第6話
1日目。眠れなかった。
破途(はんと)は狭いベッドに横たわり、天井のひび割れを数えていた。隣で自来也(じらいや)が自然界では死にかけのセイウチくらいでしか聞けない音を立てていた。
*グォォォ—プシュ。*
「どうして自分で目が覚めないんだ?耳の中が毛で埋まってるのか?」
反対側に寝返りを打った。枕が何か見慣れないもの——清潔なリネンの匂い。家では枕が藁と埃の匂いだった。そもそも枕があればの話だが。
*グォォォ—プシュ。*
「もう無理。外に空気を吸いに出るか、それともこの清潔な枕で彼を窒息させるか」
静かに立ち上がった。床板が軋んだ。自来也がより大きくいびきをかき、寝返りを打った。いびきが止まった。
静寂。
そして:
*グォォォォォ!*
「くそったれ!これって人間の音か?!」
部屋から抜け出した。廊下は暗く、窓から月光だけ。床板が軋んだ。固まった。耳を澄ました。
——いや、ママ、お粥は全部食べたよ……——自来也が寝言を言った。
「寝てても嘘をつく」——破途が苦笑した。
下に降り、音を立てないように気をつけた。台所は空っぽ。テーブルに——覆われた皿。
布の端を持ち上げた。パンとチーズ。
「師匠が残した。それとも栞(しおり)。芳禍(ほうか)ではなさそう——彼女なら「食欲のため」に何か混ぜただろう」
パンのかけらを取り、中庭に出た。夜の空気は涼しく、清潔だった。どこか遠くで滝が轟音を立てていた。
散歩することにした。ただブロックの周りだけ、それ以上は。
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中層は夜には違って見えた。昼間——喧騒、騒音、群衆。夜——静寂、窓の稀な明かり、屋根の猫たち。
破途が目的もなくさまよい、パンを噛んでいた。過ぎた日のことを考えた。新しい「家族」について。夕食で栞が彼にパンを差し出したことについて。小さな仕草だが……
声が思考を遮った。
——……あなたの義父になる方の真実をお見せします、殿下。
破途が固まった。角の後ろに隠れた。
市場の老婆。額の包帯が横にずれていたが、暗闇では下に何があるか見えない。そして……森のあの若者?間違いない——同じ黒い髪、同じ姿勢。ただ服装が質素。
——本当に必要なのですか?——若者が神経質に、袖をいじっていた。
——見なければなりません。でなければどうやって公正に統治できますか?
「殿下?統治?これって、何かの王子か?俺のスープをすすった若者?」
さらに進んだ。破途が後を追い、影に隠れようとした。
「好奇心は猫を殺す。でも俺は猫じゃない。ただの……とても好奇心旺盛な人間」
突起につまずいた。ガシャン。
——誰だ?——若者が振り返った。
破途が影から出て、後頭部を掻いた。
——えっと……こんにちは?
——お前!——王子が彼を認識した。——スープの男!
——そしてお前はスープを評価した男。——破途がにやりと笑った。——ところで、レシピのお礼はまだもらってないぞ。
——レシピ?水と玉ねぎの?
——おい!特別な材料も入ってたんだぞ!
——何が?
——絶望。特別な風味を加える。
王子が鼻を鳴らし、それから笑った。
——俺は直途(なおと)だ、ちなみに。直途王子、正確には。
——破途。ただの破途。肩書きなし。まあ「空腹な破途」ならあるけど、それは非公式。
老婆が咳払いをした。
——坊やたち、時間がない。行くか、それとも解散か。
——彼も一緒に来られる?——直途が尋ねた。
——目撃者が多いほど良い。——老婆が破途を評価するように見た。——でもまず——着替えろ。
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廃墟の古着屋が中層と下層の境界に身を寄せていた。看板が一つの蝶番にぶら下がり、窓は板で覆われていた。
老婆が扉を押した——鍵はかかっていない。中は埃とネズミの匂い。
——突っ立ってるな。——彼女が奥の壁の前に膝をついた。——手伝え。
床板を持ち上げた。隠し場所に——布の包み。
——これはそこから出る者のため。——老婆が三つのマントを取り出した。——余計な注意を引かないように。王子が高価な服であの地区にいるのは——暗闇の松明のようなもの。
マントは……特殊だった。
——臭い!——破途が後ずさった。
——俺のスープみたいに?——直途が茶化した。
——もっと悪い!俺のスープは少なくとも温かかった!
——着て文句を言うな。——老婆がすでに自分のを羽織っていた。——悪臭は偽装の一部だ。
直途が上着を脱ぎ、それからシャツを。シンプルなシャツ一枚になった。
——高価な服は隠せ。——老婆が隠し場所を指した。——後で取りに来い。
着替えた。破途が顔をしかめた——マントは本当に何か酸っぱくて黴臭い匂いがした。
——さあ聞け。——老婆が真剣になった。——我々が行く場所は……ただの貧しい地区じゃない。壊すか殺したい者たちの囲いだ。ルールは簡単:遠くに行くな、衛兵の目を見るな、……
——なぜこれを見せるんですか?——直途が遮った。——何のために?
老婆が黙った。
——そこに孫がいる。いた。——声が震えた。——もしかしたらあなたの言葉が何か変えるかもしれない。もしかしたらしないかもしれない。でも試す価値はある。
出口に向かった。
「何に巻き込まれてるんだ?母さんはいつも言ってた——他人の事に首を突っ込むなって。でも彼女は人を助けろとも言ってた……」
——ところで、——破途が直途に追いついた、——お前の婚約者は?見失わないか?
——どうして知って……
——街中が話してる。王子、王女、世紀の結婚式。
——婚約。まだ婚約だけ。——直途が訂正した。——そして彼女は……普通だ。馬鹿じゃない。
——最高の賛辞だな。
——玉ねぎ水をスープと呼ぶ男から?ああ、最高だ。
二人ともにやりと笑った。
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壁は古代のものだった。石が崩れ、その間に——裂け目。
——ここだ。——老婆が茂みを動かした。
その後ろに——狭い通路。横向きでやっと通れる。
——これって、公式な入口?——破途が疑った。
——公式なのはあそこ。——彼女が遠くを指した。——格子と衛兵付き。昼間だけ仕事に出す。最も汚い仕事——汚水溜めや煙突の掃除。そして日没までに戻る。夜は——外出禁止令。
——外出禁止令?
——日没後は外にいてはいけない。捕まったら——良くて殴られる。悪くすれば……——彼女が額を触った、包帯の下に何かを隠している。——奴隷商人に売られる。
登った。石がマントを引っ掻き、足元で崩れた。直途が引っかかり、引っ張った。布が裂ける音。
——気をつけろ!
——努力してる!
抜け出した。そして固まった。
悪臭が物理的な打撃のように襲った。ただの汚れや貧困ではない。これは腐敗、病気、絶望の匂いだった。化膿した傷のように、ただブロックサイズの。
——ようこそ。——老婆が静かに言った。
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最初の家は空っぽだった。いや、空っぽではない——死者で満ちている。
家族が隅に寄り添って横たわっていた。両親が子供たちを抱きしめていた。乾いた手、陥没した頬。飢えで死んだ。
直途が手を口に押し当てた。肩が震えた。
——彼らを飢えさせている。——老婆が無表情に話した。——一週間食べ物を与えない。それから提案する——畑の仕事に同意するか死ぬか。多くが同意する。残りは……
破途が一歩踏み出し、何か柔らかいものを踏んだ。下を見た——腐った果物?いや。小さな指。子供の。
「見るな。考えるな。ただ歩け」
——最初は疫病だと言った。——老婆が彼らをさらに先導した。——公爵が死んで、あなたの婚約者の姉が土地を継承した時。怪しい者は全員ここへ。それから——貧しい者。それから単に好ましくない者。そして病気は一度もなかった。
——なかった?
——でっち上げた。便利だろ——誰も疫病のある場所を確認しに来ない。普通の仕事を禁止した——最も汚いものだけで無給。それから、外出禁止令、額の焼印。「働け、食べ物をもらえる」と言う。一日中畑で働くか汚水溜めを掃除して——一杯のスープとパンのかけらをもらう。働かなければ——死ね。
壁に——暗いしぶき。乾いた血。まるで誰かが引きずられ、石にしがみついたかのよう。
——それからここに追い込んだ。——彼女が水たまりを避けた。水たまりは赤みがかっていた。——一時的な不便だと約束した。三年が経った。
次の家。ぼろの下に体。ぼろから骨が突き出し、皮膚で覆われている。隅で——女性が包みを揺らしている。しわがれた声で子守唄を歌う。直途が近づいた——包みは空っぽ。ただのぼろ。女性は悲しみで気が狂った。
壁に子供の字で刻まれていた:「ママがここで待てって言った」。
直途の膝が折れた。壁を掴み、指が白くなった。
——無理だ……——息を吐いた。——これは人間だ……
——人間だった。——老婆が訂正した。——今、王は彼らを「余剰人口」と呼ぶ。
——でも……でも菖蒲(あやめ)……彼女が街を統治してる……知らないはずがない……
——知らない?——老婆の声に怒りが現れた。——それとも知りたくない?
直途が壁から押し出された。さらに進み、よろめいた。家々を覗き込み、まるで何か良いものを探しているかのよう。希望の光を。
見つからなかった。
——坊や、遠くに行くな!——老婆が叫んだ。
しかし彼はすでに角を曲がっていた。
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破途が彼を追おうとしたが、老婆が止めた。
——見させろ。感じさせろ。
——衛兵が来たら?
——夜は少ない。疫病を恐れている。
「疫病?何の……」
叫び声が思考を遮った。金属の音。ブーツの足音。
——強制捜査だ!——老婆が青ざめた。——でもなぜ夜に?
——直途はどこだ?——破途が心配した。
——わからない!彼はあっちに行った!——暗闇を指した。
探しに走った。通り、もう一つ。空っぽ。ただ増大する騒音——より多くの声、より多くの松明。
——王子!破途が叫んだ。——直途!
——静かに!——老婆が歯をむき出した。——衛兵を引きつけるぞ!
角を曲がった——前方に大きな一団。松明、剣、彼らの方に向かっている。
——戻れ!老婆が破途を引っ張った。——早く!
——でも彼はあそこのどこかに!
——衛兵が多すぎる!王子が捕まったら——彼には手を出さない!王子だから!でも俺たちは……
足音が近づいていた。
——走れ!
心臓がこめかみに響くほどに打っていた。腹に——冷たい塊。脚が言うことを聞かなかった。
「俺は彼を見捨てた。父が俺たちを見捨てたように」
——動け!——老婆がより強く引っ張った。
走った。暗い通りを通って、死んだ家々を通り過ぎて。壁の救いの裂け目へ。
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抜け出した。荒く息をしながら、壁に寄りかかった。
——彼は……確実に放してくれるよな?——破途が尋ねた。
——もちろん!——老婆が頷いたが、視線が泳いでいた。——王子だもの。朝になれば酔いが覚めて、確認して、謝罪して放す。
——もしそうじゃなかったら?
——放す。——より固く。——放すべきだ。姫様たちは父親が何をしているか知らない。王子のことを知れば……
黙った。
——手伝ってくれてありがとう、坊や。——老婆が額の包帯を直した。——私は戻らなければ。
——あそこに?!
——まだ家族がいる。連れ出そうと試みる。
——でも強制捜査が……
——すぐ終わる。彼らは長く留まらない。恐れている。
去り、闇に溶けた。
破途が一人残された。胸に——重さ。頭に——血まみれの直途の姿。
「王子だって……願う、彼女が正しいことを。本当に放されることを」
家に向かってトボトボ歩いた。脚が綿のよう、口に——胆汁の味。
家は静かだった。全員が眠っていた。上に上がり、静かに扉を開けた。
自来也がいびきをかき、寝返りを打った。
——どこ行ってた?——眠そうにつぶやいた。
——空気を吸ってた。
——んー。——そして再びいびきをかいた。
横になった。目を閉じた。
しかし眠れなかった。目の前に——死んだ家々、壁の血、殴られた王子。
「何に巻き込まれた?そして何より——なぜ?」
そしてどこかの牢獄に直途王子が横たわっていた。殴られ、血まみれで。
そして誰も彼に何が起こるか知らなかった。
*章の終わり*
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