神様と11人の私(6)

※本話は、演出上文体に揺れが生じます。


6「六人目の楽団員」


洗練されたオーケストラは、本当に美しい。

一人くらいいなくても、なんて考えが音を汚す。

何となくやるオーケストラは、何となく美しい。だが、心が張り詰めていない分練習でも雑味を飲み込む必要がある。


なにかが頭を叩く

がん がん

がん


最初は比較的人数が多い第一バイオリンが良いと思ったが、むしろ人が多くて私には無理だった。

人数が少なくて、一人に責任が被さらない知ってる楽器。セロ弾きのゴーシュを読んでた私は、何となくチェロを弾くことになった。

人間の声に音域が似ているとか何とか、教えてくれたのは彼だったっけ。


そこから、私は逃げ出した。

やけに暑い日だった。

なんでだっけ。良く覚えてない。


がん

おんがくにのせてたたく

が ん


わか て

る で しょ


部活に戻ると決めたあと、張り詰める空気の中、色んなところに頭を下げて、色んなところに怒られた。よく覚えていないけど、ヒナノが言うには見たことないほど泣いていたらしい。


うたいあげる

がん

泣 たのは

そ 時じゃ無 だろ

がん

目を らす な


元々音楽が得意な訳じゃない。それっぽいことを学んで、それっぽく練習して、それっぽく弾く。

一度決めたら、私はやる。大人が安心したような、誉めるような場面を見た。いつぶりだろうか。


あたまのなかで、オーケストラ。

うるさいな、主役は私だ。


本 当


音楽を聞く機会が増えた。友達と帰る機会が増えた。

気がついたら、日が暮れている。


ふぃなーれ。


いた

んだろ

う?


………


スタンプを送る。

《こん》

《キリさんは、久しぶりとか、気まずいとかないんですか?》

《謎敬語やめてくれい。久しぶりだけど気まずいは意味不明。ちょっと心配はしてた》

《そう》

《うん》

《まあなんと言うか、ユウのリアルが忙しいか、俺にも言えないほど参ってるかのどっちかだと思ってたから、なにもしようがなかった》

どっちも正解だよ。

でも、それだけじゃない。何を話せば良いか、分からなくなったんだ。


《ねぇ、キリ》

返事はない。

《彼女はいる?》

返事はない。

《いつもなんのゲームやってるの?》

返事はない。


《好きだよ》

《嬉しいよ》

返事が早い。泣きたいくらいに、早い。


《キリはさ》

《うん》

《私に会いたい?》

《あんまり。未成年うんたらで捕まりたくない》

《捕まるようなことするつもり?》

《ユウのリアルによる》

《最低》

《ユウはどう?》

《正直怖い、けど、楽器やるからキリに聞かせたい、って思って。それくらいなら》

あれ?

《スゲーじゃん。何やるの?》

《ひみつ。それでね》

演奏会に来てくれませんか、と言ったつもりだった。


《私の演奏を、聞いてくれますか。動画で》


神様は泣いていた。

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