第8話
2日目の朝。夜明けが空を淡いピンク色に染めた。
疾風(はやて)は王の部屋の扉の前に立っていた。制服はしわだらけ——一晩中眠らず、王子を探していた。
「どう伝えればいい?息子を失ったと、どう説明すればいい?」
ノックした。静寂。もっと強くノックした。
——入れ!——終月(しゅうげつ)の声がかすれていた。
入った。王は窓際に座り、昨日と同じ上着を着ていた。明らかに横になっていない。
——陛下……
——息子はどこだ?!——終月が飛び上がった。
——私は……——疾風が頭を下げた。——一晩中探しました。陛下が「30分待て」と仰った時から……しかし暗闇で……痕跡がありませんでした。
——一晩中だと?!——王は杯を掴み、壁に投げつけた。ワインが赤い滴となって飛び散った。——息子が行方不明で、お前は何も見つけられなかったのか?!
——申し訳ございません、陛下。私は……
——黙れ!——終月が近づいた。目が血走っていた。——二十年お前は私に仕えてきた!二十年私はお前を信頼してきた!そしてお前は……
振り上げた。止まった。手が震えていた。
——見つけろ。——声が囁きに落ちた。——息子を見つけろ。そして静かにしろ。今は誰も信用できない。特にここでは。
——見つけます、陛下。
——行け。探し始めろ。今すぐだ!
疾風が頭を下げ、出て行った。
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衛兵詰所。早朝。
疾風は必要な人物を見つけた——若い衛兵で、常に金に困っている。
——情報が必要だ。——指の間でコインが光った。——王子について。昨夜誰が彼を見た?
衛兵が振り返り、唾を飲んだ。
——私は……聞きました……夜警の二人が何か見たと。でも黙っています。
——誰だ?
——五郎(ごろう)と鉄(てつ)です。もうすぐ朝の巡回に出ます。下の市場。
もう一枚のコイン。
——ありがとう。お前は私を見なかった。
——誰を?——衛兵がニヤリと笑い、金を隠した。
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下の市場が目覚めていた。商人が商品を並べ、最初の客が屋台の間を歩いていた。
疾風は噴水のそばで彼らを見つけた——二人の衛兵が巡回の準備をしていた。
——おい、お前ら。——笑顔で近づいた。——ちょっと話せるか?
——何の用だ?——五郎、太って汗をかいた男が彼を見た。
——情報を探してる。昨夜について。——疾風が財布を取り出した。——よく払う。
——何も知らない。——鉄、痩せてネズミ顔の男が顔を背けた。
——確かか?——財布が音を立てた。——ここには一ヶ月分の給料の金がある。
顔を見合わせた。五郎が路地の方に頭を向けた。
——ここじゃない。
家の間の袋小路に入った。夜明けはまだここに届いていない——暗く、湿っている。
——で、金は?——鉄が唇を舐めた。
——まず情報だ。
——もし俺たちが何も知らないって言ったら?——五郎が近づいた。——金をただで奪ったら?
——お勧めしない。——疾風は冷静だった。
——そうか?——鉄が棍棒を取り出した。——お前、脚が二本あるか、友よ?片方が折れるといけないからな。
——首が折れるかもな。——五郎がくすくす笑った。——路地は危険だ。色々起こる。
——そうだな。——鉄がニヤリと笑った。——滑って転んだ。誰も見てない、誰も助けない。
疾風がため息をついた。
——最後のチャンスだ。王子についての情報。
——くたばれ……
動きは稲妻のようだった。疾風の周りの空気が渦巻き、密になった。手の一振り——二人の衛兵が壁に吹き飛んだ。
*ドスン!*
レンガが割れた。五郎が滑り落ち、口で空気を掴んだ。鉄が立ち上がろうとした——疾風が第二波で押さえつけた。
五郎に近づいた。隣にしゃがんだ。太った男の周りの空気が消え始めた——見えない泡が酸素を吸い出すように。
——お前の友達はもうすぐ意識を失う。——疾風の声が静かで冷静だった。——それから死ぬ。一分ある。
——お、お願い……
——王子。何を見た?
——婆、婆さんだ!——鉄が吐き出した。——婆さんがいた!どこかに連れて行った!
——どこへ?
——知らない!誓う!暗闇に消えた!
——どんな見た目だった?
——年寄りだ!ぼろを着てた!額に包帯を巻いてた!
疾風が空気を解放した。五郎が咳き込み、口で空気を掴んだ。
——協力に感謝する。
立ち上がり、膝を払った。
——おや、見ろ。——ニヤリと笑って言った。——汚れだ。
一振り——二人が反対側の壁に吹き飛んだ。今度はより強く。
*バキッ!*
意識を失った。疾風が路地を出た。
「額に包帯を巻いた婆さん……下町で探す必要がある。でもまず——陛下に進展を報告しよう」
朝の光がステンドグラスを通して差し込み、大理石の床を金色と深紅の色合いに染めていた。
欲樹(ほしき)は雉の肉を一口かじり、ゆっくり噛んだ。肉が乾いていた——料理人がまた焼きすぎた。罰する必要がある。給料からの減額で正しく調理することを学ぶべきだ。
——陛下。——忠弘(ただひろ)が影のように音もなく入ってきた。
——話せ。——欲樹が絹のナプキンで唇を拭いた。
顧問が近づき、身をかがめた。
——夜に下の地区で事件がありました。衛兵が一斉検挙中に誰かを捕まえました。
——それで?——王が新しい一切れを切った。——盗人は毎晩捕まえている。
——この者は自分を直途(なおと)王子と名乗っています。
ナイフが空中で止まった。一瞬。それから肉を切り続けた。
——王子?——欲樹が一切れを口に入れた。思慮深く噛んだ。——興味深い。盗人が大胆になっている。
——衛兵が指示を待っています。
——信じるな、当然だ。——王がワインを飲んだ。酸っぱい。給仕も罰する必要がある。——想像力のある普通の盗人だ。しかし……
間。欲樹が指の指輪を回した——考える癖だ。
——何を知っているか確かめろ。慎重に。街に噂が広がるのは望まない。
——承知しました、陛下。
——そして忠弘……——王が窓を見た。そこ、下で街がうごめいていた。彼の街。——終月王子はすぐに息子を探すだろう。準備しておけ。
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一時間も経たないうちに。
——息子はどこだ?!——終月が玉座の間に駆け込んだ。顔が青ざめ、目が狂っていた。
欲樹が玉座から立ち上がった。ゆっくりと、威厳を持って。階段を降りた。
——友よ、何があった?
——直途だ!夜に戻らなかった!誰も見ていない!
——戻らなかった?——欲樹が心配を装った。終月の肩に手を置いた。——神よ……この時代に……
——お前の衛兵だ!探させろ!
——もう探している。——息をするように嘘をついた。——すべての家、すべての酒場を調べるよう命じた。
終月を窓に導いた。下に街が広がっていた——テラス、滝、屋根。
——この辺境の野蛮人たち……——欲樹が首を振った。——日に日に大胆になる。でも心配するな。息子を見つける。
——もし彼に何かあったら……
——何もない。——固く。——直途は強い若者だ。もしかしたら、ただ……遊んでいるのでは?若さ、新しい街。
終月が首を振った。
——彼の性格ではない。
「お前もそうではなかった。妻が死ぬまでは」
——見つける。——欲樹が王の肩を握った。——約束する。
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牢獄がカビと恐怖の匂いを放っていた。
衛兵隊長が廊下で待っていた。ブルドッグのような顔、首に傷跡。良い犬だ。従順だ。
——陛下。——頭を下げた。
——どこだ?
——左の三番目の独房です。命じられた通り——公式には信じていません。
——よろしい。——欲樹が印章の指輪を外し、隊長に渡した。——お前は私をここで見なかった。
——もちろんです、陛下。
——彼の様子は?
——衛兵が……捕獲時にやりすぎました。——隊長が首をこすった。——折れた指、顔が腫れています。でも生きます。
——食事を与えろ。水も。——欲樹が廊下の暗い隅に向かった。——彼が自分が誰か知らないと思わせろ。何を見たか、誰と話したか確かめろ。私は聞いている。
窪みに隠れた。ここから独房が見えるが、自分は見えない。
隊長が二人の衛兵に頷いた。彼らが食事の盆と水の水差しを取った。
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直途が独房の隅の藁の上に横たわっていた。
左目が腫れ上がった——まぶたが紫色の隙間になるほど膨れていた。右目だけで見なければならなかった。左手の小指が間違った角度で突き出し、心臓の鼓動ごとに脈打っていた。動かそうとした——痛みが肘まで走った。
「叫ぶな。弱さを見せるな」
唇が干ばつの土地のようにひび割れていた。舌が上顎に張り付いた。飲み込むと——喉がやすりで削られるようだった。
錠の音。
衛兵が入った。一人が盆を置き、もう一人が水差しを置いた。
——食え、盗人。——最初の者が盆を蹴って近づけた。——王は貴様のような者にも慈悲深い。
直途が座ろうとした。肋骨が悲鳴を上げた——右側で何かが動くとき軋んだ。折れた?ひびが入った?手を脇に押し当て、水差しまで這った。
最初の一口——天国のようだった。二口目——貪欲に。水が顎を伝い、汚れたシャツに滴った。
——ゆっくりしろ。——衛兵がニヤリと笑った。——じゃないと吐くぞ。
——私は……——声がかすれ、他人のようだった。——私は直途王子だ。
——もちろん。——二人目の衛兵が目を丸くした。——そして俺は猿の王だ。どこでそのズボンを盗んだ、ネズミ?
——盗んでない……聞いてくれ……
——いや、お前が聞け。——最初の者がしゃがみ込んだ。——真実を話せ——生き延びるかもしれない。嘘をつけ——無名の墓に埋める。
直途がパンを取った。手が震えていた。かじった——口の中で味が爆発した。固いパンでさえ宴のようだった。
——下の地区で何をしていた?——衛兵が注意深く見た。
——私は……——直途が噛みながら考えた。「真実を言えば——王が知る。嘘をつけば——殺される」——迷った。
——迷った?夜に?スラムで?
——婆さんが……——直途がもう一口水を飲んだ。——婆さんに会った。道を教えてくれると言った。
——どんな婆さんだ?
——知らない。ただの婆さんだ。——嘘が言葉ごとに楽になった。——私を連れて……そこで……
——そこで何だ?
——暗かった。迷った。それからあなたたちの人が……
衛兵が鼻を鳴らした。
——そして俺たちに信じろと?
——本当だ!
——いいだろう、「王子」。——衛兵が立ち上がった。——よく考えろ。詳細を思い出せ。明日また話す。
去った。錠が軋んだ。
直途が一人残された。暗闇の中。痛みと恐怖と共に。
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欲樹が自分の部屋に戻った。ゆっくりと、考え深く。
「嘘をついている。しかしどれほど?スラムで何を見た?」
上に上がった。書斎でワインを注いだ。良いもの、個人の蔵から。窓際に座った。
街が下に広がっていた。彼の街。いや、街々。複数形。
菖蒲(あやめ)を嫁がせた時のことを思い出した。東の公爵——年老いた愚か者で、少年のように恋に落ちた。結婚式は豪華だった。そして一年後——北の野蛮人との戦争。
——義務が呼んでいる、義理の息子よ。——その時欲樹は言った。——娘に相応しいことを示せ。
公爵は行った。遺体だけが戻った。
東の領地……香辛料が通る港。関税が月に何千枚もの金貨をもたらした。造船所——さらに何千枚も。そしてサフランの畑は?金より高価だった。
欲樹がワインを飲んだ。東の宮殿で作られたサフランライスの味を思い出した。指がグラスを叩いた——利益を数えていた。
「港から二万、造船所から一万五千、サフランから三万……」
美咲(みさき)の西の領地は金は少なかったが、より多くの権力をもたらした。鉄鉱山。武器工房。軍の支配。
そして——西の宮殿の後ろのラベンダー畑。欲樹がリラックスすることを許す唯一の場所。地平線まで紫の海、頭がくらくらする香り……
「この王子を片付けたら、そこに行こう。一週間。いや、二週間」
立ち上がり、壁の地図に近づいた。赤い旗で娘たちの領地が示されている。青で——終月の王国。
「最大。最も豊か。北の金鉱山。中央を通る絹の道」
指が地図を滑った。終月の首都で止まった。
「残念だ、少年がすべてを台無しにした。計画は完璧だったのに」
窓に戻った。下、どこかの牢獄で王子が腐っていた。殴られ、壊れて。
欲樹はラベンダーのことを考えた。
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夕方。終月が小玉座の間にいた。隅から隅へ歩いていた。
——ニュースは?——入ってきた欲樹に飛びついた。
——一つの仮説を確認している。——欲樹が座った。疲れてこめかみをこすった。——誰かが下町で若い男を見た。
——彼か?
——わからない。しかし確認している。——自分にワインを注いだ。終月に勧めた——断った。——そこは複雑だ。地元民は衛兵を好まない。
——構わん!すべての家をひっくり返せ!
——そして暴動を起こすか?——欲樹が首を振った。——いや、友よ。慎重さが必要だ。
黙った。
——もし彼に何かあったら……——終月が拳を握った。
——何もない。——欲樹が立ち上がり、肩に手を置いた。——見つける。時間をくれ。
「時間。たった数日。何を見たか知る。そして決める」
終月を扉まで見送った。地図に戻った。
青い旗。赤い旗。
「すぐに青が赤になる。しかしまず王子を片付けなければ」
「何を見た、少年?そして何より——誰に話した?」
——明日衛兵が再び尋問する。飴の方法は効かなかった。鞭を試すか?いや。危険すぎる。殴打の痕跡は説明しにくい。
「もう一日だけ留めておこう。最大二日。それから……」
赤い旗を取った。終月の首都に突き刺した。
——すぐに。——地図に言った。——もうすぐだ。
牢獄で直途王子が腐った藁の上で眠ろうとしていた。折れた指が脈打っていた。肋骨が疼いた。
そして王はラベンダーと金について考えていた。
*章の終わり*
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