしょ。私の身体、君の魔力を覚えちゃったの」


 レナが俺に近づき、シャツの裾をギュッと握る。 彼女の頬は、風呂上がりだからというだけでなく、どこか熱っぽく紅潮していた。


「あの『支援』を受けてから……身体の奥が疼いて、じっとしてられないの。……ねえユウト、もう一回して?」


「は? ここでか? モンスターもいないのに?」


「『メンテナンス』よ。……私の乱れた魔力回路、君の魔力で埋めて、整えてほしいの」


 レナが潤んだ瞳で懇願してくる。 いわゆる「禁断症状」だ。 俺の【限界突破支援】は、強制的に回路を広げるため、効果が切れると血管が収縮するようなダルさと渇望感に襲われる。 これを鎮めるには、再び俺の魔力を適量流し込み、徐々に身体を慣らすしかない。


「……わかった。医療行為だと思って我慢しろよ」


 俺は彼女をソファに座らせ、その背中に回った。 シャツ越しに伝わる体温。彼女は期待に身体を震わせている。 俺は両手を彼女の肩に置き、ゆっくりと魔力を流し込んだ。


「――【魔力循環(マナ・サーキュレーション)】」


 戦闘用のような爆発的な出力ではない。 トロトロとした濃密な魔力を、指先から彼女の神経へと優しく浸透させていく。


「あ……っ♡ んぅ……♡」


 レナが背中を反らし、甘い吐息を漏らす。 俺の魔力が通るたびに、彼女のビクビクと脈打っていた神経が鎮まり、代わりに蕩けるような安らぎが広がっていく。


「あぁ……気持ちいい……。ユウトの魔力……温かい……♡」


「こら、変な声を出すな。ここは防音だろうけど、近所迷惑だぞ」


「だって……奥まで……染みてくるんだもん……♡」


 彼女は恍惚の表情で、俺の手に頬を擦り付けてくる。 その姿は、『氷の女帝』と呼ばれた孤高のSランク探索者とは程遠い、ただの「快感に忠実な猫」のようだった。  ……これが全世界に配信されなくて本当によかった。


「……ふぅ。これで落ち着いただろ」


「……ん。ありがとう……。でも、これ……毎日してくれないと、私、ダメになりそう……」


 レナは俺の腰に抱きつき、とろんとした目で上目遣いをしてくる。 どうやら俺は、とんでもない美女を依存させてしまったらしい。


 その時、テーブルに置いてあった俺のスマホが震えた。 SNSの通知だ。


『緊急告知! 明日、ジャスティス・ブレイブが「Sランク深層」攻略配信を行います! アンチを見返す神プレイを見逃すな!』


 カズマのアカウントだ。 炎上を実力でねじ伏せるつもりらしい。 だが、俺は知っている。彼らが挑もうとしているエリアは、俺の「バフありき」で計算していたルートだということを。


「……馬鹿な奴らだ」


 バフなしであそこに行けばどうなるか。 俺は哀れみすら感じながら、画面を閉じた。 明日、また一つ「放送事故」が起きる予感がした。


~~~~~~~~~~

お読みいただき、ありがとうございました!

#5は1月4日22:20に公開予定です!(本ページは#4です)


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