誰もが悪意なく使うおめでとうが当人にとっては耐え難い刃になる場合もある

心が静かに削られるように感じました。

叫びや大げさな悲劇ではなく
社会では当たり前に流通している言葉であり

誰も悪意なく使う「おめでとう」が、
当人にとっては耐え難い刃になる場合もあることを考えさせられました。

特に、祝福の場面 → 耳鳴りと歪む視界 → 親の記憶という流れが余りにも自然な描写すぎて、

「この人は今までずっとこうやって生きてきたんだ」と思ってしまいました。

これは小説だと言うのに。
まるで目の前に主人公がいるような気持ちになりました。

ただ、同時に、ちょっと祝いたい気持ちになったのは、最後の「それでも生にしがみついている自分」への自嘲混じりの視線。そこにはかすかな自己認識の強さも感じることができたから。

読む側を選ぶ作品だと思います。
だからこそ誠実で、嘘がない短編だと思いました。