第42章 ― 天が忘れようとしたもの

天が、先に悲鳴を上げた。


声ではない。

天は声で叫ばない。


崩壊だ。


遺跡の上空で、空が層状に裂け、

光が自らを折り畳む中、

アレン・ノクティルは降下してきた神の胸を貫いた。

脈打つ“何か”を掴み取る。


神は言葉を発しようとした。


アレンは、握り潰した。


光が爆ぜ、

燃える雪のように降り注ぐ。


振り返らない。


「見てるだけかよォ!!」

血を吐きながら、空へ吼える。

「ショーじゃねぇんだぞ!!」


さらに圧が降る。


今度は連携。


三体同時。


権能の鎖が四肢を絡め取り、

肉を裂き、骨を焼く。

エコーが警告を発したが、無視した。


膝が落ちる。


アレンは笑った。


唾と血が同時に地面に落ちる。


「……いい」

「やっと本音だ」



祭りの記憶。


壮麗な儀式じゃない。

神々の視線でもない。


始まる前の静けさ。


遠くで花火が咲く中、

ルネスラは彼の袖を掴んでいた。

周囲は笑っていた。


彼女だけが、笑っていなかった。


「行くのね」

小さな声。


アレンは硬直する。

「戻る」


首を振る。

「今回は……違う」


苛立ちが滲む。

「考えすぎだ」


彼女は笑った。


悲しく。

理解して。


「私は……あなたを選んだの」


その夜、

彼は抱きしめ方を間違えた。



光の槌が背骨を砕いた。


叫びが解き放たれる。


血が霧になる。


三本の尖塔を貫き、

地面に叩きつけられる。


身体が痙攣する。


一瞬――


無。


次に、指が瓦礫を掴んだ。


ゆっくり。

怒りと共に。


立ち上がる。


「……選び切れなかった」

掠れ声。


エコーが暴走し、

裂けた皮膚の下で血管が黒紅に光る。


顔を上げる。


見下ろす存在へ。


「お前らは、慈悲を信じたから殺した」

「なら……それが死んだ後を教えてやる」


消失。


次の瞬間、彼らの上空。


最初の神は、

自分が死んだことにすら気づかなかった。


二体目は悲鳴を上げた。


アレンは顔を掴み、

叫びごと砕けた空へ叩き込む。


現実がひび割れる。


天の破片が降り注ぐ。


三体目は逃げた。


喉を掴まれる。


「逃げろ」


囁き。


そして――引き裂いた。


着地。


荒い呼吸。

顎から血が滴る。


残りは四体。


距離を取っている。


怯えている。


アレンは気づいた。


小さく、残酷に笑う。


「……そうだ」

「思い出せ」


声が低く、震える。


「愛しすぎた天使を」


雷鳴が走る。


今度は――


遠くない。

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