祝詛の澱

Resetter

『おめでとう』



 『おめでとう』


 それは、呪いの言葉だ。


 世間的には、"お祝い"というものなのだろう。


 だが、俺にとっては……心に楔を打ち込まれ、そして、抉られる言葉だ。


 

 「今度、結婚するんだ」


 「……そうか、おめでとう」


 とはいえ、他人に言わなくてはいけない場合はある。


 昇進だとか、結婚だとか、出産だとか。


 責任が増え、負担が増え、苦労が目に見えている。上手くいく保証などないのに。なにが『おめでとう』なんだか。


 ……俺には、わからない。


 


 「今日、誕生日なんだー」


 「……そうか、おめでとう」


 記念日やら、誕生日やら。


 そんな時も『おめでとう』だ。


 苦痛でしかない人生の始まりの日が、おめでたいとは。


 ――ずいぶんとおめでたいことだな。


 

 キンキンと、耳鳴りのように。頭に……響く。酷く、痛む。


 視界が、歪む。


 ――ああ。

 

 俺の記憶に残るその日は……呪詛。


「お前なんか! 産むんじゃなかったよ!」


 母親の怨嗟と……


「邪魔だ。あっち行ってろ」


 父親の無関心だった。

 


 そんな生にしがみつく……俺もまた、のかも知れないな。


 










 

 

 

 『お め で と う』







 

 











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