第16話

「ひ、ひぃぃぃ! 神様も仏様も、今は勘弁してくれぇぇ!」

​数千人の聖騎士団が「聖なる種」を求めて殺到する中、ヤマトは不時着した脱出ポッドのハッチを強引に剥ぎ取ると、それを巨大なソリにして、大聖堂の長い長い大階段へと飛び乗りました。

​「全速前進、だぁぁぁーーーっ!」

​背後からは「逃がしませんわ!」「ヤマト様のぬくもりを置いていけぇ!」という絶叫と、聖なる光の矢が降り注ぎます。ヤマトは法王たちの追撃を猛スピードで振り切り、雪解けの斜面を滑落。数キロメートルに及ぶ命がけの滑走の末、バシャァァァン! と盛大な水しぶきと共に、静まり返った湖へと突っ込みました。

​「……ゲホッ、ゴホッ! さすがに……もう、追ってこられないだろ」

​冷たい水で頭を冷やし、ヤマトは命からがら湖のほとりへと這い上がりました。

そこは、聖教国の喧騒が嘘のように静まり返った、水晶のように澄んだ湖。周囲は深い霧に包まれ、神秘的な雰囲気が漂っています。

​しかし、立ち上がろうとしたヤマトの喉元に、ひんやりとした銀の切っ先が突きつけられました。

​「……何奴だ。ここは聖域、不浄の者が足を踏み入れて良い場所ではない」

​霧の中から現れたのは、長い藍色の髪をなびかせ、巫女装束のような薄い衣を纏った美女、守護者シズクでした。

彼女はこの湖に宿る神霊を鎮める一族の末裔。しかし、その凛とした佇まいとは裏腹に、彼女の呼吸は不自然に浅く、突きつけられた剣先は小さく震えています。

​「待ってくれ、俺はただ流されてきただけで……。それより君、その喉のあたり……ひどい『魔力詰まり』を起こしてるぞ」

​シズクはハッとして、自分の喉元を押さえました。

彼女の家系は代々、湖の穢れを自分の体に吸い上げて浄化する役割を担っています。しかし、長年の浄化により、彼女の喉から胸元にかけては、行き場を失った「澱んだ魔力」が凝固し、声が出なくなるどころか、全身の感覚が異常に鋭敏化する『霊障発情(れいしょうはつじょう)』の呪いに蝕まれていたのです。

​「……黙れ。貴様に……何がわかる……っ。ああ、やめて……見ないで……私の、この……熱を……っ」

​シズクは膝をつき、必死に情動を抑えようとしますが、ヤマトが放つ「癒やしの波長」を感じ取った彼女の体は、本能的に救いを求めて熱を帯び始めます。

​『――検知:霊的汚染による「粘膜の超活性化」を確認』

『補足:喉から胸元への接触により、一気に穢れを「快感」として排出可能です』

『スキル【神聖なる悦楽の再生】……本日は【鏡面湖の清らかなる雪解け(ミスティック・ドロップ・パージ)】を起動します』

​「……助けたいんだ。嫌かもしれないけど、触れるぞ!」

​ヤマトはシズクの震える肩を抱き寄せ、その細い喉元から、鎖骨のくぼみにかけて、優しく指先を滑らせました。

​「――っ!? ぁ……あ、ぁぁああああああああああっ!!?」

​シズクの口から、それまでの静寂を切り裂くような、あまりにも甘く、澄んだ絶叫が飛び出しました。

ヤマトの指が触れた瞬間、喉に詰まっていた穢れが黄金の光に溶かされ、彼女の全身の性感帯を駆け巡る「癒やしの奔流」へと変わります。

​「な、に……これ。声が……出る。それだけじゃ、ない……っ。指が、触れるたびに……頭の中が、真っ白な水面(みなも)みたいに、かき乱されてぇっ!!」

​巫女としての矜持を保とうとするシズクでしたが、数十年分の「溜まった穢れ」が一気に快感として爆発する衝撃には抗えません。彼女はヤマトの首にすがりつき、濡れた瞳で彼を見つめながら、トロンとした声を漏らしました。

​「あ……あぁ、ヤマト様……。私の喉を、こんなに熱く……潤してくださって。……もう、貴方の指がないと、私、神に祈る声さえ出せなくなってしまいますわ……」

​シズクの瞳に、静かですが底なしの「執着」が灯ります。

「決まりました。貴方はこの湖の『主』として、私と一緒に、永遠に水底の離宮で暮らしていただきます。……もし逃げようとしたら、湖の水を操り、貴方を溺れるような快楽で包み込んで、二度と陸へは帰しません……っ」

​(湖の底も監禁スポットかよ!?)

​しかしその時、湖面に巨大な波紋が広がりました。

ドリル戦車で湖底を突き進んできたバルバラ、氷の魔術で湖面を凍らせて滑走してくるセシリア、そして空から爆撃を仕掛けるアルテミス。

​「ヤマト様ぁ、お洗濯の時間は終わりですわよ!」

「その巫女女、ヤマトから引き剥がして沈めてやる!」

​「(……いっそ、このまま魚になって逃げたい!!)」

​ヤマトは最後の手段として、シズクの最も敏感な「耳裏の霊穴」に指を突き立てました。

​「ごめんシズク! 【終焉を刻む指先(ラスト・ピリオド・タッチ)】!!」

​「――っ!? ぁ、ふあ……湖が……ひっくり、返るぅぅ……あへぇぇぇっ!!」

​シズクは全身をビクンと跳ねさせると、そのまま幸福な溜息と共に、ヤマトの腕の中で深い眠りへと落ちました。

​「今のうちに……って、湖の真ん中でどうしろってんだ!」

​絶体絶命のヤマト。その時、湖の底から微かに光る紋章が現れました。

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