第54話

朝。早い。


海渡(かいと)が目を開けた。ゆっくりと。重く。


体が痛んだ。至る所で。火傷が脈打った。皮膚が引きつり、動くたびに割れる。


息を吸った。乾いた空気が喉を焼いた。


横を見た。


涼太(りょうた)の檻。空っぽ。


心臓が跳ねた。


「どこだ?」


辺りを見回した。速く。パニックが湧き上がった。


周りに——他の檻。人々。誰かは動かずに横たわっていた。誰かが静かに、かすかに呻いていた。注意を引くのを恐れていた。また来るのを恐れていた。


「何があった?涼太はどこだ?」


尋ねたかった。口を開けた。


止まった。


「もし聞かれたら?もし俺のところに来たら?」


唾を飲み込んだ。喉が乾いていた。痛い。


静寂。マグマのシューという音だけ。割れる音。


足音。遠い。近づいていた。


海渡が緊張した。前を見た。


二人の兵士。誰かを引きずっていた。腕を持って。床を引きずっていた。


近づいて涼太を檻に投げ込んで去った。


海渡がよく見た。


涼太。


横向きに横たわっていた。動かなかった。呼吸していた。荒く。喘いで。


体が震えていた。細かく。絶え間なく。


足から血が滴っていた。一滴ずつ。檻の床に。


「何をされたんだ?」


海渡が尋ねたかった。呼びかけたかった。


しかし言葉が喉に詰まった。


「やめた方がいい…そっとしておいた方がいい」


涼太が動いた。格子に背中をつけて座った。頭を下げた。


震えが止まらなかった。


長い沈黙。


それから——声。静かな。震えている。しかし冷静さを装おうとしているかのよう。


——なあ…——涼太が頭を上げなかった。——俺には誰もいない。


海渡が瞬きした。聞いていた。


——ここで聞こえる…——声がより静かに。——夜に誰かが泣いているのが。名前を囁く。外にいる者の。妻、子供、母親の。


間。


——そして思う…——震えた息を吐いた。——彼らは辛いだろうな。誰かがあそこで自分たちのせいで苦しんでいると知って。


海渡が眉をひそめた。


——お前は…楽なのか?——声が嗄れた。


——ああ。——涼太が弱く頷いた。——俺は運がいい。誰も俺のために涙一つ流さない。窓で待たない。自分を責めない。


苦く微笑んだ。


——彼らは他人の涙の原因になる運の悪さだ。——声がより強く震えた。——そして俺は運がいい…泣く者がいないから。


沈黙。重い。


海渡が唾を飲み込んだ。


——家族は?——静かに尋ねた。


涼太が凍りついた。一秒。二秒。


——みんな死んだ。昔。——声がこもっていた。——恋人がいた。でも彼女は…最後の瞬間に、運命を共にしたくないと気づいた。


間。


——でも結婚前だった、十年二十年後じゃなくて。——笑った。弱く。喜びなく。——想像してみろ、その時だったらどれだけ悪かったか。


声が裂けた。


——ここでも運がいい!——震える微笑で。


涼太が顔を上げた。海渡の方を見た。暗闇で顔は見えなかった。しかし見ていた。


——お前は?——静かに。——誰かいるか?


海渡が視線を落とした。自分の手に。火傷に。水疱に。


——家族がいた。——声が静かだった。——難しかった。


間。


——母が死んだ。昔。それから父は…酒ばかり飲んでいた。俺に当たった。すべてを俺のせいにした。


涼太の震えがまるでゆっくりになった。聞いていた。


——よく痣だらけだった。全身に。——海渡が拳を握った。——だから一部…暴力が好きじゃない。


間。


——彼を離れるのが怖かった。小さかった。九歳くらい。彼以外誰も知らなかった。殴られていたけど。


震えた息を吐いた。


——でも祝日には…酔いつぶれて立つ力もなかった。殴るどころか。——苦く微笑んだ。——だから祝日が好きになった。


涼太が聞いていた。遮らなかった。


——ある日…床で目が覚めた。——声がより静かに。——頭から血が流れていた。父がベッドに。ベッドの横に——血のついた棒。


唾を飲み込んだ。


——何があったか覚えていない。今でも。


沈黙。


——それまで彼を恐れていたが…その日恐怖が消えた。——暗闇を見た。——ただ黙って立ち上がった。そして去った。怖かったけど。どこに行くか知らなかった。でも考えなかった。もう何もあの家に縛らなかった。


涼太の震えがほとんど消えた。聞いていた。


——最初は辛かった。——海渡が続けた。——それから滝(たき)に会った。彼は俺に兄弟のようだった。それから翔(かずと)が俺たちを見つけた。それから破途(はと)が。


微笑んだ。弱く。


——気づけば。家族みたいな。家族と呼べるかもしれない。


声が温かくなった。


——彼らといて安全とは言えない。温かいとも常に満腹とも言えない。でも俺は彼らと…一緒だった。それが一番大事だと思う。


涼太が笑った。静かに。苦く。


——そうか。——声が震えたが、微笑で。——つまり、お前は運が悪い。


海渡が瞬きした。それから微笑んだ。長い間で初めて。


——つまり、運が悪い。


二人とも微笑んでいた。暗闇の中で。檻の中で、マグマと死の中で。


黙っていたが、孤独ではなかった。


-----


夕方。森。


破途が歩いていた。ゆっくりと。脚がかろうじて動いた。疲労が押しつぶした。


「どれだけ歩いてる?」


分からなかった。数を失った。


前方に——開けた場所。森の端。


出た。


小さな開けた場所。木造の小屋。古いが、しっかりしている。


隣に——養蜂場。いくつか。巣箱。蜂が静かに羽音を立てていた。


近づいてドアをノックした。


*トン-トン-トン。*


中で足音。ゆっくりとした。


ドアが少し開いた。


老人、六十歳ほど。しわくちゃの顔、白髭と警戒した目。そして後ろに老婆が見えた、同じくしわくちゃで、白髪。


——金はない。——声が嗄れていた。——食料もお前たちが持って行った。蜂蜜を持って行きたいなら持って行け。


破途が瞬きした。


——じいさん。——声が真剣だった。疲れた。——「お前たち」って誰だ?


老人がよく見た。


——兵士か?——眉をひそめた。——でも…制服が違う。


——いや。そいつらじゃない。——破途が首を横に振った。——俺の友達を見なかったか?来なかったか?


老人が黙っていた。見ていた。


破途がドア越しに家の中を見た。整えられたベッド。


頭がくらくらした。脚が崩れそうになった。


「もうすぐ倒れる」


ドアの敷居に向かって一歩踏み出した。


——じいさん、怒るな…——声が弱かった。——横になっていいか?


後ろの老婆が素早く飛び上がった。


——お前の友達は見てない!——老婆が素早く。——別の場所に敷く!そこで私たちが寝てる!


破途が中に入った。脚が支えなかった。


ベッドに倒れた。


*ドスン。*


毛布の下に何か。固くて温かい。


呻き声。静かな。嗄れた。


破途が凍りついた。手で触れた。体。


毛布を取った。


見覚えのある青白い顔に痣。


滝。


——ここにいたのか!——破途が息を吐いた。——俺の友達が!


老人たちがショックで凍りついた。


——じゃあお前たちは…——老婆が瞬きした。——互いを知ってるのか?


——ああ。——破途が頷いた。かろうじて立っていた。——俺たちは友達だ。もう一人いたはずだ。彼らと一緒に。


——彼だけだった。——老婆が素早く。——じいさんがキノコを取りに行って森でお前の友達を見つけた。もう少しで捕まるところだった。森を自分の五本の指のように知ってて良かった。


老人が頷いた。


——でもお前の友達は具合が悪い、中毒か何かだ。——声が真剣だった。——そういうのを何度も見た。本当は、キノコから。昔知り合いがいて、キノコで中毒になったんだ、俺が駄目だって言ったのに…


——じいさん!——老婆が止めた。——今はお前の話をしてる場合じゃない!


老人が黙った。唇をすぼめた。


——何だ?——ぶつぶつ言った。——共有しようと思っただけだ。


破途が半分聞いていた。頭がよりくらくらした。


——彼だけ見つけた。——老婆が繰り返した。——他には誰もいなかった。


破途が弱く頷いて気絶した。


老婆がため息をついた。老人を見た。


——じいさん、手伝って。——声が疲れていた。——もう一人お客だ。


老人が頭を掻いた。


——じゃあどこに?——ぶつぶつ言った。——俺たち自身にも食べ物が足りないのに。


老婆が彼を見た。厳しく。


——追い出すつもりか?


老人が黙った。一秒。二秒。


——いや、もういい。——手を振った。——泊まらせよう。


老婆が破途を別の場所に寝かせ始めた。老人が手伝った。ぶつぶつ言ったが、手伝った。


-----


暗闇。


海渡が目を覚ました。


急に。息を吸った。乾いた空気が喉を焼いた。


「どれだけ…時間が?」


分からなかった。頭が回った。飢えから。渇きから。


「気絶した…数時間、たぶん」


辺りを見回した。洞窟。マグマ。檻。


静か。シューという音だけ。


視線が涼太の檻に落ちた。


横たわっていた。横向きに。手が伸びていた。動かなかった。


「疲れた…休ませよう」


海渡が彼を見ていた。長く。


「せめて彼がいて良かった」


重い息を吐いた。


「彼がいなければ…分からない。どうやってこんなに耐えられたか」


自分の檻を見た。格子を。床を。


視線が涼太に戻った。望まずに。


何かがおかしい。


よく見た。


涼太の手の近く、床に、小石。小さくて鋭い。


血に。


手の近くに——小さな水たまり。小さい。赤い。


血。


心臓が締め付けられた。


「駄目だ」


涼太を見た。伸ばした手を。小石を。


「駄目…そんなはずない」


理解した。


——涼太!——声が震えた。——涼太!


沈黙。


——涼太!——より大きく。声が裂けた。


唇が震えた。


——頼む…——声が嗄れた。——俺をここに一人にしないでくれ。


涙が流れた。熱い。頬を伝って。火傷を伝って。痛い。


——涼太!——叫んだ。——頼む!せめてお前は俺を置いていくな!


声が嗄れた。裂けた。


沈黙。完全な。


海渡が彼を見ていた。涙が止まらなかった。


「疲れた…これすべてに疲れた」


考えたくなかったこと。考えから逃げていたこと。今は唯一の選択肢に思えた。


「新しい拷問には耐えられない」


「自分で選んだ方がいい…誰かが決める前に」


涼太の檻の小石を見た。


「取らないと」


手を伸ばした。格子を通して手を。全力で伸ばした。


届かなかった。遠すぎた。


少し肩を後ろに引いて勢いをつけてその肩で檻の格子に打ちつけた。


*ドカン!*


檻が揺れた。少し動いた。


また打ちつけた。壁に。全力で。


*ドカン!*


檻が近づいた。涼太の檻に近く。


もう一度。


*ドカン!*


近い。


しかしまだ遠い。


絶望から手を伸ばした。最大限に。檻の床に横たわった。全身。格子に押し付けた。


伸ばした。


指が震えた。近い。


届かなかった。


——駄目…——泣いた。静かに。——駄目、駄目、駄目…頼む…


横たわっていた。手を伸ばして。泣いていた。


「これが俺の運命か?」


「こうして死ぬのか…苦しみの中で?」


「滝…破途…翔…どこだ?」


涙がより強く流れた。


「なぜ俺はここに一人だ?なぜお前たちは来なかった?」


苦さ。恨み。絶望と混ざった。


「お前たちは…俺の友達だろ」


涼太を見ていた。手を伸ばして。


涙が止まらなかった。


「一人…俺はここに完全に一人だ」


周りに——囚人たち。何十人も。檻の中に。


しかし海渡は一人だった。本当に。


「涼太…お前がいて一人じゃないと感じなかった」


絶望から手を握った。恐怖から。痛みから。


突然——動き。


涼太の手が少し揺れた。


海渡が凍りついた。起き上がった。


——涼太?——声が震えた。希望。かすかな。——生きてるのか?


沈黙。


——涼太、大丈夫か?——速く。——涼太?!


沈黙。


「気のせいだ…」


怒りから檻に手を打ちつけた。


*ドカン!*


涼太の手がまた震えた。


体の近くの血。水たまり。まるで揺れた。波のように。


海渡が凍りついた。見ていた。


「これは…俺がやった?」


もう一度試した。集中した。


何もない。


拳を握った。すべての恨みを集めた。憎しみを。絶望を。持っているすべてを。手に。


「血…液体だ。水」


手を伸ばした。目を閉じた。集中した。


涼太の体の下の水たまりの血を感じた。


集まった。動いた。


上に流れとなって球体に上がった。


血が空中に浮いた。


海渡がますます感じた。


涼太の体の中の血。静脈の中。冷たく動かない。


目を開けた。自分の手を見た。


部分的に狂った微笑が彼の顔に現れ始めた。


-----


足音。重い。近づいていた。


海渡が顔を上げた。


烈(れつ)がゆっくりと檻の間を歩いていた。手を背中に。顔が静か。微笑。


海渡の檻の前で止まった。


しゃがんだ。目を見た。


——さあ、相棒。——声が柔らかかった。嘲笑的。——新しい感情の一服の準備はできてるか?


横を見た。涼太の檻へ。


——どうやらお前の友達はとても疲れたようだ。——微笑んだ。——永遠に横になった。


海渡が彼を見ていた。黙って。


顔が静か。静かすぎる。


烈が眉をひそめた。何かがおかしい。


——お前は…——海渡が話し始めた。声が静かだった。——俺に素早い死を約束した。村がどこか話したら。


烈が瞬きした。驚いて。


——そうか?——海渡が彼の目を見た。


烈が微笑んだ。


——なんてこった。——笑った。——もちろん、もちろん。大きな贈り物をしてやる。お前の運命を軽くしてやる。


海渡が唾を飲み込んだ。ゆっくりと。


——話す。


烈が背筋を伸ばした。注意。檻に近づいた。とても近く。


恐れなかった。彼の反応の方が速い。いつも。


海渡が彼を見ていた。長く。


それから広く微笑んだ。狂ったように。


——何を…——烈が始めた。


海渡が集中した。


*シュッ!*


烈が凍りついた。


目が破裂した。


*ポンッ!ポンッ!*


水風船のように。


飛沫。血。液体。四方八方に飛んだ。


烈が叫んだ。


——俺の目に何をした?!


手を顔に。血が指の間から流れた。


海渡が右手をゆっくりと上に上げた。


烈が地面から上がった。浮いた。高く、高く。


——何だ?!——烈が暴れた。——何が起きてる?!


本能。無秩序な爆発。


*ド-ン!ド-ン!ド-ン!*


爆発。海渡の檻の周りに。四方八方に。


地面が爆発した。塵。煙。


海渡が目を閉じた。微笑んでいた。


——感じる。——静かに。


左手の握った拳を上げた。急に開いた。


烈の左腕。


*シュッ!*


破裂した。風船のように。


血の飛沫。四方八方に。


肘までの腕——水たまり。下に滴った。


——感じるうううう あはははははは!!!——海渡の大きな笑い声。


烈が叫んだ。より大きく。


——ああああ!!!畜生おおお!


爆発が続いた。無秩序に。至る所で。


*ドーン!ドーン!ドーン!*


海渡が右手で指差した。


烈の右腕。


*シュッ!*


破裂した。


右脚。


*シュッ!*


破裂した。


烈が空中に浮いていた。目なし。腕なし。片脚なし。


嗄れた声で叫び、むせた。


——どこだああ?!引き裂いてやるうう!!!


爆発。続いた。弱く。


——あはははははは——海渡が見て、微笑んで、大声で笑った。


烈から流れ出る血が滴らなかった。


上がった。空中に。糸のように。模様。美しい。恐ろしい。


海渡が目を閉じて烈の内側をより深く感じた。臓器。血。すべて。


——さあデザートだ。——声が冷たかった。


指を動かした。


——腎臓。


*シュッ!*


烈が叫んだ。これまでのすべてより大きく。


——ああああああ!!!!


体が痙攣した。けいれん。内側で——破裂。鋭く、切るような痛み。まるで何かが内側から引き裂くかのよう。


爆発が弱く。まばらに。


*ドーン…ドーン…*


——肝臓!!!——海渡が指を引いた。


*シュッ!*


烈が叫んだ。声が裂けた。嗄れた。息ができなかった。


——ああああ…ぐ-ぐ-ぐ…


呼吸しようとした。できなかった。血が内側から肺を満たした。


片脚が痙攣した。弱く。


爆発がほとんど止まった。


*ドーン… … …*


速い足音。兵士たちが駆けつけた。


海渡が目を開けた。彼らを見た。それから烈を。


——お前のような奴らは汚れを生み出し——密かに報復を渇望する。何よりもそれを待っている。——まだ微笑で。——喜べ!俺は——お前たちが育てた獣だ。今から、お前たちの体を引き裂く。


目を閉じた。


——心臓。


指を鳴らした。


*シュッ!*


沈黙。


烈が黙った。瞬時に。


体が力を失った。空中に浮いていた。


爆発が止まった。急に。完全に。


沈黙。完全な。


烈が落ちた。ぼろ切れのように。地面に。


*ドスン。*


兵士たちがそんな光景の前で凍りついた。


主要な指揮官がたった今空中に浮いていた、体の部分なしで。そして今、何かのぼろ切れのように落ちた。


誰かが剣を落とした。音を立てて。


海渡が両手を上げて集中した。


烈にあるすべての血、檻の中の死体にある血、こぼれた水たまりの血が、海渡に向かって動いた。


まるで赤い糸が四方八方から集まるかのよう。


兵士たちが見ていた。恐怖で。


血が海渡を包んだ、濃く密な覆いのように。


頭上でゆっくりと血の球体が回転していた。


海渡が檻の格子に手を向けた。


*バキッ!バキッ!バキッ!*


格子が藁のように曲がった。


檻が崩壊した。


海渡がゆっくりと出た。


血の覆いに全身を包まれて。頭からつま先まで。


烈の体が数秒で干からびた。まるでミイラのよう。


兵士たちが立っていた。手に剣。震えていた。しかし攻撃しなかった。


海渡が彼らを見た。


広く微笑んだ。


——遊ぶ準備はできてるか?!


章の終わり。

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