第28章 — 彼は“災厄”と呼ばれた

彼は犯罪者とは呼ばれなかった。


殺人者とも呼ばれなかった。


――“災厄”と呼ばれた。


アクシオン記録区に非常警報が響き渡り、封鎖結界が次々と展開される。塔は閉じ、監視機構は一つ残らず砕け散った。


アレン・ノクティルは、煙の中を歩いていた。


足跡には血。


それは、すべて彼のものではない。


人々は泣き、

叫び、

砕けた脚を引きずって逃げ惑う。


アレンはそれを見ていた。


――何も感じずに。


【緊急宣言】

【脅威レベル:破滅級】

【識別名付与:“スローン・ブレイカー”】【玉座破壊者】


「……そう呼ぶか」


地面が再び震えた。


今度は、彼ではない。


空から降下する数十の制圧部隊。

儀式回路を刻んだ装甲。

神殺し用兵装。


「標的捕捉!」


「単独交戦禁止—」


遅すぎた。


アレンが顔を上げる。


「判断ミスだ」


彼は消えた。


瞬間移動ではない。

加速でもない。


存在が“消失”した。


最初の部隊は悲鳴の途中で爆散。

次は首が消え、

次は翼を引きちぎられ、武器として使われた。


血の雨。


金。

赤。

黒。


呪いのように、アレンが着地する。


「これで足りると思ったかァァ!!」


叫びが圧となり、

肺を潰し、

鼓膜を破り、

骨を折る。


一体が逃げようとした。


アレンは顔を掴み、

床に叩きつけた。


何度も。

何度も。

何度も。


「俺を見ろォォ!!」


核を引きずり出し、

額に叩きつける。


爆光。


記録区が白に沈んだ。


静寂。


死体が落ちる。


煙が昇る。


中心で、

アレンは立っていた。


荒い呼吸。

血に濡れた髪。


そして――


笑った。


壊れた声で。


「……ルネスラ」


人の空を超えた場所で、

神々の玉座が震えた。


理解したのだ。


狩りが――始まったことを。

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