第15話
気絶したヤンデレ軍団と、真っ白に燃え尽きた巨神アガルタ。地底帝国を包む静寂の中、ヤマトは操縦席のコンソールに光る、唯一の赤いボタンを見つけました。
「これしかない……。どこに飛ぶかは運任せだ!」
ヤマトがそのボタンを押し込んだ瞬間、巨神の全身から残存する全魔力が噴射口へと集中しました。
「緊急脱出シーケンス……開始。……ヤマト、貴方を……離さな、い……っ」
気絶寸前のエニグマがヤマトの腕にすがりついた瞬間、巨神の胸部ハッチが爆発的に射出されました。
「う、うわぁぁあああああ!!」
弾丸と化したコクピット・ポッドは、ヒロインたちが掘り進めた縦穴を音速で逆流し、地殻を突き抜け、青空の彼方へと飛び出しました。数分間の猛烈なGの末、ポッドがパラシュートを開き、不時着したのは……。
白亜の塔が立ち並び、空気そのものが神聖な魔力で満たされた国。
世界中の信仰を集める、女系宗教国家**『ルナリス聖教国』**の総本山、大聖堂のど真ん中でした。
「な、なんだ!? 天から『救世の箱』が降ってきたぞ!」
「見て、中から……予言にあった『黄金の指を持つ救世主』が現れたわ!」
ポッドのハッチが開き、ふらふらと外へ出たヤマトを待ち受けていたのは、数千人の聖職者と、純白の鎧に身を包んだ**処女聖騎士団(ヴァージン・ナイツ)**の隊列でした。
彼女たちは、代々伝わる古い予言「天から堕ちる癒やし手が、我ら教国を蝕む『冷たき呪い』を溶かすだろう」を信じ、ヤマトの噂を耳にしてからというもの、国を挙げて待ち構えていたのです。
「あなたが……ヤマト様ですね」
群衆の中から、巨大な杖を持った教国の最高権威、法王イノセントが歩み寄りました。
彼女はベールで顔を隠していましたが、その指先は凍りついたように青白く、ガチガチと震えています。この国の女性たちは、神への過度な祈りの代償として、全身が氷のように冷え切り、感覚が麻痺していく『聖痕の凍結』という奇病に苦しんでいたのです。
「ヤマト様……どうか、我ら教国の冷え切った心を、その『熱き指』で温めてくださいませ……。もう、指先一つ動かすのも、苦しいのです……」
「(……いや、これまでのパターンからして、温めるだけじゃ済まないだろ!?)」
ヤマトの予感は的中しました。
彼が法王イノセントの手をそっと取った瞬間――。
『――検知:極低温の聖魔力による「全感覚遮断」状態』
『補足:解凍プロセスにおいて、対象の精神は爆発的な「熱烈な解放」を伴います』
『スキル【神聖なる悦楽の再生】……本日は【聖域の雪解け(ホーリー・メルト・ダウン)】を全開起動します』
「ああ、やっぱりかぁ!」
ヤマトの指先から、太陽のような黄金の魔力が、法王の凍りついた手首へと流れ込みました。
「――っ!? ぁ……あ、ぁぁああああああああああっ!!?」
法王イノセントのベールが、内側から溢れ出す熱気で吹き飛びました。
氷のように冷たかった彼女の肌が、瞬く間にバラ色に染まり、麻痺していた全神経が、ヤマトの「熱」を求めて狂ったように覚醒し始めます。
「熱い……! 何ですか、この心地よい暴力は……っ! 神への祈りでは決して得られなかった、魂を直接かき混ぜられるような……あ、あぁっ! 私、溶けて……聖女から、ただの『雌』に戻されてしまうぅぅっ!!」
法王がヤマトにすがりつき、法衣を乱しながら石畳の上でのたうち回ります。
その姿を見ていた数千人の聖騎士団も、ヤマトから漏れ出る「解凍の魔力」の余波を受け、顔を赤らめ、膝をつき、祈りの言葉が甘い溜息へと変わっていきました。
「……信じられない。私たちの凍っていた心が……こんなにも、疼くなんて……」
「ヤマト様……次は、私を……私の『聖痕』を、その指で溶かしてぇっ!」
数千人のヤンデレ予備軍が、潤んだ瞳でヤマトを一斉に見つめます。
法王はヤマトの足首に抱きつき、恍惚とした表情で宣言しました。
「決まりました……。ヤマト様、貴方を教国の『生神(いきがみ)』として奉り、この大聖堂の奥深く、生涯外へ出られない『至聖所』にて、私たちを永遠に温め続けていただきます……っ。もし拒むなら……神の名において、貴方を愛の鎖で繋ぎ止めましょう」
(教国ごとヤンデレ化!? 逃げ場が国家単位になったぞ!!)
しかし、空の彼方から、ドリルを搭載した飛行船と、激怒した龍の咆哮が近づいてきます。
地底から這い上がってきた「前作ヒロインたち」が、ついに国境を越えて攻め込んできたのです。
「ヤマト様を独り占めするなんて、神が許しても私が許しませんわぁぁ!!」
「(もはや戦争だ……!)」
ヤマトは、隙を見て法王を「ピリオド」の向こう側へ送り、この狂信的な教国から脱出する算段を立て始めました。
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