第9話 手をつなげば実質デート
昨日の試験であんなことがあったせいか、今日は学院全体が臨時休校になった。
「ラッキー! ニコ、どっか遊びにいくか?」
部屋で着替えながら、ウキウキした様子のダルがニコくんに声をかける。
私にも経験があるけど、授業が臨時休講になったりするとテンション上がるよね。
ニコくんもちょっと嬉しそうな表情で答えた。
「そうだね、ダル。あ、そうだ。モエさんどこか行きたいところあります?」
「え、わ、私!?」
「モエさんは違う世界から来たんですよね? せっかくだから案内します」
「お、それいいじゃん。イモエの歓迎会も兼ねて街に出ようぜ!」
ふぁっ!? いきなりのお出かけなんて、引きこもり陰キャコミュ障にはハードル高スギィ!
でもニコくんのキラキラした眼差しは、とても断れる空気じゃない。
「あ、あの……じゃあ学院内の案内から、お願いしよう……かな」
「わかりました。ダル、まずは学院内の案内からでいい?」
「そうなん? でもニコが言うならそれでいいよ!」
ダルはにっこり笑うと「ニコも早く着替えなよ」と準備を急かす。
ほんと、ニコくんって頼まれたら断れない性格だよね。
しかしなんだかんだ言って、ダルもニコくんに合わせてくれる辺り、実は性格いいのかも。
ニコくんに手を引かれ、私たちはノーブル魔法学院の敷地内を歩き回る。
こ、これって実質デートってこと!?
「ここが死霊術科の教室棟です。隣が強化魔法科、奥が治癒魔法科です」
広いグラウンドをL字型に囲むように建てられた、4階建ての教室棟。
昨日は寮から実技教練場に直行したので初めて見る風景だけど、懐かしい感じがするのは前世の小学校みたいな雰囲気があるからかな。
「この世界の魔法って、どんなのがあるの?」
「そうですね。死霊を操る『死霊術』、傷や病気を治す『治癒魔法』、騎士や兵士が自分の肉体を強化する『強化魔法』の3つです」
「
ニコくんの言葉を補足するようにダルが続ける。
魔法のエキスパートか……戦争中はそのまま戦場に行ってたんだろうね。平和になって本当によかったよ。
そこで私は、気になっていたことをニコくんに尋ねた。
「えっと、火や氷で攻撃する魔法はないの?」
「う~ん、聞いたことないですね」
「あれ、じゃあ試験の時レヴォーンが使っていた稲妻は?」
「ああ、あれは魔力の塊を鋭利な刃物のようにして飛ばす技らしいです」
魔力量の多い高位の死霊、特にリッチーがよく使う攻撃だそうだ。
そう考えると、私の『燃やす』や『爆発』の能力って本当にレアなんだね。
案内してもらいながら、私はもうひとつ気になっていたことをニコくんに尋ねてみる。
「あ、あのね、ニコくん……これ、嫌じゃ……ない?」
「これって?」
私はおずおずと、ここまで1時間ほどニコくんとつないでいる右手を上げた。
心臓は動いてないはずなのに、なぜか顔が熱くなってくる。
ニコくんは驚くような表情を見せたあと、下を向いて答えた。
気のせいか、ニコくんの耳が赤くなっている気がする。
「いや、その……僕は大丈夫です。モエさんは嫌ですか?」
「へ? わ、私!?」
私は異性と人前で手をつなぐなんて経験、前世では一度もなかった。
周りからは見えないんだろうけど、本当はすごく恥ずかしくて緊張しまくりなのだ。
でも、ニコくんの手はいつも温かくて、すごく安心するんだよ。
「い、嫌じゃ……ない、よ」
「むしろ嬉しい」という本音は恥ずかしくて言えなかった。
この気持ちは使い魔補正に違いない。多分、きっと。
ニコくんは、私がポンコツ使い魔だから仕方なくつないでくれてる……んだよね?
「イモエはニコのお気に入りだもんな!」
「なに言ってるんだよダル!?」
「だってその左手してる時のニコ、楽しそうだし」
にひひと笑うダルの発言に素っ頓狂な声で返すニコくん。
私は羞恥心に耐えられず、つないだ手を離してしまった。
「あ~オレもイモエの顔を見てみたいなぁ。可愛いんでしょ?」
ふぁっ!? 何いってんのこの陽キャは!
あんたが見たいのは私のパンツでしょ!
「だ、駄目だよダル」
「え~ニコだけズルいじゃん」
「と、とにかく駄目なもんは駄目だから!」
ニコくん、必死に注意してくれてありがとう。
ほんと、不純な動機の中坊はお引き取りください。
「……だって、モエさんは僕の……」
「なあ、やっぱり街まで行かね? 前から気になってた店があってさ」
小声で何か言いかけたニコくんに被せるように、呑気な口調で提案するダル。
ニコくんはそのまま口を噤むと、私から目をそらして黙ったまま頷いた。
うう、変な気を遣わせてしまってごめんよニコくん。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます