第27章 — 空が悲鳴を覚えた日

悲鳴を上げたのは、アレンではなかった。


空だった。


アクシオン記録区は、何の前触れもなく崩壊した。


水晶の尖塔が縦に裂け、観測輪は悲鳴を上げながら回転を失った。学者たちは逃げ、学生は倒れ、誰かは祈り、誰かは吐いた。


その中心に――

アレン・ノクティルが立っていた。


コートは裂け、

手は震え、

歯を食いしばりすぎて血が滲んでいた。


「やめろ――!!」


喉を裂くような、獣の叫び。


「そんな目で俺を見るなァァァ!!」


圧力が爆発した。


衝撃波が広場を薙ぎ払う。

身体が大理石に叩きつけられ、

骨が折れ、

血が、記録区の白を初めて赤に染めた。


【警告】

【記録コア不安定】

【感情制御リミッター:破壊】


アレンは片膝をついた。


「違う……違う……」


視界が割れる。


天界。

砕けた空。

胸を貫かれ、光を失っていくルネスラ。


「俺は殺してない!!」


叫びが喉を壊す。


「そこにいた!! 俺は、そこにいたんだ!!」


――応答があった。


優しくも、

慈悲深くもない。


地面が裂ける。


現れたのは、神の処刑装置。

六枚の翼。

顔はなく、

腕は刃。


【裁定ユニット展開】

【対象:異常存在】


アレンは見上げた。


そして――笑った。


血に濡れた口元で、

壊れた笑いを。


「いいだろ……」


立ち上がる。


魔力ではない。

もっと古く、もっと汚れた力が噴き出した。

赤い瞳が燃え、

もう一方は闇に沈む。


「来いよォォォ!!」


処刑機構が降下する。


アレンは避けなかった。


防がなかった。


――引き裂いた。


神性合金と肉体を素手で貫き、

核を引きずり出す。


黄金の血が雨のように降る。


「俺を裁く資格は――お前らにはない!!」


核を握り潰す。


爆発。


広場の半分が消えた。


光が消えた後、

そこに立っていたのは――


息を荒くし、

血と金に塗れ、

目に何も宿していない男。


沈黙。


そして――


【エコー確認】

【状態:覚醒】


アレンは感じた。


どこかで、

誰かが叫んでいる。


初めて――


彼は微笑った。


快楽ではない。


後戻りできないと、

理解したからだ。

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