≪Data_no.0088≫ 刺激物は生命(いのち)の味
旅の途中で見かけたその建物は、半分だけ地上に顔を出していた。
コンクリートの壁に、色あせた文字。
”SUPER MEGA MART”
「……巨大市場の跡です」
ロボットが淡々と分析すると、男は目を輝かせた。
「スーパーか!
なあ相棒、ワンチャン缶詰とか残ってないかな?」
「期待値は極めて低いです。
そもそも、消費期限という概念をご存じですか」
「知ってるけど、希望ってやつだよ」
二人は崩れかけの入口から中に入った。
棚は倒れ、床には空き缶と砂が混じっている。
「うわあ……こりゃはもう、文明の墓場だな」
男は歩きながら、突然立ち止まった。
「……おい」
「何でしょう」
「これ見ろ」
男が指差した先には、奇跡的に倒れず残った棚があり、
その一角に、箱が積まれていた。
箱の中にはいくつものアルミ袋が入っている。
「激辛チャレンジスナック……?」
ロボットは袋に書かれている成分表を読み取る。
「カプサイシン含有量、異常。
人間の生存率を下げる食品です」
「よし、食おう」
「やめてください」
男は袋を取り出した。
「ほら、世界が終わった今だからこそさ。
こういう無意味な挑戦が……」
バリッ。
五秒後、男は床に転がった。
「かっっら!!!!!
あっ、無理無理無理!!」
「警告しました」
「水! 水はないのか!?」
「文明と一緒に消えました」
「くそっっっ!!」
男は悶絶しながら、しばらく転がり続けた。
十分後。
「……なあ相棒」
「何でしょう」
「俺さ、生きてるって実感したわ」
「激辛による痛覚刺激を、生存確認と定義しますか」
「そうとも言う!」
ロボットは、その会話をログに残した。
《人間は、無意味な行為によって生を確認することがある》
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます