第4話 夜風を裂く掠奪、路地裏の熱き密室
天幕の中、白銀の甲冑を脱ぎ去り、薄いインナー一枚となっていたエルザの全身から、猛烈な殺気が噴き出した。
愛するルカを掠め取ろうとする不届き者――盗賊マイアに向けられたその視線は、もはや騎士のそれではなく、自らの雛を奪われようとしている猛禽の執念そのものであった。
「その汚らわしい手を……ルカから離せと言っているッ!」
エルザが傍らに立てかけてあった愛剣を掴み、鞘も払わずに一閃させる。
空気を断ち切る鋭い音と共に、剣圧がマイアの足元を爆砕した。しかし、マイアは猫のようなしなやかさで軽々と宙を舞い、ルカを抱きかかえたまま天井の破れ目へと跳躍する。
「おっと、怖いねぇ! 鎧を脱いだ団長様は、そんなに気が短くなるのかい?」
「ルカを……私のルカを返せェッ!!」
エルザが地面を蹴り、天幕を突き破って追撃する。
夜の宿営地は、突如として始まった最強の女騎士と伝説の盗賊による追走劇に、一気に叩き起こされた。松明の火が揺れ、金属のぶつかり合う音が静寂を切り裂く。
マイアはルカを小脇に抱え、天幕の屋根から屋根へと軽快に飛び移っていく。 腕の中に収まったルカは、あまりの急展開と、夜風の冷たさに身を縮めていた。
「(……怖い。また、誰かが争ってる。……僕のせいで、エルザさんが怒ってる……)」
前世のトラウマが、ルカの胸を締め付ける。自分がいるせいで不幸が起きる。その恐怖が彼を支配し、思わず自分を抱えるマイアのレザースーツを強く掴んだ。
「おや、可愛い天使様。そんなにアタシにしがみついて……さては、アタシに惚れちゃったのかい?」
マイアは走りながら、余裕の笑みを浮かべてルカの耳元で囁く。
その瞬間、彼女は懐から数個の煙幕玉を地面に叩きつけた。
ドォォン!!
一帯が濃い白煙に包まれ、エルザの視界が完全に遮られる。
その隙を見逃さず、マイアは宿営地の外壁を駆け上がり、深い森へと、そしてその先にある古びた城下町の裏路地へと姿を消した。
路地裏の密室、押し付けられる「肉」の質量
「ふぅ……ここまで来れば、あの堅物おばさんもすぐには追ってこれないだろうさ」
マイアが逃げ込んだのは、城下町の隅にある、人一倍狭い路地裏の隙間だった。 積み上げられた木箱の陰、大人一人がようやく入れるかというその場所で、彼女はルカを壁に押し付けるようにして、自分もその狭い空間へと滑り込んだ。
「ひゃっ……!? あ、あの……っ」
逃げ場のない超至近距離。
ルカの目の前には、激しい運動で荒い息を吐くマイアの、しなやかで肉感的な身体があった。
全身を包む黒いレザースーツは、彼女が息を吸うたびにミシミシと音を立て、内側から溢れんばかりの肉体を強調している。
特に、ルカの腰のあたりに押し付けられている、彼女のとても大きいお尻と逞しくも柔らかな太ももの感触は、暴力的なまでの質量を持って少年の意識を支配した。
「……ねえ、君。さっきからずっと震えてるけど、そんなにアタシが怖い?」
マイアがルカの両手を壁に押し当て、顔を数センチの距離まで近づける。
琥珀色の瞳が、獲物をじっくりと観察するようにルカを射抜く。
彼女の首元から漂う、汗と革の匂い、そして女性特有の甘い芳香が、狭い空間に充満し、ルカの頭を真っ白にさせた。
「だ、だって……僕のせいで、エルザさんが怒って……。……マイアさんも、僕のこと、嫌いになりますか……?」
ルカの瞳に、ポロポロと涙が溢れ出した。
捨てられる。嫌われる。その恐怖が、初心な少年にとっての最大のパニックだった。
「僕、役に立ちます。マイアさんの言うこと、なんでも聞きます……っ。泥棒の手伝いでも、なんでもしますから……! だから、嫌わないで……捨てないでください……っ!」
その言葉。ルカの「なんでもする」という無防備な懇願。
それを受けた瞬間、マイアの琥珀色の瞳に、危険な悦びの色が混ざった。
「……へぇ。なんでもする、ねぇ? ……あはは! 最高だよ、君! 天使みたいな顔して、そんなにアタシに縋り付いてくるなんてさ!」
マイアはルカの顎をクイと持ち上げ、そのまま自分のボリューム満点の胸元へと、ルカの顔を無理やり押し付けた。
「じゃあさ……アタシを満足させてみなよ。……この狭い場所で、アタシにたっぷり可愛がられるのが、君の最初のお仕事だ。……分かった?」
レザースーツ越しに伝わる、エルザとはまた違う、弾力に満ちた肉の感触。
押し潰され、形を変える彼女の肉体の柔らかさに、ルカの身体は芯から熱くなった。
『【愛の貯金箱】が反応。個体名:マイアの「加虐的な情愛」と「略奪欲」を吸収――』
『魔力チャージ、急速進行中。……ルカの心拍数に合わせ、光の羽が共鳴を開始。』
「あ、あぅ……っ、マイアさん……熱い、です……」
「あはは、もっと熱くしてあげるよ。……騎士団の檻より、こっちの檻の方が、ずっと気持ちいいんだからさ」
暗い路地裏で、マイアのしなやかな指先が、ルカの細い首筋を愛撫するように這い回る。
ルカの背中から、再び黄金の微光が漏れ出し、狭い密室を淫らに照らし始めていた。
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