第39話
朝。橋のそばの小屋。
静寂——穏やかではなく、重苦しい。胸を圧迫するような。
彼らは小屋の中に座っていた。
零司(れいじ)は壁際に座り、肘を膝に置いていた。シャツは血まみれ——乾いた、褐色の。しかし本人は——傷一つない。
勇翔(ゆうと)は窓際に立ち、他の者に背を向けていた。肩に力が入り、拳を握りしめている。一点を見つめている——地平線、昨日閃光があった場所を。
剣心は玄関の床に座っていた。視線は虚ろ。涙は乾いたが、目は赤い。
鉄也(てつや)は右手を押さえていた。指は腫れ、前腕全体に青あざ。動かそうとすると——顔をしかめた。
素繰(そくり)と画狂(がきょう)は黙っていた。打撲、擦り傷。一人また一人——全員無事だ。しかし勝利の実感はなかった。
焔(ほむら)は勇翔の隣に立っていた。何も言わない。ただそばにいるだけ。
——それで……——勇翔は振り返らなかった。声は平坦だが、その下に——鋼。——何があった?
零司は顔を上げた。手のひらで顔を拭った——泥を塗り広げた。
——小屋に来た。少女が中に入れてくれた。お茶を淹れた。——短い文。余計なものなし。——戦争について話していた。皆が他人の駆け引きのために死んでいくと。
視線は床へ。
——それから言った——告白しなければならないと。幻影が解けた。——拳を握った。——彼だった。破途(はんと)。第五。
——この破途。——勇翔の平坦な声。——誰だ?
焔が彼を見た。
——月森で戦った相手だ。市場で。——間。——勇(いさむ)を殺した。
勇翔は動きを止めた。振り返らなかったが、こめかみの静脈が脈打っていた。
——攻撃しようとした。雷が消えた——剣のルーン。——零司は腹、剣があった場所を撫でた。——壁に打ちつけられた。剣が腹に、鎌が……——彼は黙った。
焔は歯の間から息を吸い込んだ。
——真司(しんじ)がそばにいた。破途が彼と話していた。「統合」について。彼らは「一つだった」と。——零司は首を横に振った。——そのとき理解できなかった。ほとんど意識を失っていた。断片しか聞こえなかった。
——深雪(みゆき)は?——勇翔の声は静か。静かすぎる。
零司は唾を飲み込んだ。
——深雪……海渡(かいと)。彼らの一人……彼女は彼の手で死んだ……俺は何も……できなかった。
勇翔が振り返った。
怒りではない。激怒。純粋な、冷たい。唇は剥き出し、歯を食いしばっている。手が震えている——恐怖からではない。抑えきれない嵐から。
剣心へ一歩。もう一歩。
剣心は顔を上げなかった。
勇翔は彼の襟を掴んだ。引き上げた。剣心は立ち上がったが、抵抗しなかった。
——お前。——声が震えた。——お前が彼女を連れ出した。
剣心は黙っていた。涙が頬を伝った。
——彼女は安全だったんだ!——勇翔は彼を揺さぶった。——宮殿に!警護の下に!なのにお前は……お前は彼女を連れて行って守れなかった!
——勇翔。——焔が前に出た。
——黙れ!
剣心は視線をそらさなかった。言い訳もしなかった。
——もしお前が彼女を残していたら……——勇翔はほとんど囁いた。顔が歪んだ。——彼女は生きていた。
——わかっている。——涙がさらに流れた。——わかっている。
——なら何故だ?!——剣心を掴んだまま、壁に叩きつけた。
鉄也が飛び上がり、勇翔の肩を掴んだ。
——やめろ!
素繰が反対側から。
——勇翔、彼は……
——なら俺も責めろ。——零司が立ち上がった。声は低い。——俺もそこにいた。止められなかった。救えなかった。
勇翔は剣心を見つめた。一秒。二秒。
手を離した。
剣心は膝をついた。手が震えた。
勇翔は背を向けた。窓へ歩いた。拳で枠を殴った——木が割れた。
——次に会ったら。——彼は息を吐いた。——それが奴にとって最後だ。
静寂。
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剣心は床に座っていた。涙はもう出なかった。ただ壁を見つめていた。
「俺は……できなかった。守れなかった……」
手が拳になった。
「弱い。役立たず。彼女は死んだ、俺が弱いから」
怒り。勇翔に対してではない。自分に対して。
零司が隣に座った。黙って。ただ座っているだけ。
——彼は俺を知っている。——零司が突然言った。全員が見た。——破途。これが二度目だ、彼が俺に……まるで俺が何かした。彼に。何か悪いことを。
——確かか?——焔が眉をひそめた。
——百パーセントではない。——零司はこめかみを押さえた。——だが感じる。声に軽蔑の響きがあった。何か個人的な。
——勘違いじゃないか?——鉄也が推測した。
——かもしれない。——零司は首を横に振った。——だが次に会ったら……確かめる。そして復讐する。全員のために。
——武(たけし)。——兄弟に視線を向けた。——話してくれ。
鉄也は顔をしかめ、腕をさすった。
——速い。足元の地面が揺れていた、彼が動くと。——打撃を思い出した。——賢い。戦術家。一歩先を読んでいた。まるで時間を稼ぎながら、俺の技術の欠点を理解しているかのように打ってきた。
画狂が頷いた。
——技を操る、まるで……——言葉を選んだ。——まるで生涯それだけをやってきたかのように。
零司はため息をついた。
——あそこには四人いた。破途を除いて。——指を立てた。——武。土。——二本目の指。——海渡。彼は静脈と血について何か言っていた。恐らく、それを通じて俺たちを操っていた。おそらく水に関連している。——三本目の指。——男。翔(かずと)。火。頭上に火の球。——四本目。——少女。芳禍(ほうか)。緑の髪。戦いに飛び込まなかった。浮いていた。
——四人。——素繰が繰り返した。——破途を加えて五人。
鉄也が眉をひそめた。
——慈様は六人だと言っていた。
全員が顔を見合わせた。
——六人目は誰だ?——画狂が頭を掻いた。
——雷?——焔が推測した。
零司が身を震わせた。彼には雷がある。
——それとも風?——素繰が考えた。——零司の話だと、芳禍は属性を使わなかった。少なくとも、彼の前では。風かもしれない?
——雷の気配はなかった。——零司は首を横に振った。——もし彼らが属性を重複させないために集まったなら、おそらく風の属性だ。
——六人目……——鉄也がつぶやいた。——誰だ?
疑問が宙に浮いた。
鉄也は耳から血を拭った。
——雷の覆い。——兄弟を見た。——見たか?
素繰が頷いた。
——そして打撃は風の属性だった。
——つまり……全ての属性を持っているのか?
静寂。全員が意味を理解した。
素繰が眉をひそめた。
——だがなぜ以前使わなかった?
——真司と統合した後……——画狂が頭を掻いた。——雷が現れた。もしかして、それまでは力を奪われていた?
誰も答えなかった。ただ顔を見合わせただけ。
——もし取り戻したなら……——素繰がゆっくりと口にした。——完全ではない。でなければ……
言葉を終えなかった。全員が理解した。
——どれくらい早く回復できる?——画狂が兄弟を見た。——そもそも可能なのか?それとも真司のように何か必要なのか?
鉄也は血を拭った。
——もし彼らが六人で……破途が以前力を持っていなかったなら……——間。——もしかして、その六人目が雷の使い手なのでは?
——雷で幻影を作れるのか?——画狂が兄弟を見た。
——恐らく無理だ。——素繰は首を横に振った。
勇翔が振り返った。グループへ数歩進んだが、距離を保った。
——どこかで聞いた……——全員の視線を外して。——雷は非常に複雑な属性だと。技は……普通じゃない。他の属性とは違う。
——普通じゃない?——鉄也が眉をひそめた。
——まあ……——勇翔は肩をすくめた。——傷が自然に治るとか。それとも……頭に何かする。思考を加速させる。もしかしたら思考を読むことも。——黙った。——詳しくは知らない。ただどこかで聞いた。
間。
零司は壁際に座っていた。聞いていた。考えていた。
「あの六人目の「桜」のメンバー……おそらく彼が雷の使い手だった。もし幻影が破途に力が現れる前からあったなら……もしそれを六人目が操っていたなら……」
眉をひそめた。
「なぜ俺たちを以前殺さなかった?もし破途に力がなかったなら……なぜ六人目は俺たちを始末しなかった?そして雷が思考を操れるなら……もし彼らに真司が必要だったなら……」
拳を握った。
「なぜ力ずくで奪わなかった?幻影を通じて?なぜこんな芝居を?」
慈様の言葉を思い出した。
「情報提供者。彼は情報提供者について話していた。誰かが「桜」について情報を流している。誰だ?誰が俺たちの居場所を知っていた?誰が真司について知っていた?」
頭が疑問で破裂しそうだった。あまりにも不明なことが多い。あまりにも多くの推測で答えは一つもない。
「全てがとても奇妙だ」
別の言葉を思い出した。痛みを通して聞いたもの。
「今日守っている者が、明日はナイフを手にする。権力は富める者のもの。貧しき者がそれのために戦う」
歯を食いしばった。
「後者には同意する。だが大切なものを守らないのは……臆病者か利己主義者だ。自分のものを守らなければ……殺される」
勇翔は再び背を向けた。黙っていた。
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宮殿。玉座の間。
雪姫(ゆきひめ)姫は玉座に座っていた。背筋を伸ばし、手は肘掛けに。顔は穏やか——仮面。しかし目には……疲労が見えた。
彼女の前に——三人の使者。交渉から戻ってきた。
——殿下、——年長の使者が頭を下げた。白髪、深いしわ。——報告いたします。
——話せ。
——帝国が条件を提示しました。——彼は巻物を取り出した。——完全な服従。帝国の軍隊が我が領土に駐留。年間資源の貢納。
雪姫は肘掛けを握りしめた。
——それで?
——人間の貢納。——使者は唾を飲み込んだ。——若者を。彼らの軍のために。毎年。
静寂。
——断る。——雪姫は平坦に言った。——当然だ。
——はい、殿下。——使者が頷いた。——しかし帝国の使者たちは……——彼はためらった。
——何と言った?
——「これは提案ではない。形式だ。ペンか剣か——選べ」——使者は視線を落とした。
雪姫は立ち上がった。窓へ歩いた。下の街を見下ろした。
——考える必要はない。——声は静かだが、固い。——戦争になる。
使者たちは顔を見合わせた。
——殿下……
——どちらにしても戦争になる、今でなければ後に、彼らの力がさらに増したときに。彼らが欲しいのは土地だけではない。——雪姫が振り返った。——彼らは俺たちを消し去りたい。古い権力を。古い秩序を。新しい世界を築くには、古い世界を破壊する必要がある。わかるか?
使者たちは黙っていた。
——俺たちが過去を覚えている限り、未来に抵抗する。——彼女は広間を歩いた。——だから彼らは頼まない。要求する。完全な服従。または死を。
使者たちの前で立ち止まった。
——自分の土地と未来のために最後まで戦う方がいい。——視線は厳しい。——奴隷になるよりも。
——しかし……
——評議会を招集しろ。——雪姫が遮った。——直ちに。全ての同盟国に手紙を送れ。言え——今日は俺たち、明日は彼らだと。助けさせろ。
——二週間あります……
——考えるために?——雪姫は皮肉った。——考える必要はない。準備のために時間を使え。疑いのためではなく。
使者たちは頭を下げた。退出した。
雪姫は一人残った。
窓に近づいた。枠に寄りかかった。
「深雪……せめてあなたは遠くにいる。戦争から。血から。きっとそこでは平穏でしょう……」
ドレスの端を握った。
「勇翔と勇から長い間手紙がない。何かあったのか?それとも道が悪いだけ?」
目を閉じた。
「あなたが無事でいますように、妹よ」
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皇帝の執務室。
久志(ひさし)は机に座っていた。太い指で歯をほじっていた。爪楊枝が軋んだ。
彼の前に——使者。片膝をつき、頭を下げている。
——月森について繰り返せ。
——はい、陛下。——使者は頭を上げなかった。——殺し屋は帝国の者だと主張しました。数人の兵士と騎士を殺害。逃走しました。
久志は爪楊枝を抜いた。先端を調べた。
——馬鹿げている。——机に投げた。——反乱軍は完全に嗅覚を失った。浮浪者が帝国の者だと言えば、彼らは信じるのか?
茶の入った杯を取った。スプーンでかき混ぜた。一口飲んだ。
——風花近くの閃光は?
——不明です、陛下。——使者はさらに深く頭を下げた。——目撃者によれば——まるで第二の太陽が輝いたと。しかし原因は特定できませんでした。
久志は杯を置いた。スプーンを取った。親指で真ん中を押した。
金属が曲がった。ゆっくりと。スプーンはほぼ半分に曲がった。
——破途はどこだ?
——わかりません、陛下。
久志はスプーンを机に投げた。それは音を立てた。
——この成り上がり者。——自分に向かってつぶやいた。——どこをうろついている?何をしている?
「もしかして二重スパイ?腹立つ……」
手を振った。
——行け。新しいことがあれば報告しろ。
使者は頭を下げた。後ろ向きに退出し、背を向けなかった。
久志は窓を見つめた。暗い雲が地平線に集まっていた。
「もしお前が裏切り者なら、破途……この地で長く歩けないだろう」
ドアがノックされた。
——入れ。
将軍が入った。鎧が輝き、腰には剣。
——陛下。戦争準備の命令は?
久志は立ち上がった。壁の地図へ歩いた。雪姫姫の領土を指した。
——準備しろ。——声は平坦。——軍隊、物資、攻城兵器。
——承知しました。
将軍が頷いた。
——下がれ。
将軍は退出した。
久志は窓に戻った。窓枠を握りしめた。木が指の下で割れた。
「新しい世界。古きものの灰の上に」
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風花。市場。
——見ろ!あそこを見ろ!——布商人が森の方向を指差した。
地平線に巨大な竜巻が立ち上がっていた。暗い回転する空気の柱が地面から雲まで伸びていた。
会話が止んだ。誰かが袋を落とした——それは石畳を転がり、誰も拾わなかった。
——あれ……こっちに来るのか?
——止まっている。だがもし……
女は子供を胸に抱き、家に向き直った。男は妻の手を掴み、脇へ引いた。商人はゆっくりと商品を下ろし、地平線から目を離さなかった。
子供が泣いた。それからもう一人。
——どこから来た?
——あの方向だろ……数日前に煙が上がってた場所?覚えてるか?
指が自然に拳になった。誰かが唾を飲んだ。誰かが気づかずに祈りを囁いた。
風がその方向から吹いた——焦げた木の匂いを運んできた。
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開けた場所。
竜巻の中心には静寂があった。
絶対的な。死んだような。
足元の地面は——変わらない。黒く、ひび割れ、最近の爆発による深い溝がある。
この破壊の真ん中、膝をついて芳禍が座っていた。
頭は垂れている。緑の髪は乱れ、濡れた顔に張り付いている。手は力なく膝の上に置かれていた。
涙が頬を伝った。焦げた地面に落ちた。もう一つ。もう一つ。
口は半開き——内側にあったものを全て泣き尽くし、今は何も残っていない。音も、力も、言葉も。
ただ空虚。
彼女の周りには——風の壁。回転し、狂ったように、全てを引き裂いている。しかしここ、中心では、空気は動かなかった。
嵐の目。
芳禍はまばたきをした。もう一つの涙。
「なぜ私は許した……」
唇が音もなく動いた。
「なぜ……なぜ私は許した……」
布を握りしめた指——青いハンカチ、時間で色褪せている。折り目が擦り切れている。かつて忘れられた贈り物。
拳で握りしめた。胸に押し当てた。
涙がさらに流れた。
竜巻が外で吠えていた——耳をつんざく、すべてを飲み込む咆哮。しかし彼女はそれを聞いていなかった。
静寂に座っていた。自分の静寂に。
もう二度と、彼女が救おうとしなかった人がいない場所に。
*章の終わり*
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