第56話

早朝が空を鈍い灰色の色合いに染めた。破途(はと)が森を駆け抜けた、弱い稲妻の覆いが体を包んでいた。木々が両側を通り過ぎ、枝が顔を打った。呼吸が乱れた——まだ完全に回復していなかったが、休む時間はなかった。


「特別な花…火山の近く」


老人の言葉が頭の中でこだましていた。破途が歯を食いしばり、もう少し速度を絞り出そうとした。


「遠くに行くな…老人が言っていた、そこに兵士たちが陣取っている。囚人を洞窟に運んでいる」


森が薄くなり始めた。前方に境界が見えた——黒い固まったマグマと火山岩がまばらな茂みの間に。空気が熱くなり、硫黄の匂いがした。


破途が最後の木々のところで止まり、手を幹に寄りかかった。数秒間、目を閉じてただ呼吸した。


「休まないと。少しでも」


沈黙。風と火山の遠い轟音だけ。


それから——動き。


破途が凍りついた。左のどこか、岩の間で何かが動いていた。


彼は岩の後ろにしゃがみ、息を潜めた。体の周りの稲妻が完全に消えた。


足音。重い、近づいてくる。


「兵士か?」


足音がますます近く聞こえた。彼から数メートルのところに。


そして突然体が言うことを聞かなくなった。


破途が腕を動かそうとした——何もない。まるで見えない握りが彼を掴んでいるかのよう。体が上がり始め、足が地面から離れた。


喉が締め付けられた。空気が入らなくなった。破途が喘ぎながら息を吸おうとした。


「呼吸が…できない!」


——お前も俺と遊びたいのか?


声。聞き覚えがあるが…おかしい。不気味。


破途が岩の後ろから引き出され、空中で回転させられた。


海渡(かいと)。


全身が火傷の傷跡で覆われていた。皮膚がピンク色で引きつっている。場所によっては——より暗い斑点、深かったところ。頭上でゆっくりと血の球体が回転していた——暗赤色、頭ほどの大きさ。


海渡が頭を傾け、じっと見た。微笑が消えた。


——破途?——声がより静かに、不確かになった。——これは…お前か?


喉への圧力が弱まった。破途が地面に倒れ、咳き込み、首を掴んだ。


数秒間、彼はただ呼吸した。貪欲に、喘ぎながら。それから目を上げた。


海渡が彼の前に立っていた。血の球体がゆっくりと消えていった。顔が損なわれている——ピンク色の引きつった皮膚。全身に火傷の跡。


破途がゆっくりと足で立ち上がり、友人から視線を逸らさなかった。


——海渡、お前か?——彼が嗄れた声で尋ね、喉をこすった。——何があった?


海渡が震えた。まるで今傷を思い出したかのよう。手を見下ろし、拳を握った。顔が暗くなった。


——長い話だ。


——この間どこにいた?


海渡が顔を上げた。目が細くなった。


——俺がどこにいたか?——彼がゆっくりと繰り返した。声がより冷たくなった。——お前たちはこの間どこにいた?


最後の言葉に怒りが響いた。静かだが、感じられる。


破途が手を上げて和解した。


——落ち着け。俺も自分がどこにいたか知らない。洞窟から出たとき、一日経ったと気づいた、そこに一時間もいなかったはずなのに。


彼は声について黙っていた。兵士たちについて。手の血について。


——出たらすぐ、近くに誰もいなかった。兵士だけ。かろうじて森から抜け出せた。


海渡が黙っていた。重く、評価するような視線で見ていた。


——俺たちはお前を待っていた…——彼がついに言った。声がこもって聞こえた。——滝(たき)と。でもお前はいなかった。兵士たちが囲んだ。あの烈(れつ)が…もう一人も。戦いを受けなければならなかった。


間。海渡が拳を握った。


——でも負けた。


言葉が重く響いた。まるで一つ一つが痛みを与えるかのよう。


破途が何を言うべきか分からなかった。


——その後は覚えていない。——海渡がより静かに続けた。——洞窟で目が覚めたのを覚えている。周りに囚人。そして熱。


彼の顔が歪んだ。怒りが冷静さの仮面を突き破った。


——お前たちを待っていた。——声がより静かになったが、より鋭くなった。——でもお前たちはいなかった。ずっと。


彼が破途の目を真っ直ぐ見た。


——自分で抜け出さなければならなかった。


声に非難が響いていた。直接的。隠さない。


破途が視線に耐えられなかった。目を逸らした。胸の中で何かが締め付けられた。


——後で老人の小屋を見つけた。——彼が素早く言った。——滝がどうやらそこにいた。あの老人が彼を拾った。


海渡が答えなかった。破途が彼を見て、何か捉えがたいものを感じた。海渡が変わった。より固く。冷たく。


——じゃあ休んでるんだな。——海渡がゆっくりと言い、振り向いた。——休め。


彼が森の奥へ去っていった。


——待て、海渡!


破途が前に踏み出した。


——滝が毒を盛られた。まだ何か分からないが、彼には助けが必要だ。俺はちょうど彼のための薬を探している。


海渡が止まったが、振り向かなかった。


——おめでとう。


声が平坦だった。空っぽ。


破途が胸の中で怒りが燃え上がるのを感じたが、抑えた。


——待て。彼には俺たちの助けが必要だ。海渡、彼は…


破途が手を伸ばして海渡の肩を掴んだ。


海渡が切れた。


急な、無造作な手の動き。


破途が木に叩きつけられて、肺から空気が飛び出した。見えない力がまた彼を掴み、高く持ち上げた。足が地面から離れた。彼は幹に押し付けられて浮いていて、動けなかった。


海渡が振り向いた。顔に——憎しみ。


——お前たちはどこにいた…——彼がシューと言った。——俺に助けが必要だったとき?


一歩前に。圧力が強まった。破途が樹皮が背中に食い込むのを感じた。


——俺が絶望していたとき?


もう一歩。


——滝が死ぬかもしれないことが気になるか?——海渡の声がより静かになったが、一言一言が打撃のように響いた。——信じろ。時に死は——喜びだ。永遠に思える苦しみの深淵では。


「彼は俺たちを責めている…俺を責めている…」


——奴らがお前をこうしたのか?——彼が絞り出した。


海渡が凍りついた。それから微笑み始めた。ゆっくりと、広く。微笑がおかしかった。不気味。


——俺が得た贈り物が気に入らないのか?——彼が軽い笑いで尋ねた。


破途が彼を注意深く見た。皮膚がゆっくりと回復していた。


——この力も…そこから?奴らのせいで?


間。


——そして火傷…消えている。気のせいじゃない、本当だろ?


海渡の微笑がより広くなった。破途が胸への圧力が強まるのを感じた。


——俺たちの賢い破途…お前はすべてに気づく。たとえそうでも、それが何だ?


破途が歯を食いしばり、痛みを乗り越えた。


——滝を助けろ。


沈黙。


——彼はお前の友達だ。


海渡の微笑が少し下がった。


——友達?——彼が静かに繰り返した。——友達たち?


声が変わった。より固くなった。


——友達。お前たちはどこにいた、俺の肉が肉片のように焼かれていたとき?!


間。海渡がもう一歩踏み出し、声がより大きくなった。


——呼吸と最小限の動きが試練だったとき?!近くに誰もいなかったとき?!希望に場所がなかったとき?!


最後の言葉をほとんど叫んだ。声に痛みが響いていた、怒りの後ろに隠れて。


——俺の友達はその時どこにいた?!


破途の手の周りに稲妻が現れ始めた。弱く、震えている。怒り。彼も怒っていたが、抑えていた。


「駄目だ…今じゃない…こんな風じゃない」


——頼む…——彼がゆっくりと言った。——助けてくれ。


海渡が稲妻を見た。微笑が戻り、さらに広くなった。


——じゃあ俺たちの破途は頼んでるのか、それとも命令してるのか?


そして破途が頭の中で聞いた。


囁き。静かな、かろうじて聞き取れる。しかし彼ははっきりと聞いた、海渡の唇が動いていなかったのに。


「お前たちはどこにいた?近くに誰もいなかったとき、お前たちはどこにいた?!」


破途が震えた。


「何だこれは?彼の考えが聞こえる?」


認識が急に来た。自分の中で何か新しいもの。まるで扉が開き、その後ろに——他人の心。


——お前と戦いたくない。——破途がより静かに言い、海渡の目を見た。——頼む。助けてくれ。


海渡が震えた。まるでこれらの言葉が内側で何かに触れたかのよう。全身が緊張した。


——望めば勝てると仄めかしてるのか?——彼が微笑で囁いた、もう本物に見えなかった。——俺が役立たずだと?!


破途がため息をついた。


——俺は試みた…


頭の中で何かがカチッと鳴った。破途が力が自ら外に飛び出すのを感じた。まるで本能。防御。


-----


海渡の手が急に焼けた。彼が叫び、手を引いた。


見えない握りが弱まった。破途が地面に落ち、咳き込んだ。


海渡が自分の掌を見た——煙が出ていた。視線を上げた。


破途が消えた。


——何だ…?


彼が辺りを見回した。森。木々。すべて同じ。


海渡が彼を感じようとした。血液制御を適用した。


何もない。


——何の安っぽい芸当だ?!——海渡が叫んだ。


足音。大きい、重い。誰かが森を通って彼に向かって走っていた。


海渡が急に振り向いた。木々の間にシルエット。


血液制御を適用しようとした。


働かない。


「何だこれは?!」


シルエットがますます近い。大柄な男。手に——棒。


そして一歩ごとに彼が大きくなった。高く。広く。


海渡が一歩下がった。


——父さん?


父の顔。同じ目。同じ怒り。手に——子供の頃彼を殴った棒。


父が振りかぶった。全力で腹を打った。


海渡が半分に折れ曲がり、空中に持ち上げられて投げ飛ばされた。背中から壁に激突し、倒れた。


顔を上げた。見覚えのある壁。


彼の家。彼の部屋。


——何の芸当だ?!——彼が叫び、立ち上がろうとした。


後ろから——足音。


海渡が振り向いた。父が彼の肩を掴み、振り向かせた。


そして殴り始めた。


顔に。また。また。また。


海渡が手を上げて守ろうとしたが、父は抵抗に気づかないかのように殴った。


力を発動しようとした。


何もない。


打撃が続いた。鼻が砕けた。唇が裂けた。血が顔を流れた。頬骨が割れた。


海渡が床に倒れた。父が彼の後を追い、殴り続けた。


「なぜ…なぜできない…」


海渡が自分の手を見ようとした。それらは小さかった。彼の体が家から逃げたときのようになった。小さい。弱い。


打撃が止まらなかった。海渡はもう何も理解できなかった。痛みだけ。


それから——沈黙。


父が消えた。


海渡が床に横たわり、喘いで呼吸していた。手を顔に上げた。肌が滑らかだった。血がない。


まるで何もなかったかのよう。


しかし体はまだ子供だった。


周りで何かが割れ始めた。壁が燃え始めた。炎が速く燃え上がった。火の轟音が空間を満たした。熱が骨まで貫いた。


海渡が立ち上がろうとした。最初に膝に。それから足に。


急に頭を上の何かに打ちつけた。


海渡が視線を上げた。金属の格子。檻。


「駄目だ…駄目だ…駄目だ」


彼はまた檻の中。あの檻。


周りに——囚人たち。マグマ。暗い岩。熱。


海渡が檻の格子を掴んだ。


——駄目だ、駄目だ、駄目だ…——彼がぶつぶつ言い、格子を引いた。


目の端で遠くに誰かを見た。シルエット。誰かが地面を掘っていた。


——破途?


手の下の格子が熱くなり始めた。海渡が掌を引いたが、遅かった。火傷。皮膚が金属に張り付き、破片で剥がれた。


檻全体が熱くなった。


——あああ!!!


炎が檻を包んだ。


皮膚が瞬時に燃え上がった。炭化し、溶けた。しかし再生が働いた。皮膚がまた生えた。そしてまた焼けた。


海渡が意識を失った。そしてすぐに戻った。何度も何度も。


痛みが絶対的だった。一秒一秒が永遠に続いた。


彼は白い骨まで焼けた。そして再生した。そしてまた焼けた。


顔が肉になった。唇とまぶたが焼けて消えた。場所によっては頭蓋骨自体が見えた。


このような熱で皮膚が灰のようになり、金属に張り付く時間がなかった。


何度も何度も。


それから誰かが檻に近づいた。


シルエット。檻が開き始めた、まるで見えない手がそれを引き裂くかのよう。金属が割れ、曲がった。


シルエットが近づいてかがんだ。父の体。破途の顔。


——お前を苦しみの頂点に導ける。——彼が静かに言った。——恐怖と痛みを経験するとき、一瞬後にお前の脳が芋のようになるほど強く。


間。


——そしてお前の脳が野菜になる一瞬前に、お前の記憶、最後の三十秒を消せる。


より近くにかがんだ。


——そしてその三十秒がお前にとって再び続く。何度も。無限に。もしお前がもう一度俺に対して力を使おうとしたら。


海渡がまた焼けた。


彼はこれが既にあったことを覚えていなかった。毎回——初めてのように。


また。また。


-----


破途が地面に倒れ、咳き込んだ。ゆっくりと足で立ち上がった。


海渡が同じ場所に立っていた。目が開いている。しかし視線が空っぽ。


顔が損なわれている。ピンク色の引きつった皮膚——火傷の跡。治ったが、傷跡が残った。


破途が彼を見た。手、首に——同じピンク色の皮膚。全身に。


「彼はどうなった?」


彼が頭に手を当て、再び海渡の考えを聞こうとした。


恐怖と痛み。


破途が手を引いた。


——もう一度俺か友達に対して技を使ったら…——彼がゆっくりと言った。——俺も俺たちが友達だということを忘れる。


間。


——分かるか?


——はい。——海渡の声が平坦だった。空っぽ。


——お前は海渡か?


——完全には。


——意識があるか?


——これは潜在意識です。


——体の再生がどう起きるか理解してるか?


——完全には。


——でもそれを制御してるか?


——はい。


——これはお前の新しい技か?


——はい。


——毒による中毒を治せるか?


——おそらく。


——おそらく?どういうことだ?


——この能力はまだ研究中です。


破途が息を吐いた。


「進みながら分かるだろう」


彼が動かない海渡を見た。


「長くこのままにできない。行かないと」


破途が近づき、海渡を背中に担いだ。


——耐えろ、——彼がぶつぶつ言い、小屋に向かって突進した。


-----


堅司(けんじ)が街の壁近くの天幕で火のそばに座っていた。夕方。沈黙。


火を見つめていて突然——考えが記憶を彷徨い始めた。


-----


四人の戦士が天幕に駆け込んだ。


——勝(まさる)様!逃げなければ、彼がもうここに!


勝がちょうど目を覚ました。困惑して瞬きした。


——何を言ってる?


天幕の後ろで誰かが叫んだ。


——何が起きてる?


戦士が服を差し出し、膝をついた。


——お願いします、勝様。準備してください。


堅司が入ってきた。手に戦棍。


勝が彼を見た。恐怖。それから、何かを思い出したかのように顔にニヤリとした笑みが現れた。


顔に自信。


——馬鹿者!降伏しろ、そうすれば死が穏やかになる!


堅司が彼を静かに見た。


——ここにルーンがあるから、俺に魔法がないから弱いと思ったか?俺が魔法に頼ってると?


——殺せ!


四人の戦士が堅司に突進した。


堅司が前に突進した。棍が最初の顔を打った。骨が砕けた。


剣をブロック、回転、三人目の顎に打撃。


ブロック、腹に蹴り。四人目の股間に打撃。


この二人に顔に——頭を砕いた。


勝がつまずき、後退した。倒れた。


堅司が棍を喉に当てた。


——お前は傲慢な愚かな坊やだ。——彼が静かに言った。——自分だけでなく、民全体を滅ぼした。馬鹿者、なぜ部族の長を殺した?彼がお前たちの中で唯一まともだったのに。


勝が荒く呼吸した。


——父は民を辱めた!——彼が絞り出した。——お前に娘を与えて。


堅司が微笑んだ。喜びなく。


——お前たちは馬鹿だ。俺はお前たちを許した。お前たちと取引した。平和を望んだ。彼女を愛した!


声がより静かになった。


——傲慢さから俺を人間にしていた唯一のものを奪おうと決めた?


棍が喉をより強く押した。


——俺の手に血を見たかったのか?


——ああ!——彼が絞り出した。——たとえ残酷でも、それだけが民の名誉を清められる方法だった。


堅司が微笑み始めた。狂ったように。


——残酷?——彼が優しく繰り返した。——子供と母を閉じ込めた家で焼くのが、俺がいない間に、残酷な行為だと思うか?


勝が答えなかった。ただ震えながら見ていた。


——さあ!——彼が絞り出した。——殺せ!戦士としてこの名誉を受け入れる。


堅司の微笑が消えた。


——死…?


彼が勝の頭を打った。彼が倒れ、意識を失った。


-----


堅司が勝を天幕の後ろに引きずっていた。早い雪の朝。寒さ。


数メートル離れ、勝の口に何か小さいものを入れ、喉を押した。彼が飲み込んだ。


それから、軽い打撃で起こした。


勝が急に目を覚ました。


——どこだ?


辺りを見回した。


赤い雪。至る所に。


すべてが押しつぶされている。沈黙。風だけ。


寒さが体を貫いた。まるで針が足裏に食い込むかのよう。


深紅色の風景。血が至る所に。すべてが押しつぶされている。


堅司が隣に立っていた。


——もちろん火ではないが、——彼が静かに言った。——でも頑張る。ゆっくりと。とてもゆっくりと…


間。


——ゆっくりと。


勝が内側で何かを感じ始めた。何かが成長していた。臓器を圧迫した。


痛み。苦しい痛み。


彼が膝をつき、丸くなった。すべての臓器がまるで引き裂かれるかのよう。腸、肺、腎臓。


彼が震えた。けいれんと痛み。勝の口からまるで棍が生えているかのよう。


——時間より早く気絶するな!——堅司が叫んだ。


勝の体が内側からゆっくりと引き裂かれた。


それから——急に。


棍が巨大になった。山ほどの大きさ。体が破片に引き裂かれ、すべてが堅司に飛び散った。


堅司が彼の棍の形をしたこの山の前に立っていた。呼吸が重い。


——あああああ!!!!——全力で叫んだ。


膝をついた。


沈黙。


——許してくれ。許してくれ、許してくれ、許してくれ…


声が裂けた。


——愛する人…息子…叔父…


-----


堅司が記憶から震えた。火がパチパチ音を立てていた。


天幕に兵士が入ってきた。


——堅司様、報告します。森で兵士たちから連絡がありませんでした。斥候を送りました。死体の山。


間。


——拷問部屋…そこで脱走。兵士たちが消耗している。まるで誰かが命を吸い取ったかのよう。


堅司が拳を握った。椅子の肘掛けを打った。肘掛けが割れ、壊れた。


兵士が凍りついた。


——どうされますか?


堅司が数秒間黙っていた。それから息を吐いた。


——考えさせろ。とりあえず下がれ。


兵士が頭を下げて出て行った。


堅司が一人残された。火を見ていた。


-----


破途が海渡を背負って小屋に入った。


老人たちが振り向いた。目が見開かれた——海渡の顔と全身が火傷の傷跡で覆われている。


老婆が静かに手をたたいたが、黙っていた。


破途が海渡を滝のところに連れて行き、隣に下ろした。


——彼を助けられるか?——彼が海渡の空っぽな視線を見ながら尋ねた。


——彼はどうしたんだ?


声が平坦。自動的。


——お前が言え。毒による中毒だそうだ。


海渡が一秒黙った。滝の体の上に手を伸ばし、何かを感じようとした。


——あと数日…血が汚染されている。


老人たちが目を合わせ、なぜ海渡がトランス状態のように答えるのか理解できなかった。


——助けられるか?


——力は完全には研究されていない。でも試せる。


海渡が滝の上に手を持っていた。触れずに。


滝の体の静脈がより強く脈打ち始めた。


そして突然——小さな血の滴が外に出始めた。点で。暗い色。毒と一緒に。


滝が荒く呼吸し始めた。体が緊張した。


海渡が動かなかった。手だけが伸びていた。絶対的な集中。


数分。ゆっくりと、注意深く。


それから止まった。


——体にもう毒はない。体が回復する必要がある。


そしてこの瞬間、彼がよろめいた。目が閉じた。海渡が倒れた。


破途が彼を捕まえようとしたが、自分も力が抜けるのを感じた。海渡への制御、新しい力——これすべてが彼を限界まで疲れさせた。


破途が隣に倒れた。力なく。目が閉じた。


老人が二人を見て、首を横に振った。


——またもう一人連れてきた。またぶっ倒れた。俺たちは彼の友達全員を受け入れなきゃならんのか?


老婆が鼻を鳴らした。


——文句を言うな、じいさん。手伝え。床で寝るわけにいかんだろ。


**章の終わり**

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