第42話
黒門(くろかど)は騒音で迎えた。
市場の広場が沸騰していた。商人たちが値段を叫び、頭上で刃を振り回していた。買い手は露店に群がり、武器を指差し、値切っていた。子供たちは足の間を走り回り、露店からリンゴを盗んでいた。匂い——路上の火鉢で焼かれた肉、金属と油、郊外の鍛冶場からの煙。
男がゆっくりと歩いていた。背が高く、肩幅が広い。黒い髪を短いポニーテールに結んでいた。右手の指の間に——小さな金属の棒。何気なく回していた。あちこちと。
最初の露店を通り過ぎた。その後ろに——白いひげを生やした年老いた商人が、剣を振っていた。
——秀明(ひであき)師匠の作品の残り物!衝撃吸収のルーン!最後だ!
露店の上に——剣、短剣、斧。ルーンが弱く光っていた——青く、赤く。所々歪んで刻まれ、線が震えていた。
さらに——巻物の店。商人の女が黄ばんだ巻物を広げた。
——頼(より)師匠の技術の写し!水の盾、火の玉!二十金貨!
さらに先——ルーン付きの護符、鎖に繋がれた指輪。
——再生のルーン!マナ隠蔽の護符!在庫があるうちに!
男は通り過ぎた。見ていた。商品があった。たくさんの商品。ルーン付きの武器、技術の写本、アーティファクト。
しかし全て——残り物。古い作品。写しの写し。
「商品はある。しかし新しいものは作られていない。師匠がいない」
手の中の棒がより速く回転した。
噴水のある広場。水が細い流れで流れ、子供たちが近くで遊んでいた。男は立ち止まった。街を見た——屋根、煙突からの煙、店の看板。
後ろから——足音。速く、明確に。軍人。
振り返った。
司令官。背が高く、痩せている。風に焼けた顔、左頬に傷跡。鎧は擦り切れている。立ち止まり、頭を下げた。
——堅地(けんじ)様。
男——堅地——は完全に彼に向き直った。棒が指の間で止まった。
——報告しろ。
司令官は背筋を伸ばした。
——一部の師匠は街の包囲の後、他の土地へ逃げました。南へ、五つの河の王国へ。西へ、海を越えて。もう手が届きません。——唾を飲み込んだ。——一部は近くの山岳地帯で見られたとされています。北東の森に誰かが住んでいるという狩人からの報告があります。隠れています。しかし森は巨大です。見つけられません。三回確認しましたが——結果はありません。
堅地の手の中の棒が止まった。
沈黙。噴水の音だけ。
司令官は一歩下がった。
——我々はここに一ヶ月以上います。——堅地の声は静か。危険なほど静か。——まだ一人の武器職人を見つけられないのか?
胸の中で何かが締め付けられた。熱く、引っ掻く。喉に上がってきた。拳を握りしめた——棒が掌に食い込んだ。
——様、我々はできる限りのことをしています。——司令官は素早く話した。——烈(れつ)様は自ら森を捜索しています。疑わしい者を全員捕らえています。尋問しています。全ての手がかりを調べています。
——つまり努力が足りない。
堅地は拳を開いた。
——もっと良くする必要がある。はるかに良く。——一歩前へ。——彼が必要だ。叔父の土地を取り戻したいなら。わかるか?師匠なしでは、我々はただの鈍い刃を持つ兵士だ。一週間。一週間で結果が出なければ……
言葉を終えなかった。
——わかりました、様。必ず成し遂げます。
——下がれ。
司令官は振り返り、素早く歩み去った。
堅地は一人残った。棒を見た。
「彼らは森にいるはずだ」
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宮殿。玉座の間。
柱が龍の絵が描かれた天井へと伸びていた。窓は高く、細い。光が筋となって落ちていた。
欲樹(よくじゅ)は作業机の椅子に座っていた。指が肘掛けを叩いていた——ゆっくりと、思案げに。
扉が開いた。
菖蒲(あやめ)が入ってきた。黒い髪を結い、ダークグリーンのドレス。手には——封印された巻物。
近づき、頭を下げた。
——父上。
——話せ。
——東部の土地。三つの村が働くことを拒否しています。税金を二ヶ月払っていません。徴収人が来たとき——追い出しました。一人は石で頭を打たれました。
欲樹は聞いていた。指が叩き続けた。
——反乱者は何人だ?
——約五百人。もっといるかもしれません。全員が公然と反乱しているわけではありませんが、仕事をサボタージュしています。
——恐怖とは何かを忘れたようだ。
「弱みを見せれば——首に乗ってくる」
立ち上がった。
——思い出させる必要がある。
菖蒲は待った。
——軍隊を送りますか?
——いや。——欲樹は窓に近づいた。——忍(しのぶ)を送る。
菖蒲はまばたきした。
——忍を?しかし彼は……
——柔らかくなりすぎた。——彼女に向き直った。——なぜ彼を雇っているのか忘れたようだ。思い出させよう、血の匂いがどんなものか。彼の仕事が何か。
「彼は師匠に農民を殺させるつもりだ。武器を持たない」
胸がどきりとした。菖蒲は巻物をより強く握りしめた。
——わかりました。——声がわずかに震えた。——命令を伝えます。
——待て。
欲樹は机に戻り、座った。
——もう一つ。自分の土地に戻りたい。短期間だが。
——自分の?
——そうだ。報告が来ている——全て順調、収穫は終わり、税金は期限内。しかし自分で確認したい。——間。——余計に確認しても損はない。
——いつですか?
——数週間後だ。忍と小百合(さゆり)を連れて行く。
菖蒲の目に何かが閃いた。安堵。
「父なしで。誰も見張っていない」
息を吐いた。
——それは良いことです。陰謀から休めます。そこの方が穏やかです。
欲樹は冷笑した。
——そう願う。ここでは宮廷のネズミにうんざりした。
——お下がりしてよろしいでしょうか?
——行け。忍とは近日中に自分で話す、農民のことと派遣について。農民たちに、誰に仕えているか思い出させる。
——かしこまりました。
退出した。扉が閉まった。
欲樹は一人残った。机の上の地図を見た。指で境界をなぞった。
「もう少しだ。もうほんの少し」
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森。黒門の近く。
雪はほとんど溶けた。木の陰の下、岩の下にだけ、白く汚れた島が残っていた。地面は解け、湿気と腐った葉の匂いがした。小川が根の間を流れ、せせらいだ。枝から滴が落ちた——ポタ、ポタ、ポタ。
兎鹿が小川から水を飲んでいた。小さな角、長い耳。足音を聞き、跳ね、逃げた。白い尾を一瞬見せた。
どこか右側で——水しぶき。熊カモノハシが湖に入っていた。広い鼻面、水かきのある足。
四人が道を歩いていた。
破途(はんと)が先頭。リュックが肩を引っ張った。肩紐を直した——肩が痛み、こわばっていた。
「二日間乾パンだけ。一度チーズ」
腹が鳴った。大きく。
——また演奏会か?——滝(たき)がにやりとした。——石で腹を満たすか?
——お前の昨日はそんなに吠えて、狼が集まると思ったぞ。
——嘘だ!
——鳥が恐怖で落ちた。見たぞ。
海渡(かいと)が笑い、根につまずいた。疲れて石に座った。
——休憩しないか?足が感じない。
翔(かずと)は黙って隣に座った。汗を拭った。指が震えていた——強くはないが、目立った。三週間の旅、乏しい食事、寒い野営。
破途は草の上に座った。水筒を取り出した——水は温かく、金属の後味がした。一口飲み、海渡に渡した。
——黒門まであとどれくらい?
——一日。——翔は目を閉じた。——一日半かもしれない。倒れなければ。
沈黙。小川のせせらぎ、風のささやきだけ。
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もう一時間歩いた。森がより密になった。木は古く、根が突き出ていた。破途は一度、二度つまずいた。
突然——声。大きい。
——彼女はあそこへ走った!追え!
全員が立ち止まった。
叫び声。近づく。粗野な声。
——捕まえろ!逃がすな!
木の間から少女が飛び出してきた。
赤い髪が炎のようになびいていた。顔は若く、十七歳くらい。怯えているが、決然としている。目は緑、大きい。服は質素——チュニック、ズボン。全て泥だらけ、袖が破れている。
必死に走っていた。速く。
全速力で滝に激突した。
——おっと!
滝がよろめいた。少女は振り返らず、さらに走り去った。
——おい!どこへ……
翔が凍りついた。
彼女の後ろ姿を見つめた。赤い髪が幹の間で揺れた。
心臓がより速く鼓動した。呼吸が速まった。
「何だこれは……なぜ……」
胸の中で何かが締め付けられた。わからなかった。ただ見つめていた。
彼らの間で何かが閃いた。小さく、光っている。ホタルのよう。
空中に浮かんだ。
——伏せろ!——海渡が叫んだ。
*ドカン!*
爆発。衝撃波。地面が震えた。
破途は滝と一緒に後ろへ飛ばされた。木にぶつかった。息が詰まった。
滝の体強化が発動した。破途を自分の体で覆った。
海渡は水のドームを作った。自分と翔を覆った。水は半分蒸発したが、耐えた。
彼らは吹き飛ばされた。
翔は頭を石にぶつけた。
*バキッ*
痛み。血がこめかみを伝った。温かく、べたついた。
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耳鳴り。
破途は立ち上がった。よろめいた。背中が痛んだ。
——全員生きてるか?
——ああ……——滝が埃を払った。——かろうじて間に合った。
海渡が翔を立たせるのを手伝った。彼は頭を押さえていた。指の間に血。
——大丈夫か?
——ああ……ぶつけただけだ。
掌を見た。赤い。
——そして赤毛が似合う。
全員が凝視した。
——何だ?!
——あの少女に。赤毛の色。
滝が鼻を鳴らした。
——いつもより頭を強く打ったようだな。
翔はまばたきした。
*ドカン!ドカン!ドカン!*
連続爆発。より大きく。より近く。木が倒れた。
——何が起こっている?!
さらに爆発。森が木っ端微塵になった。
——どうやら、少女を追っているようだ。——滝が顔をしかめた。——激しく追っている。
破途はその方向を見た。
「彼女は危険だ」
——助けるか?
——なぜ突然?俺たちの問題じゃない。
しかし破途はすでに走っていた。
——ついて来い!お前はしばらく座ってろ。——翔に向けて。
翔はまだ考えをまとめられなかった。
海渡と滝は顔を見合わせた。
——行こう——滝がため息をついた。
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少女は森を駆け抜けた。心臓がどきどきした。呼吸が乱れた。
右へ。
*ドカン!*
右で爆発。木が木っ端微塵。
左へ!
*ドカン!*
左で爆発。クレーターが煙を上げている。
「獲物のように追い詰められている?」
前方——爆発。鼻先の真正面。衝撃波が吹き飛ばした。倒れた。顔を覆って横たわった。
埃が落ち着いた。
誰かが歩いていた。ゆっくりと。重い足音。
顔を上げた。
男。背が高い——二メートル近く。筋肉質。黒い髪、眉を横切る傷跡。厳しい顔。目は暗く、冷たい。指なし手袋。
どこか遠くで。
——烈様、どこですか?!
男が応える。
——彼女を捕まえた、大丈夫だ。
——烈様、どこですか?!——再び遠くで声。
——捕まえたって言ってるだろ!!ああ、どうせ聞こえない。
烈(れつ)は上から見下ろした。冷笑した。
——長い間探していたぞ。
少女は後ずさった。
——何のことかわかりません。
——慌てるな。——声は低く、穏やか。——今からゆっくり話そう。
手を上げた。指先に火花。ホタルのように光った。
*ビュッ!*
誰かが横から飛び出した。木に足を——樹皮が割れた。彼女の前に着地した。
破途。
真っ直ぐになった。烈を見た。
——もちろん、俺の問題じゃない。しかし正しい側に立ったことを願う。
烈が目を細めた。
——消えろ、俺がまだ優しいうちに。
——そうか。——破途がにやりとした。——つまり正しい側に立った。
——お前は彼女と一緒か?
——何が起こっているのかわからない。しかし大人の男が森で少女を追いかけている——良くないことの匂いがする。別の話だが、少女が嫌がっていなくてそのフェチがあるなら。
*バシッ!*
後ろから頭を叩かれた。
——馬鹿か?!
——おい!——破途は後頭部をさすった。——お前のケースだとは言ってない!助けようとしてるんだ!
烈が冷笑した。
——終わったか?
——ああ。
——素晴らしい。じゃあ消えろ。
掌に火花。
破途が叫んだ:
——今だ!
地面が烈の足首を掴んだ。下に引っ張った。膝をついた、泥がまるで彼の手を掴んだかのように。
滝が茂みから飛び出した。拳に土の強化——灰色の石で覆われた。
顔の前にホタル。
*ドカン!*
爆発。点状、方向性。前方だけ。
滝が吹き飛ばされた。十メートル。木に激突した。
茂みから水の鞭。海渡が隠れ場所から操っていた。
烈が手を引いた。
*ドカン!ドカン!ドカン!*
鞭が引き裂かれた。爆発が海渡に追いついた。水の覆いが守ったが、吹き飛ばされた。
小さな爆発——烈の手が解放された。
滝が再び攻撃した。掌を地面へ。
足元の地面から板が、烈の周りで閉じようとした。
烈は腕を交差させた。掌を板へ。
*ゴオオ!*
地面が吹き飛んだ。
滝に向けて一連の爆発。一つが追いついた。気絶して倒れた。
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破途が前へ飛び出した。足に雷、風——推進。ジグザグに。
道にホタル。左、右、横へジャンプ。
「ほとんど!」
左手で風で引き寄せた。烈が前に引っ張られた。右手——指に雷。
風の推進。烈が破途へ飛んできた。
非常に近い。
「間に合った……」
ホタル。顔の真正面。
——何?!
*ゴオオオ!*
爆発。強力。木が吹き飛んだ。
破途が飛んだ。五十メートル。地面に激突した。
「痛い……」
横たわった。体に——雷の放電。弱い。
「覆い……間に合った」
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烈は少女に振り返った。
——考えるな。怒らせたら——破片も残らない。この言葉知ってるか?
彼女は怯えて頷いた。
突然——遠くから叫び声。
——やめて!お願い!
烈が振り返った。
轟音。強力な。火からのような。
兵士たちが森から飛び出した。彼の兵士。四人。走り、振り返っていた。
——様!そこに……
火の壁が彼らを追いかけた。覆った。
悲鳴が途切れた。灰が空中へ。
「興味深い」
誰かが炎から飛び出した。飛んでいた。足元に火。
翔。顔は決然とし、冷たい。こめかみの血は乾いていた。狂犬の目。
烈は両手を突き出した。ホタルが群れを成した。
翔は避けた。火の壁が立ち上がった。視界を遮った。
*ドカン!ドカン!ドカン!*
何千もの爆発。音が森の外まで聞こえた。
火はほとんど消えた。
明るい軌跡。火の蛇。翔の手からのリボン。木々を通って飛び、全てを焼き尽くした。
「爆発は止まらない!」
烈は逃げ始めた。足元の爆発——加速。森を飛んだ。
蛇が木々を通って飛んだ。
追いかけた。
烈は自分の足を見た——蛇がかかとのすぐ近く。一瞬集中を失った。木にぶつかり、轟音とともに森の端で倒れた。
「負けた……」
蛇が止まった。一メートル先で。
「許した?それとも技術の限界?」
立ち上がった。
遠くに巨大な火の竜巻。直径数十メートル。
「何人いてどれほど強いか不明。今は撤退する必要がある……とりあえず」
激しく息をしながら冷笑した。
——次は必ず続きをしよう。
-----
翔は竜巻の中心に立っていた。火が周りを回転し、友人たちと赤毛の少女には触れなかった。
手が震えた。全身が。
「何をした?彼らは叫んでいた……」
手を下ろした。火が消えた。膝をついた。
破途が最初にたどり着いた。
——大丈夫か?
ゆっくりと頷いた。
——ただ疲れた。
海渡が立ち上がるのを手伝った。少女が大きな目で近づいた。
——ありがとう。私を救ってくれた。
破途は肩をすくめた。
——どういたしまして。死にかけたけど。
滝は肩をさすった。
——次は爆発なしで。
疲れながら笑った。
森が煙っていた。灰が落ち着いた。
しかし彼らは生きていた。
*章の終わり*
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