神様と11人の私(4)
4「四人目の夢想家」
私は早退しようとしたところを先生に引き留められ、結局何も考えないようにしながらチャイムとともに帰った。
ただでさえ家族に心配をかけている。
忙しい中、面談までさせられると申し訳ない。
昔から知ってる。ヒナノはとても良い子だ。
良い子だから、好きな人のことを話した。
その人はヒナノを好きだった。
好きな人が楽しそうにヒナノの話をする。
あんなに素敵だと思った、彼の顔を見れなくなった。
ヒナノは楽しそうに話す彼の顔を知らない。
私は好きな人と過ごす彼の顔を知らない。
2人は別に付き合ってるわけでもない。
どうもヒナノからは対象としてみれないらしい。
彼女は変に傲慢な罪悪感を抱えているようだが、実のところそれは切っ掛けにすぎない。
大した目標もなく、彼に誘われて入ったオーケストラ部だ。
彼は多くの中の一人として呼んでくれただけだけれど。
部活の中にいる私が、ふわりと浮いた。
コンクールもインターハイも、あらゆる目標に燃える皆が急に別の国の人に見えた。
だから、ヒナノの心も言葉も、私には聞き取れないし届かない。
夢遊病のように、私はふわふわと浮いている。
メッセージを送る。
《キリ》
《こん。ノースタンプは珍しいね》
《恋したことある?》
《振られる前提で告ったことなら》
《振ったことは?》
《ある。正直振られる並に疲れた。なんでこっちが気を遣うんだよってなる》
《わかる》
少し時間があく。
《いい話があるのかい?》
《うん。うまく振るのってムズいね》見栄を張る。
そっちかーい、のスタンプがくる。キリは私の欲しい反応をどうしてわかるんだろう。
《知らないけど、ユウにその気がないならあと腐れなく振った方がいいと思う。モテない男はしつこいよ。可能性を見せたらエグイことになる》
《体験談?》
《聞いた話》
《嘘つき》
しばらく反応がこなくなった。言いすぎたかもしれない。
《ところでさ》話題を変える。
《キリは将来の夢とかあるの?》
しょぼーん、というスタンプがきた。
《ひどいこと聞きますね…大学生にとってそれはリアル進路なのよ》
《あー》
《プロゲーマーになれる程上手くないし、そもそれならストリーマー方面がメジャーだけど無理だし》
《なんで? よく知らないけどゲームは上手いんでしょ》
私はキリのゲームスキルを知らない。
やたら自慢してくるから多分上手いんだと思うけど。
声や顔と同じで、理想と違うところを知りたくないから見ないようにしている。
もしかしたら凄く有名な配信者の裏アカで遊ばれてるのかな、とか思ったりしたこともある。
《だってさ、配信しても》
《うん》
《ユウは見ないんだろ?》
私はおやすみも言わず、スマホとパソコンを閉じて布団に入った。
キリは驚いたかもしれない。でも、これ以上話すと、地に足がつかなくなる。
神様がこの時の私を見たらこう思うだろう。
理想に恋する私を、おろかな夢想家だと。
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