第3話 光り輝く初陣と、闇を駆ける琥珀色の瞳
天幕の中は、黄金の微光に満たされていた。
ルカの細く白い背中から溢れ出した光は、形を成し、純白に輝く二枚の「光の羽」となってゆったりと羽ばたく。それは、前世で負った心の傷を埋めるように、そして、向けられた過剰なまでの「愛」に対する少年の純粋な反応だった。
「……あ、ああ。なんて……なんて神々しいのだ……」
スポンジを握っていたエルザの手が、力なく床に落ちた。
彼女は跪いたまま、涙を流してその光景を見つめている。聖職者が神にまみえたかのような敬虔さと、一人の女が最愛の所有物を見つめるような情欲――その二つが混ざり合った、歪な恍惚が彼女の顔を支配していた。
「ルカ。貴方はやはり、天が私に遣わした奇跡……。この白銀の翼を、誰にも、誰にも見せたくない……っ!」
エルザはたまらず、裸のままのルカを後ろから力任せに抱き締めた。
ぬるま湯で濡れたルカの肌と、薄いインナー一枚になったエルザの肌が、吸い付くように密着する。
「ひゃぅっ……!? エ、エルザさん、くすぐったい、です……っ」
初心なルカにとって、背中に押し当てられる彼女の暴力的なまでの胸の弾力は、あまりに刺激が強すぎた。押し潰され、形を変える彼女の肉の柔らかさが、背骨を通して少年の脳を痺れさせる。
「嫌、ですか……? 私がこうして、貴方を抱き締めるのは……」
エルザがルカの
「い、嫌じゃないです! 嫌なわけないです……っ! だから、そんなに悲しい声を出さないでください。僕、なんでもします……エルザさんに嫌われるくらいなら、死んだほうがマシです……っ!」
ルカの必死な、縋り付くような言葉。
それがエルザの独占欲をこれ以上なく煽り立てる。彼女はルカの肩に歯を立て、まるで自分の印を刻むかのように、優しく、けれど執拗に甘噛みした。
『【愛の貯金箱】が、個体名:エルザの「極大の独占欲」を継続して吸収。魔力密度が規定値を超過――天使の羽の第一階梯が安定化しました』
その時。 天幕の屋根の上――。騎士団の見張りすら気づかないほどの極小の足音を立てて、一人の影が降り立った。
「……へぇ。外から見てりゃ、神様でも降臨したかと思ったけど。……中じゃ、お堅い騎士団長様が、随分と淫らな顔してショタを可愛がってるじゃないか」
赤毛を夜風になびかせた女性――マイアは、天幕の通気口から中を覗き込み、琥珀色の瞳を淫らに細めた。
彼女の視線の先には、黄金の羽を広げ、濡れた肌を輝かせる絶世の美少年。そして、その少年を背後から包み込み、自らの豊満な肉体で埋め尽くそうとするエルザの姿があった。
「あれが噂の『お宝』かい。……ふん、あんなに神々しい輝きを放ってて、中身はあんなに弱々しく震えてるなんて。……最高にそそる獲物だねぇ」
マイアは唇を舐めると、腰に差した二振りの短剣を弄んだ。
彼女は盗賊だ。価値あるものは奪う。美しいものは掠め取る。
特に、あのエルザが宝物のように隠したがるものなら、なおさら「盗む」価値があるというものだ。
「……決めたよ。あの子は、アタシが頂く」
天幕の中では、エルザがルカに新しい服を着せようとしていた。
それは騎士団が用意した最高級の絹で作られた寝着だったが、エルザはルカに指一本動かさせず、まるで着せ替え人形を扱うように、一つ一つ丁寧にボタンを留めていく。
「さあ、ルカ。……次は、脚を通しましょうね。……ふふ、どうしてそんなに顔を赤くしているの?」
エルザの指先が、ルカの太腿の付け根をかすめる。ルカは「ひっ……!」と短い悲鳴を上げ、膝を閉じて震えた。
「だって……エルザさんの、その……胸が、すぐそこにあって……。それに、さっきから僕のこと、じっと見てるから……」
初心なルカの反応が、エルザをさらに興奮させる。彼女はわざと前屈みになり、インナーの首元からこぼれ落ちそうな自慢の双丘をルカの視界に押し付けた。
「見てほしいんでしょう……? 貴方は、私の愛がなければ生きていけない子なんだから……」
エルザがルカの唇を指でなぞり、そのまま覆い被さろうとした――その瞬間。
パリィィン!!
鋭い破砕音と共に、天幕の頂点から一条の影が舞い降りた。
「――お熱いところ悪いねぇ、団長様。でも、その可愛いお宝、アタシが鑑定してあげようと思ってさ!」
「なっ……!? マイアだと!?」
エルザが瞬時に傍らの剣を掴もうとするが、マイアの動きの方が速かった。
マイアは空中で身を翻すと、驚きで目を見開くルカの目の前に着地する。
「……うわ、近くで見るとマジで天使じゃん。ねえ君、そんな堅苦しいおばさん騎士の腕の中より、アタシと一緒に楽しいことしに行かない?」
マイアはそう言うと、ルカの顎をクイと持ち上げ、その潤んだ瞳を覗き込んだ。
「……ひ、ひゃいっ……!?」
突然現れた、露出度の高いレザースーツを纏った赤毛のお姉さん。
彼女の身体から漂う、野生的な香りと、至近距離で見せつけられるしなやかで肉厚な太ももに、ルカの思考は完全に停止した。
「貴様ぁぁ! ルカから離れろ、この泥棒猫がぁ!!」
エルザの咆哮が天幕を揺らす。 平和(?)だった騎士団の夜は、天使を巡る二人の女性の激突によって、一気に混沌へと加速していくのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます