第14話
3日目の朝。街外れの広場。
太陽が高く昇ったが、木陰にはまだ涼しさが残っていた。チームは朝の訓練を終えていた——腕立て伏せ、スクワット、ストレッチ。
——十分だ。——忍(しのぶ)が手を叩いた。——休め。
全員が草の上に倒れ込んだ。破途(はんと)は荒く息をついた——体力トレーニングは雷の修行より辛かった。
——軟弱だな。——自来也(じらいや)が隣で寝転がり、頭の後ろで手を組んだ。——俺はあと百回できるぞ。
——そうか?——芳禍(ほうか)が肘をついて体を起こした。——そんな姿見なかったけど。
——大事なことに力を温存してるんだ。
——いびきのために?
——おい!
栞(しおり)は離れたところに座り、様子を見守っていた。唇に軽い笑みを浮かべて——彼らの言い合いには慣れていた。
忍は弟子たちを思案げに見つめた。それから何かを決めたように頷いた。
——ゲームをしよう。——彼が宣言した。
——ゲーム?——破途が座った。——どんな?
——簡単なものだ。——師匠が立ち上がり、膝を払った。——私に触れた者が勝ちだ。
——それだけ?——自来也が飛び起きた。——ただ触れればいいのか?
——ただ触れればいい。
——楽勝じゃん!——芳禍が立ち上がった。——先生は属性を使わないんですよね?
——使う。——忍が冷静に答えた。——五つ全部。
沈黙。
——五つ全部?——破途が瞬きした。——でもそれって……
——不可能?——忍が微笑んだ。——芳禍の米三杯を食べて生き延びるのが不可能だって言うけどな。
——ちょっと!私の料理そこまで酷くないわ!
——先週お前のスープが鍋に穴を開けたぞ。——自来也が思い出させた。
——あれは酸だった!瓶を間違えたの!
——お前、調味料の隣に酸を保管してんのか?!
——同じ瓶だから便利じゃん!
全員が芳禍から距離を取った。
忍が広場の真ん中に歩いていった。リラックスして立ち、両手を下ろした。
——始めろ。
弟子たちが顔を見合わせた。
「五つの属性全部?ブラフか?」——破途が思った。
「二つ以上使うの見たことない」——芳禍が考えた。
「じじい、何か企んでるな」——自来也が目を細めた。
同時に攻撃した。
芳禍が右から——風の一撃、強力で、胴体を狙った。自来也が左から——脚に雷、速度で突進。
忍は微動だにしなかった。
芳禍の右足の下の地面が突然陥没した。バランスが崩れ、一撃が上に逸れた——師匠の頭上を通過した。
自来也の下で地面が液体になった。泥、タールのように粘った。脚が嵌まり込み、速度が失われた。
——クソ!——自来也が脚を抜こうとした。
*ベチャッ!*
顔面から泥に倒れた。
——なあ、——破途が泥の中の自来也に叫んだ、——お前、豚に似てるな。豚の方が綺麗だけど。
——助けろよ!
——いや。豚は自分で立ち上がることを学ぶべきだ。
——立ち上がったら後悔させてやる!
——ブーブー言うな。
破途がその瞬間を利用した。自来也の背中を蹴り台にして跳び、師匠に向かった。脚を伸ばして蹴りを放った。
忍がわずかに傾いた。破途がすれすれで通り過ぎた。
——痛っ!——下の自来也がさらに深く沈んだ。
離れて座っていた栞が突然大笑いした。大声で、豪快に。初めてのことだった。
——栞が笑ってる!——芳禍が一瞬気を取られた。
——集中しろ。——忍が注意した。
新たな攻撃。芳禍が距離から打った——連続する風の一撃、速く、正確。師匠が最小限の動きで避けた。肩を引いた——一撃が外れた。頭を傾けた——また外れた。
「ほとんど動いてないのに、当たらない!」
破途が背後に回った。接近戦の攻撃——拳、脚、肘。習ったすべてを使った。
忍が踊るように動いた。回避、回転、横にステップ。一度も触れられない。
——じっとしてろ!——破途が息を吐いた。
——させてみろ。
足を踏みつけた。地面すれすれの風の波——芳禍の技!破途はすぐには理解できなかった。
脚が払われた。背中から倒れ込んだ。
——どこから……
——観察してた。——師匠が自来也の反撃から退いた。——学んだ。
自来也がついに泥から脱出した。倒れている破途に飛び乗り、踏み台として使った。
——おい!——破途が抗議した。
空中で自来也が伸びた、雷が跳躍を強化した。師匠に向かって真っ直ぐ飛んだ。
忍が避け始めたが……
——芳禍!——空中からの叫び。
少女が瞬時に理解した。風の流れが自来也を掴み、速度を増し、軌道を変えた。今や彼は速く、別の角度で飛んでいた。
忍が横に動いた。自来也の手が肩から数センチのところを通過した。
——惜しい。——師匠が認めた。——とても惜しい。
自来也が着地した……また泥の中に。しかし今度は彼の下に特別に作られた。
*ベチョッ!*
——マジかよ!
芳禍がナイフを抜いた。師匠からの贈り物——龍の骨、羽のように軽く、鋼のように硬い。
——おお、本気だな。——忍が微笑んだ。
一振り。刃の周りの空気が圧縮され、見えるようになった。切断する波が師匠に向かって走った。
忍が傾いた。彼の背後に木。
*バキッ!*
幹が真っ二つに切断された。
二振り目。三振り目。風の刃が空間を切り裂いた。
師匠が笑顔で避けた。滑らかに、慌てずに。彼の後ろで木が倒れた——一本、二本、三本。
——ハハ!——忍が笑った。——これこそ進歩だ!
——じいさん、捕まえてやるから!——芳禍が笑顔で応えた。
「クソ……あいつ、森を伐採するつもりか?」——自来也が泥から這い出ていた。
「彼女を怒らせないことを思い出させてくれ」——破途が思った。
芳禍が荒く息をついた。新しい技は力を使いすぎる。
——まあ、森を切るのはこれくらいにしよう。——ナイフを鞘に収めた。
前に跳んだ。風を込めた脚の一撃——左、すぐ右。それから拳で、自来也との戦いのように。
すべて外れた。師匠が一撃の間を動いた。
——邪魔しないで!——他の者に叫んだ。——私の番よ!
しかし自来也はもう走っていた。全身に雷、最大速度。
手を伸ばした、あと少しで触れる……
忍が滑らかに横に傾いた。自来也が通り過ぎた。
破途が攻撃しようとしたが……
「何?脚が動かない!」
一歩踏み出そうとした——脚が綿のよう。腕も痺れてきた。
隣で自来也が膝から崩れ落ちた。
——何だこれ……
——だから言ったじゃない——邪魔しないでって!——芳禍が後ろに跳び、笑顔を浮かべた。
——何をした?——忍が眉を上げた。しかし立ち続けていた。
——新しい技!——彼女が誇らしげに宣言した。——もうすぐ先生も動けなくなりますよ!
——面白い。どうやって?
芳禍がその場でくるくる回り、満足げだった。
——肺の中で空気を圧縮して容量を増やすことを学んだんです!まだ少量だけど、十分です。それに——私の植物から薬だけじゃなく採れるんです!
——毒か?——忍が頷いた。——賢い。
——毒じゃない!麻痺させる花粉。致死性じゃなくて、ただ……リラックスさせるだけ。——クスクス笑った。——片方の肺で空気と一緒に圧縮して、その圧縮された空気で呼吸するの。そして必要な時に……
指を鳴らした。
——吐き出す!みんな攻撃してる間に吸い込んじゃった!
忍が笑った。大声で、心から。
——ブラボー、芳禍!本物の天才だ!植物の知識を戦闘に使うなんて……素晴らしい!
——本当?——彼女が輝いた。
——本当だ。ただ……——師匠が深く息を吸った。——私も戦闘で息を止める習慣がついてるんだ。それか空気を濾過するか。
——え?!
——でも技は素晴らしい。発展させ続けろ。
自来也と破途がまだ横たわっていた。指しか動かせなかった。
——おい……誰か……——自来也が寝返ろうとした。
芳禍が彼に駆け寄った。
——自来也!ごめんごめんごめん!大丈夫?わざとじゃないの!見せたかっただけで……
——お前……頭おかしい……——彼が掠れた声で言った。
——ごめん!——彼女が座らせるのを手伝った。——すぐ治るから!五分くらいで!たぶん!
——たぶん?!
忍が近づき、麻痺した者たちの隣にしゃがんだ。手が緑色に光った——治癒の技。
——リラックスしろ。今毒素を抜く。
一分後、二人とも動けるようになった。
——もう……絶対に……——破途が痺れた腕をこすった。
——同意。——自来也が頷いた。——怒った芳禍は師匠より怖い。
——ちょっと!怒ってなかったわよ!
全員が笑った。栞もいつもより大きく微笑んでいた。
忍が立ち上がり、ズボンを払った。誇らしげに弟子たちを見た。
——お前たち全員よくやった。芳禍——特にな。覚えておけ、マナは絵の具で、お前たちは芸術家だ。ルールに従って描くこともできるし……
手を上げた。指の間で全属性の粒子が踊った——火、水、土、風、雷。
——傑作を創ることもできる。——粒子が小さなゴーレムに変わった。——技はお前たちの想像力と努力によってのみ制限される。挑戦し続けろ。
ゴーレムが溶けた。師匠が微笑んだ。
——休め。一時間後に続きだ。
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下町。日中。
疾風(はやて)が二日連続で市場を歩き回っていた。額当ての老婆——幽霊だ。誰も見ていない、誰も知らない。
「もう街を出たのか?それとも隠れるのが上手すぎて……」
立ち止まった。そこ、野菜の屋台のそばに。
老婆。額に布。玉ねぎの籠を漁っている。
「まさか。本当に……」
素早い足取りで近づいた。肩を掴んだ。
——待て。話がある。
老婆が引き、逃げようとした。
——離して!助けて!強盗よ!
——静かに。——疾風の声が鋼のようになった。——話すまで離さない。王子。二晩前。何があった?
老婆が青ざめた。もがくのをやめた。
——私は……王子なんて知らない……
——知っている。——掴みを強めた。——そして今すべて話す。
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夜。街外れの森。
野外で一泊することにした。焚き火がパチパチと音を立て、火花が暗い空に舞い上がった。蛍蝶が火の周りを舞っていた——光る腹部、蛾の羽。一匹が栞の指に止まり、光る花粉を残した。
——綺麗、——彼女が静かに囁いた。
夕食後、全員が火の周りに落ち着いた。
自来也がマントに包まって鼾をかいていた。芳禍が彼の隣でまどろみ、本能的に温かさに寄り添っていた。
破途、栞、忍だけが起きていた。
栞が膝を抱えて座り、火を見つめていた。首元で何かが炎の光で輝いた。
——首に何を付けてるの?——破途が気づいた。
少女が手でそれを覆い、顔を背けた。
——笛だ。——忍が彼女の代わりに答えた。——特別な。
——思い出の品?
——そう言えるな。——師匠が枝を火に投げ入れた。——物語を聞きたいか?
栞が彼を見た。目に無言の問いかけ。
——大丈夫だ。——忍が彼女を安心させた。——破途は今や家族だ。
彼女が頷き、また火を見つめた。
——四年前、——師匠が始めた、——彼女たちの村が盗賊に襲われた。虐殺は酷かった。
破途が黙っていた。
——栞は村はずれで薬草を集めていた。悲鳴を聞いて戻ろうとした。しかし両親が山に逃げるよう命じた。彼女は従った。
栞が膝をきつく握りしめた。
——すべてが静まった時、彼女は戻った。村は……——忍が間を置いた。——全員死んでいた。彼女は遺体の中から家族を探した。井戸のそばで母を見つけた。
「神様……なんて悪夢」——破途が思った。
——彼女は泣いた。静かに、音もなく——すでに盗賊が戻ってくるのを恐れていた。そして……聞いた。
栞が思い出して震えた。母の最後の思考を聞いた:「逃げて、娘よ、振り返らないで!」——そして沈黙。思考が途切れる時の恐ろしい沈黙。
——聞いた?——破途が理解できなかった。
——思考を。——師匠が説明した。——彼女の才能がショックで発現したんだ。誰かが助けを求めていた。言葉なしで、思考だけで。井戸から。
——芳禍?
——芳禍。——忍が確認した。——彼女は姉のことを考え、生きていることを祈っていた。そして栞が聞いた。
芳禍が井戸の暗闇で心の中で数えていた。
「いち、に、さん……」
千まで数えた。それからまた。下から水の冷たさ、上から火の熱さ。
「一万まで数えたら——大丈夫になる……」
子供の論理が狂気から救った。最悪だったのは悲鳴ではなく、その後の響く沈黙だった。
栞が笛を取り出した。小さな、陶器製、鳥の形。
——その後彼女たちはこれを作った。——師匠が続けた。——お互いを見つけるために。音が鳥のようだから——誰も疑わない。
——賢い。——破途が頷いた。
沈黙。それから破途がペンダントを取り出した。
——僕にもある。——見せた。——母の名前が刻まれてる。
——美しい。——忍が見た。——彼女に何があった?
——病気だった。長く。——声が小さくなった。——食べ物にもかろうじて足りて、医者なんてとんでもなかった。彼女は……どれだけ辛いか見せないようにしてた。最後まで。
——気の毒に。
——彼女たちは少なくとも早く終わった。——破途がペンダントをしまった。——でも僕は何ヶ月も、彼女が消えていくのを見ていた。そして何もできなかった。
栞が突然彼の肩に手を置いた。軽く、一瞬だけ。言葉のない慰め。
——でも僕はまだ覚えてる、彼女の甘い桜の香りを……そして一言だけで温めてくれた声を。
間。
——自来也は?——破途が尋ねた。——彼の家族も?
——ああ。——忍が頷いた。——森の近くに住んでいた。裕福ではないが、仲が良かった。二人の妹、両親。彼は薪を取りに行って……
——そして空っぽの家に戻った?
——死んだ家に。——師匠が訂正した。——強盗が金を探していた。家を間違えた——家族はこれ以上貧しくなれないほどだった。
——酷い。
——一日後、森で彼を見つけた。木のそばに座って、虚空を見つめていた。私を見ると——拳を振り上げて襲いかかった。私を彼らの一人だと思った。
——それで引き取ったんですか?
——引き取った。——忍が微笑んだ。——雷の属性を持つ怒りに満ちた少年?彼を一人にするのは罪だ。彼に対しても、他の者に対しても。
——わかります。
——今や彼らは私の家族だ。——師匠が眠る者たちを見た。——そして私は彼らを守るために何でもする。
——政府のために働くことも?
師匠が鋭く彼を見た。
——察しがいい。
——金、家、保護……——破途が肩をすくめた。——二足す二だ。
——ああ。働いている。——忍が認めた。——王の恐るべき武器——そう呼ばれている。恐ろしく聞こえるだろう?
——実際は?
——実際は……——ため息をついた。——威嚇。力の誇示。全員に見せる——手出しするな、痛い目に遭う。
——戦争のため?
——戦争に反対して。——師匠が訂正した。——全員が恐れている時、誰も攻撃しない。脆い平和だが、平和だ。
——彼らは知ってるんですか?——眠る者たちに頷いた。
——知っている。賛成しないが、受け入れている。彼らには家がある、食べ物がある、安全がある。それは原則より大切だ。
破途が考え込んだ。論理は理解できる。しかし内側で何かが抵抗していた。
「威嚇して守る……殺して救う……境界線はどこ?」
——同意する義務はない。——忍が思考を読んだかのように言った。——しかし考えろ——どちらがいい?一人の死んだ反逆者か、戦争で死ぬ千人か?
——僕は……わからない。
——英雄と悪党の違いがわかるか?——師匠が火を見つめた。——悪党は見える者を救える。英雄は見えない者のために彼らを犠牲にできる。そして賢者は……賢者は時にそれが同じことだと理解している。
——それは正当化?
——これは重荷だ。——師匠が立ち上がった。——それぞれが自分なりに背負う。
——先生、——破途がためらった、——魔法で……誰かを戻せますか?
忍が長い間黙って火を見つめた。
——ある魔法使いがいた。才能があった。娘を失った。三年間禁じられた技を研究し、すべてのマナを集めた……そして戻した。
——本当?!
——体を戻した。記憶。声。しかしそれは彼女ではなかった。何か……別のもの。似ているが、見知らぬ。彼は自分が創ったものを殺した。そして……その日自分も死んだ。
——なぜ話すんですか?
——お前の目を見るからだ。彼と同じ目だ。
栞の頭を撫でた。
——寝ろ。明日は大変な日だ。
彼女が頷き、姉の近くに移動した。隣で丸くなった。
忍が剣を取った。
——用事に行ってくる。お前が留守番だ。彼らを守れ。
——どこへ?
——用事だ。——師匠が短く答えた。——朝までに戻る。
森の暗闇に溶けた。破途が焚き火のそばに残された。
眠る仲間たちを見つめた。穏やかな顔。静かな呼吸。
「みんな家族を失った……みんな痛みを知っている……そして今、僕たちは新しい家族」
「彼らのために師匠は何でもする……わかる。でもそれは正しいのか?」
薪を火に投げ入れた。楽な姿勢になった。
長い夜が待っている。
*章の終わり*
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