第三地区
石造りの街路を静かに進む
「おい、坊主。起きてるか?」
髭を蓄え、野性的な風貌を放つ男が、御者の席から後ろの荷馬車に声を投げる。
「あ、ああ、起きてる。いえ、起きてます。」
「手伝え、荷下ろしだ」
「は、はい」
寝ぼけ眼のフォレ―スは、荷馬車から顔を出すと、他の運搬兵達に交じり、指定された荷物を降ろしていく。
運搬兵たちも、眠気を覚ますため、とりとめのない世間話をしながら、それぞれの役割に従事している。
そんな、言葉の数々がフォレ―スの耳を、伝う汗と共に、彼に張り付くのである。
「なぁ、第六地区の準征服兵の強制徴用案が聖王議会で賛成されたって聞いたか?」
「仕方がないさ。クチクだけでなく、ハチク、ナナク、果てはロックも押されつつあるって話だ。正規兵が足りないんだよ」
「嘘だろ、じゃあ今、その四つの区に隣接するゴクもそろそろ、戦闘地点都市にされるのかよ」
「ゴクで終わる話じゃないだろうな、ヨンクとここ、サンクも危ないだろうな」
「恐るべし、
荷下ろしが終わり、フォレ―スは、自分を眠りの世界から、夜闇の幕が降ろされた世界に戻した、髭の男を探す。
髭の男は直ぐに見つかった。
一際大きい体と、彼が放つ周囲を圧迫する不思議な雰囲気が否が応でも、目についたからだ。
フォレ―スは男に駆け寄る。
「アイオンさん。荷下ろし終わりました」
アイオンと呼ばれた、髭の男は、フォレ―スを見ずに、荷下ろしの終わった荷馬連車御者の席に戻ると、言葉だけのねぎらいと次の行先を告げる。
「ああ、お疲れ。乗れ。次は、ヨンクの工房に行くぞ」
「は、はい」
フォレ―スは疲労と眠気で鈍る足を引きずり、
そこには、空白大陸種の動物、六本足の
文明人が初めてこの大陸で、飼い慣らすことに成功した動物だ。
フォレ―スは、見慣れた聖王本国の物が、未知の大陸特有の物に置き換わっていくのに、高揚感と、一抹の不安が心の臓を揺らす、この不安定な感情に不思議な酩酊感を噛みしめるのであった。
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