第35章 —もっと喚け——神は静かには死なねぇ

奴らは一斉には降りてこなかった。


臆病者は、いつもそうだ。


ガラス越しの裁判官みたいに、

層になって宙に浮かび、

瓦礫の中に立つアレン・ノクティルを見下ろしていた。


七つの存在。


重圧が重なる。


全てが同じ無言の命令を放つ。


――跪け。


アレンは血を地面に吐いた。


「……その浮いてるクソ共」

「俺が跪くと思ってんのか?」


一体が語る。


崩れ落ちる神殿と死んだ祈りの声。


『貴様は生まれから間違っている』


アレンは笑った。


大声じゃない。

誇りでもない。


壊れた笑い。


「そうかよ」

血を吐きながら言う。

「お前らの世界の半分もな」


圧が叩きつけられる。


膝が地面を砕く。


骨が鳴る。


筋肉が裂ける。


空がさらに押す。


『我らが許しているから存在できる』


視界が赤く染まる。


血じゃない。


怒りだ。


「許してるだと?!」


叫ぶ。


「全部奪ったくせに何様だ!!」

「俺の人生!!」

「彼女!!」

「全部だ!!!」


エコーが暴発する。


瓦礫がさらに粉砕される。


一体が――怯んだ。


アレンは見逃さなかった。


「お?」

歪んだ笑み。

「神気取りの寄生虫、効いたか?」


凝縮された神性の刃が形成される。


処刑級。


『黙れ』


落ちる。


アレンは素手で掴んだ。


腕が即座に砕ける。


骨が肉を突き破る。


それでも離さない。


前に踏み出し、

血を撒き散らしながら狂ったように笑う。


「これで終わりかよ!!」


エコーが爆発。


刃は内側から崩壊。


衝撃で一体が真っ二つになる。


綺麗じゃない。

速くもない。


光が悲鳴を上げながら解体された。


アレンは砕けた腕をぶら下げたまま立つ。

再生は遅い。


残った存在を指差す。


「俺を裁く資格はない」


一歩前へ。


「消す権利もない」


さらに一歩。


そして声が冷たく落ちる。


「……彼女の名前を口にするな」


空が震えた。


初めて――


奴らは躊躇した。


アレンは口元の血を拭う。


「……逃げろ」


囁き。


そして笑う。


「逃げてみろよ。クソ神ども」

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