神様と11人の私(7)
7「七人目の人形遣い」
《私の演奏を、聞いてくれますか。動画で》
自分でも、なんでそう書いたかわからない。
《分かった。いつ頃出来そう?》
《みんなと演奏会する、その頃には》
《楽しみだよ》
《チェロを少し、弾けるんだ、私》
《知ってるよ》
《皆、楽しそうなんだ》
《うん》
《私なんかにも優しいんだ》
《ユウが頑張ったからだよ》
《でも、知ってるんだ》
《何を?》
《それじゃキリに聞かせられない》私は泣いていた。
練習を再開して一週間。
理由も分からず、帰り道で泣きじゃくった私の心を、誰も知らない。
幸せなフリをする涙を、誰も知らない。
《理由は知らないんだ。だけど》
《俺がユウに会えないことを》
《私は知ってる》
《だから俺がどこにいても届くように》
《どこにもいなくても届くように》
《ユウは弾いてくれる》
《うん》
《キリ》私は言う。
《いなくならないでね》
《もう少しいるよ》キリは答える。
《ずっといて》
《それが良いことか、俺にはわからない》
キリは間を空けて言う。
《ユウのこれからの人生で、俺みたいなやつをたくさん作られると、面白くない》
《作らないよ。そんなの》
《それがわかるまでは、一緒にいる。大丈夫、ユウはちゃんと頑張れたし謝れたんだろう?》
《なにもわかんない、わからなくて良い》
《いまはそれでいいよ。演奏、楽しみにしてる。おやすみ》
《おやすみ》
キリからおやすみと言うのは、初めてかもしれなかった。
神様は分かっている。私も、分かっている。
きっと、演奏会の様子は誰かの家族が録音してくれるだろう。
動画でアップする人だっているかもしれない。
私が一人で演奏するより、そっちの方が良い演奏になる。
私の言ってることはめちゃくちゃだ。
ヒナノが私を許してくれたのは、本当にあんなに早かっただろうか。
優しいあの子は今でも見当外れな罪悪感を抱えて、私との関係を周りにハラハラさせてないだろうか。
こんなに迷惑をかけた私を、なんで皆受け入れたのだろうか。
頑張ろうがなんだろうが、もっといやな顔されるだろう。
元「座敷わらし」が、急にいきり散らかしたら。
少しの仲間と、多くの敵が出来るのが普通だ。
演奏会なんて、本当にあるんだろうか。
都合の良い友人なんて、本当にいただろうか。
愛しい理解者以外は、全て本物なのだろうか。
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