第9話

​「あ、あああ……死ぬ、今度こそ死ぬぅぅぅ!!」

​自由落下するヤマトの視界には、どこまでも広がる蒼い海面が迫っていた。

普通なら水面に激突して即死する高度。だが、彼の「エロいと最強になる魔力」が、生存本能に呼応して勝手に発動する。

​『――緊急防衛:高高度からの着水衝撃を緩和します』

『魔力を「柔軟なクッション」として展開……ただし、代償として周囲の海水を「媚薬成分」に変質させます』

​「どんな代償だよ!?」

​ドォォォォン! という凄まじい水柱と共に、ヤマトは海中へと沈んだ。

魔力によって守られたものの、衝撃で意識が朦朧とする。そんな彼の体を、ひんやりとした、けれど驚くほど柔らかな何かが受け止めた。

​「……あ、あぁ……なんてこと……。海が、海が急に『熱く』なって……体が、勝手に疼きだす……っ」

​ヤマトを抱き留めたのは、エメラルド色の尾びれを持つ美しい人魚、メロウだった。

彼女はこの海域を治める人魚族の王女。しかし今、彼女は自分に触れている人間の男から溢れ出す「黄金の魔力」によって、かつてない異変に襲われていた。

​人魚族は全身が粘膜のように繊細だ。特に尾びれの付け根は、人間でいうところの聖域。そこにヤマトの「着水で活性化した魔力」が海水を通じて浸透していく。

​「……ん、はぁっ! だめ、これ以上、この人を抱いていたら……私、溶けちゃう……っ!」

​『――検知:対象は「海水の媚薬化」による重度の過敏状態です』

『スキル【神聖なる悦楽の再生】……本日は【蒼き深淵の愛撫(ディープ・シー・プレジャー)】を起動します』

​「うぐっ、ゲホッ! ……またかよ、ここは海の中だぞ!?」

​ヤマトは気力を振り絞ってメロウを助けようとした。

人魚の体は、ヤマトの魔力が触れた瞬間、真珠のような光沢を放ち始める。ヤマトがバランスを取ろうと彼女の細い腰と、鱗の生え際の柔らかな肌に触れた、その瞬間だった。

​「――っ!? ぁ、ああぁぁぁぁああああっ!!」

​海中だというのに、メロウの甘い絶叫が水泡となって弾けた。

ヤマトの手が触れる場所から、電撃のような快楽が彼女の尾びれの先端まで駆け抜ける。

​「すごい……ヤマト様の、手……っ。冷たい海の中で、そこだけが、太陽みたいに熱いの……っ! 尾びれが、勝手にバタバタしちゃう……っ。あぁ、もっと……もっと強く、そこを、かき混ぜてぇっ!!」

​メロウの尾びれがヤマトの足に絡みつき、逃がさないように強く締め上げる。

海水を通じて伝わるヤマトの「治癒魔力」が、人魚族が数百年抱えてきた「乾燥による鱗のひび割れ(呪い)」を、かつてない快楽と共に一瞬で修復していく。

​数分後。

メロウの瞳は、海底の深淵よりも深く、ドロリとした愛欲に染まっていた。

​「見つけた……私の王子様……。もう、陸には帰さない。貴方の足に重りを付けて、私の宮殿で、一生私を『潤し』続けてもらうわ。……もし逃げようとしたら、その肺を水で満たして、私なしでは息もできないようにしてあげる……」

​(……人魚って、もっと清楚なイメージだったのに! 独占欲が深海レベルだ!)

​しかし、海底の静寂を破り、巨大な影が迫る。

潜水魔法を展開した聖女セシリア、酸素ボンベ代わりの魔道具を背負った海賊バルバラ、そして龍の姿で海中を突き進むリュカ。

​「ヤマト様ぁ、海の底まで追いかけますわよ!」

「私の海で勝手はさせねえぞ、この人魚女!」

​「ひ、ひぃぃぃ! 全員集合しちゃったよ!」

​ヤマトは最後の手段に出る。

「ごめんメロウ! 海は、俺にはちょっと深すぎるんだ! 【終焉を刻む指先(ラスト・ピリオド・タッチ)】!!」

​ヤマトは、メロウの尾びれにある、人魚族の最大の性感帯「エラの裏側」を優しく、かつ鋭く突いた!

​「――っ!? ぁ、ふえ……あ、あえぇぇぇええええええっ!!!」

​メロウは海中で激しく身悶えし、目を見開いたまま、至福のあまり大量の泡を吹いて気絶(強制到達)した。

​「今のうちに……浮上だ!」

​ヤマトは気絶したメロウの反動を利用して、海面へと急浮上する。

だが、海面に顔を出したヤマトの前に現れたのは、これまでのヒロインたちが全員乗った**「ヤマト奪還用・多国籍連合艦隊」**だった。

​「……逃がさない。今度こそ、四肢を固めて、私の部屋に飾ってやる」

​ダークエルフのルナリスが、漆黒の鎖を持って微笑んでいた。

​ヤマトの異世界逃亡劇は、ついに「逃げ場のない洋上の大包囲網」へと突入する――。

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