第11話
その時、エマさんが、手を打ち合わせた。
「そうだ、今度私の誕生パーティーを開くんですけど、皆さん来て頂けますか?」
「えっ、いいんですか?」
「私のお友達も、エリザベス先生のファンがいるんですよ。みんな喜びます」
「そのパーティー、僕も行ってもいい?」
エディが、横から口を挟んできた途端、エマさんの顔がぽっと赤くなった。
「…も、もちろんです。ブライトン子爵様…」
「わあ、ありがとう。パーティーはいつなのかな?」
「…あ、明後日です…」
エディと話している時のエマさんは、頬を赤く染めながら恥じらう、まさに恋する乙女であった。
どうやら彼女は、美形で有名なブライトン子爵に、一目惚れしたらしい。
「…あら、もうこんな時間だわ。そろそろ失礼しなくては」
エマさんは椅子から立ち上がった。
エディがすかさず申し出た。
「ご令嬢、僕が部屋まで送りましょう」
エマさんは嬉しそうな顔になった。
「あら、そんな。…じゃあ、お願いします。ブライトン子爵様」
私達は、ドアの前で彼女を見送った。
「パーティーの招待状は、後から届けさせます。それでは皆さん、ごきげんよう」
エマさんは優雅にお辞儀をすると、エディと一緒に立ち去った。
「ふふふ…ライバル出現ですね。エリザベスさん」
アレクシアさんが、ニヤニヤしながら言った。
「…油断してると、危ないかもしれないわよ。なにせ相手は、若くて美人の公爵令嬢ですからね」
ジュリアンまで、おかしな事を言い出した。
「ところで、エマさんに渡す、プレゼントをどうしようか?」
私の返事を聞いて、ジュリアンとアレクシアさんは、顔を見合わせた。
「…何も感じてないみたいですね」
「この手の事には鈍いと思ってたけど、ここまでとはねえ…」
2人はひそひそと、内緒話をしていた。
2日後の午後。
私達はリヴァーデイル城に、5人揃って参上した。
リヴァーデイル城は、大きな湖のほとりにある、美しいお城である。
「天気のいい日は、湖面にお城が映るのが見えるそうですよ。綺麗でしょうね~」
アレクシアさんが、ガイドブックで仕入れた知識を披露した。
「ようこそ、リヴァーデイル城へ。みなさん、来て下さってありがとうございます」
ドレス姿のエマさんは、美しく光り輝いていた。
「エマさん、お誕生日おめでとうございます。これ、私達からのプレゼントです」
私は、彼女にプレゼントの入った箱を渡した。
「まあ、ありがとうございます。では中へどうぞ」
大広間には、既に数人の若い女性達が、集まっていた。
私達が入って行くと、女性達は、一斉にこちらに近づいて来た。
「まあ、本物のエリザベス先生だわ。…本当に、月の女神のような美しさね」
「お目にかかれて光栄です。…あの、この本にサインを頂けますか?」
「アレクシア先生ですか?私、あなたの作るぬいぐるみが、大好きなんです」
「…あ、ありがとうございます」
私とアレクシアさんは、女性達に囲まれて、まるで有名人のような扱いを受けていた。
エディは、自分の自慢の美貌が、女性達にまるっきり効果を発揮していない事に、ショックを受けたようだ。
「…何だか、僕、男としての自信を無くしそうだよ…」
人の輪の外で、しょぼんとしている従兄を、マギーさんが慰めている。
「まあまあ、子爵様。今回は相手が悪かったんですよ。ここにいるご令嬢達は、みなさん、エリザベス様のファンなんですから」
「そうですよ。今回の事だけで、子爵様の男としての魅力が無くなった、という事にはなりませんよ」
ジュリアンにも、元気付けられていた。
エディは、彼女達の言葉で、少し自信を取り戻したようだ。
「…そうかな?」
「そうですよ!」
「…そうか。ありがとう、2人とも。…じゃあ、僕は気晴らしに、その辺をちょっと歩いて来るよ」
エディはそう言うと、大広間を出て行った。
招待客が、勝手に場内を散策してもいいのだろうか。
まあ、エディの事だから、招かれたお宅で、妙な真似はしないだろう。
私はそう思い、再びご令嬢達との会話に戻った。
――エドワードは、のんびりとリヴァーデイル城内を探検していた。
城内の人々は、彼を見ても、令嬢の誕生パーティーの招待客だと知っているのか、特に何か言ってくる者はいなかった。
彼は、誰にも咎められることなく、城内を好きなだけ散策する事ができた。
そして、エドワードは、図書室の前に辿り着いた。
「…いるとしたら、ここかな…」
独り言を言いながら、彼は図書室の中に入って行った。
「…おお、さすがは公爵家の図書室だ。凄い蔵書の数だな」
リヴァーデイル城の図書室は、広い空間に、天井まである本棚が、ずらりと並んでいた。
部屋の真ん中には、大きな机と椅子が置いてあり、そこで本や資料を広げられるようになっていた。
その机の一つで、本を読んでいる青年がいた。
「…いたいた」
エドワードは、くすっと笑って、そっと青年に近づいた。
青年は、エドワードが近づいてくる事にも、全く気が付いていないように、本に没頭していた。
「こんにちは」
エドワードが、声を掛けると、青年は「わぁっ!」と叫んで椅子から飛び上がった。
「…ご、ごめんね。驚かせちゃったか」
「…あ、あなたは…この間の?」
青年は、ずれたメガネを直すと、エドワードの顔をまじまじと見つめた。
「あ、覚えててくれたんだ。良かった」
「…それは、命の恩人ですから…」
実際に彼を助けたのは、スティーブなのだが、エドワードは、その点には言及しない事にした。
「じゃあ、改めて自己紹介するね。僕はブライトン子爵だよ。よろしくね」
「…あ、えーと…リヴァーデイル公爵の息子の、ローレンスと言います。…あの、子爵様は、どうしてここに?」
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