神様と11人の私(3)
3「三人目の戦闘員」
私は完全な引きこもりじゃない。
というか、それはもう落ちこぼれだ。
誤解があるといけないけれど、そういう人が悪いと言ってる訳じゃない。
ただ、自分がそうなることを許せないだけだ。
とてもだるいけど、学校へ行く。
行くときは誰よりも早く行き、教室にカバンを置く。
入った瞬間のざわつきが怖いから、早く起きれないときは休みがちになってしまう。
やることもなく本を読む。そんなだから、座敷わらし、なんて陰口を聞いたりもするけど、そういうやつは朝練なり寝坊なりでギリギリにまとまって教室にくるから大丈夫だ。
大丈夫じゃないのかもしれないけど、私が気づかなければ大丈夫だ。
「ユウちゃん、おはよう」
クラスメイトの梁瀬ヒナノが気まずそうに声をかけてくる。
「おはよう」私は衝動を飲み込みながら笑って返す。
毅然としてるとムカつかれるから、少し寂しそうなフリをする。
「あの…」
「昨日はごめんね。ちょっとカッとなってた」
どうせこういって欲しいんだろう。
「あ…こっちもごめん」ほらね。
「ただ、ちょっともう話し合いは難しいかも。梁瀬さんも、無理しないで。色々大変でしょ?」
笑いながら振り絞るように、言った。
最後の言葉が嫌みっぽく聞こえたのか、少し悲しそうな苛ついたような顔をされたが、チャイムが会話を打ち切ってくれた。
授業は嫌いじゃない。先生の話を聞いたり、飽きたら外を見たり読んだ本の続きを空想していれば時間は過ぎる。調子のいい男子がヒソヒソ声で話を混ぜっ返して笑うのが聞こえ、くだらないなりに面白かったりやっぱりくだらなかったりする。
休み時間。戦争の時間。
特に昼休みは、私にとってサバイバル。
ご飯を食べる相手がいない。
一人で食べるのは浮きすぎる。
ヒナノがたまに心配して輪にいれてくれるけれど、無理矢理入れられる輪は空気が重いだけだ。今日はその誘いもない。朝あんなことがあれば当たり前だ。
だから私は、パンを放り込んですぐに図書室へ行く。廊下の道のりはやけに長く、どこかで殴られるのでは、ものを隠されるのではと怯える。同時に、なんで私が逃げなければならないんだとムシャクシャする。
途中、大人しそうな男子の集団とすれ違った。女子の集団や、話しかけてくる陽気な男子と比べれば安全と思っていたが、その中の一人から、じっとりとした視線を感じた。
「座敷わらしじゃん」
「レアキャラ。ラッキー」
「話しかければ?」
「いやさすがに暗すぎ…」
……お前らさ。聞こえてんだよ。
無害そうな奴が無害とは限らない。
むしろ、あらゆる意味で距離感が分からない一部の奴は、そうやって不用意に人を傷つける。お前らが集まって自衛してるように、これでもこっちはこっちで戦ってるんだ。
お前らが攻撃されるとしたら、お前らの性格が悪いからです。被害者ぶるのは止めてくださいね。
神様はなにも言わず、私を見ている。
諸刃の刃を振るう、私を見ている。
今日はもう、早退しよう。
孤独な戦士と言うには弱すぎるけど、もうずいぶんと頑張った。
ランクマッチで言えば、戦闘員くらいにはなれただろう。
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