第12話
魔樹の森が放つ、甘く濃厚な魔力の奔流。それは島の結界を突き抜け、はるか遠く、魔界の玉座にまで届いていました。
ヤマトがベタベタの蜜まみれでビーチへ脱出した、その時。空を切り裂くような轟音と共に、漆黒の雷鳴が砂浜に降り注ぎました。
「……何事だ、この破廉恥な魔力の乱れは! 私の領海近くで、これほど『淫らな汚染』を広げたのは誰だ!」
砂煙の中から現れたのは、真紅の角と、夜の闇よりも黒い翼を持つ絶世の美女。魔王軍四天王の一人、魔将アルテミスでした。
彼女は、戦士としての規律を重んじる冷徹な軍人。しかし、彼女が立っている砂浜には、先ほどのドライアドの蜜とヤマトの魔力が霧となって漂っています。
「貴様か。……ほう、ただの人間ではないな。その指先から漂うのは……っ!?」
アルテミスがヤマトの胸倉を掴み上げた瞬間、彼女の凛とした表情が劇的に崩れました。
彼女は密かに、魔族特有の『魔血沸騰症』という持病を抱えていました。戦いの中で昂った魔力が冷めず、常に内側から焼かれるような熱さと、疼きに耐えながら生きてきたのです。
それが、ヤマトの指先が彼女の漆黒の鎧の隙間に触れた瞬間――。
『――検知:超高純度・高圧の魔族エネルギーを確認』
『補足:溜まりすぎた熱量を排出しないと、彼女の精神は崩壊します』
『スキル【神聖なる悦楽の再生】……本日は【魔道の深淵なる鎮め(カオス・ダーク・ヒーリング)】を強制起動します』
「なっ……この、人間……! 離せ、私の体に何を……あ、ああぁぁぁぁっ!?」
アルテミスの掌から剣が滑り落ちました。
ヤマトの手が彼女の首筋に触れると、行き場を失っていた熱い魔力が、ヤマトの指を出口として一気に噴き出し始めたのです。
それは、彼女が数百年味わったことのない、暴力的なまでの「カタルシス」。
「熱い……っ。何、これ……っ。魔力が、私の意志を無視して……中から、掻き出されていくぅっ!! あ、あぁぁ! ダメ、私は、四天王……こんな無様な声を……は、あぁぁあああああんっ!!」
砂浜に膝をつき、鎧を鳴らして身悶えるアルテミス。
彼女の魔力が浄化されるたび、漆黒だった翼は艶やかな紫へと輝きを変え、鋭かった瞳はトロンと潤んでいきます。
「……あ、は……すごい。ヤマト……と言ったか。貴様の指、私の『魔力の核』を……直接、愛撫しているみたいだわ……」
彼女はヤマトの腰に腕を回し、力強く引き寄せました。
「決めた。貴様を魔王城へ連行する。これは『捕縛』ではない。……貴様は、私の、私だけの『魔力調整官』だ。これから毎日、朝から晩まで……私の体を、その指でめちゃくちゃに整えてもらう……っ」
(……魔王軍にまでスカウトされた!? それも、実質監禁のやつだ!)
その時、後方から蔦に絡まっていたヒロインたちが、怒りの魔力を爆発させて立ち上がりました。
「待ちなさい! その男は……私が先に、中まで癒やしたんだから!」(ルナリス)
「魔王軍だか何だか知らねえが、ヤマトは俺の獲物だぁ!」(バルバラ)
「……喧しい。この男は魔界の資産だ。邪魔だてするなら、この島ごと消し飛ばしてやろう」
アルテミスがヤマトを抱えたまま、空へ飛び上がろうとします。
ヤマトは悟りました。ここで連れて行かれたら、魔界の奥深くで「治療(エロ)」攻めにされる一生が確定すると。
「ごめん、アルテミス! 悪いけど、俺はまだ誰のものにもならないって決めてるんだ! 【終焉を刻む指先(ラスト・ピリオド・タッチ)】!!」
ヤマトは、アルテミスの角の付け根――魔族にとっての魔力と快感の集積回路に、指先を突き立てました!
「――っ!? ぁ……え、あ……あ、ああああああああぁぁっ!!? 天地が……ひっくり、返るぅぅ……っ!!」
魔将アルテミスは、一瞬で魔力の回路をショートさせられ、全魔力を「絶頂」として放出した衝撃で、至福の白目を剥いてヤマトを抱いたまま砂浜へ墜落しました。
「今だ! ……って、結局ヒロイン全員に囲まれたビーチに戻ってきちゃったじゃん!」
ヤマトが顔を上げると、そこにはルナリス、バルバラ、セシリア、リュカ、ガウル、メロウ、アマラ……そして気絶したアルテミス。
かつてない「ヤンデレ・オールスターズ」が、ヤマトを中央にして円陣を組んでいました。
「……さあ、ヤマト様。誰から『治療』を再開しますか……?」
全員の目が、ギラリと光りました。
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