第34話
戦いの翌朝。雪がまだ降り、昨日の戦いの跡を覆っていた。
疾風が、まるで荷物のように自来也の背中にいた。目は開いており、怒りに満ちていたが、体が言うことを聞かなかった。指一本動かせなかった。
芳禍がリュックサックに手を入れ、備蓄を確認した——昨日の戦いの後、草の半分を使った。横のポケットから乾燥した紫の花が落ちた。
滝がそれを拾った。
——美しい。
——そう?——芳禍が喜んだ。——特に乾燥していない時は。ただ、毒があるけど。
滝の顔が瞬時に変わった。花を指先で持ち、まるで熱い炭のように。
——心配しないで、これは動けなくするだけで、殺さない。——芳禍が小さな袋を取り出した。——大事なのは、その近くで息を止めること。気に入ったなら、種を取って。
——これは余計だと思う……——滝が袋を返そうとした。——これはお前の花だ。こんな……貴重な贈り物は受け取れない。
——たくさん持ってるから!——芳禍が袋を彼の手に押し込んだ。——せめてこの日の記憶がお前に残る。
とても誠実に微笑んだので、滝は断れなかった。
——忘れるな、植えたら部屋を換気すること。——冷笑した。——たくさんの花粉を生成して空気中に放出できるから。それで麻痺する。
滝が袋を指先で取り、ポケットに隠した。
「植えない限り無害だろう……願わくば」
——では決定だ。——翔が肩のリュックサックを直した。——俺たちは黒門へ行く。
——俺たちは華滝に戻る。——破途が自分の「家族」を見た——自来也、芳禍、栞。——彼らを置いていけない。
滝が近づき、破途の肩を叩いた。強く——彼がよろめいた。
——気が変わったら、追いつけ。俺たちは急いでいない。
——またはそこで会おう。——海渡が加え、握手のために手を差し出した。——黒門で。いつか。
破途が握った。固く。
——必ず。
「別れるのは奇妙だ。まるで自分の一部を残すようだ」
——おい、しおれるな!——滝がニヤリとしたが、目にも悲しみがあった。——これは永遠じゃない!
——もちろん。——破途が微笑んだ。——ただ……気をつけて。
——お前も。——翔が頷いた。短く、しかし誠実に。
三人が西に向かった。破途が彼らを見送り、木々の後ろに消えるまで。
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嵐戸への道。
自来也が疾風を背負っていた。彼は重くなかったが、死んだ重さが疲れさせた。一歩ごとに背中に鈍い痛みが響いた。
——すみません。——芳禍が隣を歩き、時々疾風のマントを直した。——本当に戦うつもりはなかったんです。あの時雨が自分から攻撃してきた。実は友達を迎えに来たんです。
——むむむ!——疾風が激しくうめき、目がまるで雷を放っているようだった。
——お気持ちはわかります。——芳禍が申し訳なさそうに頭を下げた。——本当に申し訳ございません。
——むむむむむ!
——もうこんなことは起きません、約束します!
破途が少し後ろで栞と歩いていた。彼女が手を袖に隠しているのに気づいた——指が寒さで白くなっていた。
編んだ手袋を脱いだ。黙って差し出した。
栞が赤くなった。手袋を取り、着けた。彼の手からの温もりがまだ羊毛に残っていた。
——ねえ!——芳禍が振り返った。——なんで私にはそんなことしないの?
——お前は自分のがあるだろ。——自来也が荷をより快適に持ち直した。
——でも私はお前のが欲しいかも?
——なんで二組の手袋が必要なんだ?
——もしかしたら集めてるかも!——芳禍が腕を組んだ。
——今お前は俺の頭を「集めて」るな。——自来也がぶつぶつ言った。
——あらそう?——彼女がふくれた。——じゃあもうお前とは話さない!
——ありがたい。
——ダメ!——すぐに考え直した。——嵐戸まであなたの頭を「集める」わ!いや、華滝まで!
——神様、力を……——自来也が目を回した。
疾風が何かうめいた、明らかに良いことではなかった。
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山の村。夕方。
小さな家の窓から温かい光。中は快適だった。木の壁、床に熊カモノハシの皮、暖炉の上にヘラジカライオンの頭。焼き魚とパンの匂い。
堅地がパンを割って妻に渡した。
——パパ、なんで雪は白いの?——五歳くらいの娘がスープの中でスプーンを回していた。
——何色であるべきか忘れたからだ。——男がウインクした。
妻がくすくす笑い、暖炉のそばで赤ん坊を揺らしていた。赤ん坊は平和に眠り、鼻を鳴らしていた。
——パパの言うこと聞かないで。雪は白いのは……
*コン・コン*
扉をノック。男が魚を口に運ぶ途中で凍りついた。
「こんな吹雪に?誰だろう?」
笑みが顔から滑り落ちた。立ち上がり、ゆっくりと扉に近づいた。
開けた。
——こんにちは、堅地様……
*バン!*
客の鼻先で扉を閉めた。
——誰?——妻が尋ねた。
——間違えて来た。——堅地がテーブルに戻り、座った。
*コン・コン・コン*
——本当に?——妻が眉を上げた。
——絶対に。
*バン・バン・バン!*
ノックが大きくなった。しつこくなった。
——とてもしつこい……間違える人たちだ。——堅地が魚を切り、娘の皿に置いた。
妻が立ち上がった。夫に近づき、身をかがめた。声が鋼のようになった。
——あなた。開けて。扉を。お願い。
堅地が彼女の目を見た。ため息をついた。目を回して扉に向かった。
開け放った。
雷志が雪まみれで立っていた。唇が青く、全身震えていた。
——け-堅地さ-様……
——もごもご言うな。——堅地が横に退いた。——入れ、来たんだから。
雷志が中に転がり込んだ。彼から雪が溶けて入口に水たまりができた。
——テーブルにどうぞ!——妻が忙しく動いた。——魚はいかがですか?温かいカメレオン魚、新鮮ですよ!
——あ-ありが-がたく。——歯がガチガチ鳴った。——あ-温かいものは大-大好きです。
暖炉のそばに座り、凍えた手を火に差し出した。指がゆっくりと赤みを帯びた。
——なぜ中に直接テレポートしなかった?——堅地がお茶を注いだ。熱く、焼けるような。
——あ-あえて。——雷志が震える手でカップを抱えた。——そ-そうしないと……考えるものがなくなると思った。
——頭はまだ働いている。——堅地が向かいに座った。——それはいい。とりあえず。
黙って食べた。雷志が徐々に温まり、震えが止まった。
——堅地様……——彼が始めた。
——いや。
——でもあなたは知らない……
——知っている。——堅地がフォークを置いた。——俺には家族がいる。責任がある。そしてお前たちのところには戦争がある。今日は一つ、明日は別の。誰かと団結し、誰かを鎮圧する。今回も俺なしで対処できると確信している。
——でも今回は本当に深刻です!——雷志が前のめりになった。——王子が死んだ!欲樹が領土を奪っている!何千人も死んでいる!彼らの主要魔法使いは……
——つまり、欲樹にはすでに三つの国がある。——堅地が遮った。——それでも足りない。
黙った。眠っている息子、スープを食べ終えている娘を見た。
——俺には家族がいる。子供がいる。生まれて初めて平和がある。そしてこの平和への責任がある。叔父は気の毒だが、これは俺の戦争じゃない。
——これはまだあなたの戦争じゃない……
——あなた。——妻が夫の肩に手を置いた。——そんなに待たれているなら、もしかして重要なのでは?
——ここでも待たれている。
暖炉で何かが割れた。炭が動き、火花が散った。堅地のオーラが一瞬輝いた——見えないが、感じられる。
——雷志は食べて帰る。——声が反論を許さなかった。
雷志が頭を下げた。黙って食べ終えた。
「申し訳ございません、陛下。私はできませんでした」
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嵐戸の門。
——これは……疾風様!——衛兵が息を呑んだ。——どうしたんですか?!
——こんな状態で拾いました。——自来也が注意深く麻痺した戦士を渡した。——道で。
——本当に本当に!——芳禍が無邪気な顔で加えた。
「まあ、技術的には本当に「拾った」……地面から」
衛兵たちが疾風を腕の下で支えた。彼が四人を純粋な憎しみで見つめ、それから顔をそらした。
「もうお前たちを見たくない」——彼の視線がそう読めた。
衛兵が疾風を医務室に連れて行った。
——せめて少し街を見ましょう。——芳禍が提案した。——いつまた戻れるか。
——少しだけだぞ。——破途が神経質に周りを見回した。——華滝のことは一言も言うな。ここは耳だらけだ。
——黙ってます!——芳禍が指を唇に当てた。
——魚のように。——自来也が確認した。
市場の広場が騒音と色彩で彼らを迎えた。戦争にもかかわらず、貿易は活発だった。
布地の店。あの店主——小さな口ひげの痩せた男——が破途を瞬時に認識した。
——おお!若い方!——笑顔を広げた。——結婚式用の絹を買いに戻られましたか?
それから隣の芳禍に気づいた。
——ああ、自分用じゃなかったんですね!お嬢様のために!素晴らしいセンスだ!
栞が凍りついた。顔がちらりと曇った——ほんのわずかだが、破途は気づいた。
「嫉妬?栞が?」
——いえいえ、誤解です……——彼が始めた。
——わかりますわかります!——店主がウインクした。——若者、情熱、秘密の逢瀬!
栞が顔をそらしたが、耳の先が裏切るように赤くなった。
破途が赤い絹のハンカチを掴んだ。
——これだ!——栞に差し出した。——お前に。ただ……ただそのまま。
彼女が震える指でハンカチを取った。顔がその絹の色になった。
——あ-ありがとう……
——私も欲しい!——芳禍が青いハンカチを指差した。
買った。自来也に向き直った。
——手を出して。
——なぜ?
——出して!
彼が差し出した。彼女がハンカチを彼の手のひらに入れた。彼が驚いて瞬きした。
そしてすぐに取り戻した。
——あら、これは私のだった!——甘く微笑んだ。——あなたって可愛い!
笑みが消えた。顔が真剣になった。振り返ってさらに進んだ。
自来也が口を開けたまま立っていた。
——あの女は絶対に何かおかしい……
香辛料の店を通り過ぎた——シナモンと胡椒の匂い。魚の列を通り過ぎた——海狼が相変わらず牙をむいていた。食器を通り過ぎた——店主が彼らを傲慢な視線で測り、顔をそらした。
「師匠は俺たちを待っているだろうか?それともすでに諦めたか?」
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玉座の間。
金と大理石。百年杉ほどの太さの柱が天井に向かって伸び、そこで漆喰の龍が永遠の戦いで絡み合っていた。玉座——黒檀と象牙、背もたれは翼を広げた不死鳥の形に彫られていた。
忍が赤い絨毯の上に立っていた。この贅沢すべてに対して一人。壁そのものが圧迫する権力に対して。
——二万人が死んだ!——声が天井に響いた。——昨日報告が来た——武田の軍が完全に殲滅された!
欲樹が動かずに座っていた。指だけが——象牙の肘掛けを叩いていた。薬指には——印章の指輪。ウズラの卵ほどの大きさのルビーが松明の光を捉えていた。
——それで何を提案する?——声は静かだが、広間の静寂の中で雷のように響いた。
——戦場に出させてください!一人で軍に匹敵します!
——あの雷志一人が王国に匹敵する。——欲樹が前のめりになった。松明の影が彼の顔を仮面にした。——雷志が待っている。お前が宮殿を出た瞬間——ここにテレポートする。
——彼はそんなことは……
——しない?——王が立ち上がった。ゆっくりと、まるで大きな猫が伸びをするように。——彼の王子は死んだ。殺人者を許すと思うか?
忍が拳を握りしめた。
——では許可なく行きます。
欲樹が高台から降りた。一歩一歩が響いた。忍から一メートルのところで止まった。
——それでお前がどうなるか知っているな。——質問ではない。断定。
——知っています。——忍が顎を上げた。——しかし私がいなくなれば、あなたは自分で戦わなければならない。五人の悪魔級魔法使いに対して。
視線が交わった。王の灰色の目——冷たく、計算高い。忍の暗い目——絶望的だが、決意に満ちている。
——どのくらい持ちこたえられる?——忍が続けた。——一日?二日?
沈黙。松明だけがパチパチ音を立てた。
——一日、一日だけだ。——ついに欲樹が言った。——偵察戦闘。それ以上はダメだ。
——一日で十分です。
王が玉座に戻った。座った。手を振った——解放する。
——そして忍……遅れるな。
——お気遣い、恐縮です、陛下。
巨大な扉——青銅と木、開けるには三人必要——で忍が立ち止まった。
——せめて一度でも兵士たちを人として見たらどうです?名前、家族、夢がある人として?
——出て行け。気が変わらないうちに。
扉が閉まった。轟音が広間に響いた。
欲樹が金と大理石の中に一人残された。
*章の終わり*
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