第18話
リリスの杖が放った暴走魔法は、時空を歪め、ヤマトをこの世界で最も「行ってはいけない場所」へと叩きつけました。
視界が開けると、そこは禍々しい紫の炎が揺らめき、重厚な石造りの柱がそびえ立つ、魔界の頂点――魔王城の玉座の間でした。
「……何奴だ。余の眠りを妨げる不届き者は」
玉座に深々と腰掛け、恐ろしいほどの威圧感を放っていたのは、小さな角と漆黒のドレスを纏った美少女、魔王ルシフェラでした。
彼女は「世界を滅ぼす力」を持つ最強の存在。しかし、今の彼女は頬杖をつき、眉間に深い皺を寄せて、不機嫌を絵に描いたような顔をしています。
「(し、死んだ……。今度こそ、物理的に消される……!)」
ヤマトが震え上がったその時、ルシフェラが「ううっ……」と呻き、肩を押さえました。
実は彼女、全人類を滅ぼせるほどの強大な魔力を一点に凝縮して維持しているため、その反動で全身の筋肉が「神話級の肩こり」を起こしていたのです。マッサージをしようにも、彼女の肌は魔力防御が強すぎて、並の癒やし手では指が折れるだけ。
「……肩が、重い。……鉄の塊が乗っているようだ。不愉快だ。貴様、死ぬ前に余の肩を揉め。少しでも楽にできねば、塵も残さず消滅させてやる」
「ひ、ひぃぃ! やらせていただきます!」
ヤマトは死に物狂いで、魔王の背後に回りました。その肩に触れた瞬間、指先に火花が散ります。
『――検知:全宇宙最強レベルの「魔力性肩こり」を確認』
『補足:防御結界を貫通するため、魔力を「極細の針」に変えて深層筋に打ち込む必要があります』
『スキル【神聖なる悦楽の再生】……本日は【終焉の肩叩き(ラグナロク・リラクゼーション)】を起動します』
「……余の結界を抜けて、直接筋肉に触れるだと……!? 貴様、何者――っ、ぁ、あああああああぁぁぁああっ!!?」
ヤマトの指が、ルシフェラの肩甲骨のキワにある「魔力の澱み」を捉えた瞬間、魔王城全体が震えるような絶叫が上がりました。
ヤマトの指先から放たれる黄金の光が、数百年分凝り固まった破壊神の筋肉を、とろとろの綿菓子のように溶かしていきます。
「な、なんだ……この、忌々しいほどの心地よさは……っ! 余の誇り高い魔力が、指先一つで、無防備に暴かれ……あ、あぁぁぁっ! 脳が、破壊の衝動ではなく、快感で塗り潰されるぅぅっ!!」
最強の魔王は、ヤマトの膝に顔を埋め、ドレスを乱しながら身悶えました。
肩の凝りが解けるたび、彼女の体からは黒い霧(邪気)が抜け、代わりに少女のような瑞々しさが戻っていきます。
数分後。
完全に「ふにゃふにゃ」になった魔王は、ヤマトを見上げ、その瞳をドロドロとした独占欲に染め上げました。
「決めたぞ、人間。……貴様を余の『個人所有物(ペット)』とする。……世界征服など、もうどうでもよい。貴様の指さえあれば、余は永遠に幸福だ。……逃げようとしたら、この世界の時空を凍結し、余と二人きりの空間で、数億年かけて愛でてやる……っ」
(ついに世界の終わりが、俺の指先一つにかかっちゃったよ!!)
しかし、玉座の間の巨大な扉が粉砕されました。
「ヤマト様ぁ、魔王だろうが何だろうが、順番待ちはさせませんわよ!」
地底から、海から、聖教国から、ついに追っ手たちが魔王城に集結したのです。
「……私のヤマトに触れる不敬者は、どいつもこいつも、奈落へ堕としてやろう」
魔王が立ち上がり、ヤマトの腰に腕を回しました。
「(もう、一か八かだ……!)」
ヤマトは魔王ルシフェラの、最も魔力が集中する「角の付け根」に指を突き立てました!
「ルシフェラ、ごめん! 【終焉を刻む指先(ラスト・ピリオド・タッチ)】!!」
「――っ!? ぁ、ふあ……世界が、昇天……しちゃうぅぅぅ……あへぇぇぇっ!!」
最強の魔王が、幸せの絶頂と共に膝から崩れ落ちました。
「今のうちに、魔王の転移門で……どこか、誰もいない平穏な場所へ!」
ヤマトは光の中に飛び込みました。
しかし、その光の向こう側から、ヤマトを呼ぶ懐かしい、そして一番「逃げたかった」声が響きました。
「ヤマト……どこへ行っても、私たちは繋がっていると言ったでしょう?」
光の中から現れたのは……旅の始まりの場所、あのヤンデレ軍団を率いるカミラでした。
逃げれば逃げるほど愛される呪いにかかった俺、至高の指先(ラスト・ピリオド・タッチ)で並行世界のヤンデレ美女たちを昇天させてしまう 暇ジーン @kenpichi99
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