第8話
「いたぞ! ヤマト、今すぐそこを動くな!」
龍の里の断崖絶壁。ルナリスが弓を構え、バルバラが海賊刀を振り回し、セシリアが聖なる光を纏って登ってくる。その背後では、ガウルが獣のような咆哮を上げて崖を駆け上がっていた。
逃げ場はない。背後はリュカが爆睡している神殿の柱。前は最強のヤンデレ軍団。
「ひ、ひぃぃ……! 誰でもいい、助けてくれぇ!」
ヤマトが天を仰いで叫んだ、その時だった。
「――見つけたぞ。あの男だ! あの『淫らな癒やしの手』を持つ男だ!」
上空から、巨大な影が高速で急降下してきた。
それは、背中に純白の翼を持つ有翼人の戦士団だった。彼らは地上のヤンデレ軍団が剣を抜くよりも早く、ヤマトの脇の下に腕を差し込み、軽々と吊り上げた。
「な、なんだ!? 放せ! どこへ連れて行くんだ!」
「黙っていろ。我らが有翼人の姫、エルフィネ様をお救いできるのは貴殿しかいないのだ!」
「待て、泥棒猫ぉぉぉ! ヤマトは私の獲物だ!」
バルバラの怒声が遠ざかる。地上ではルナリスの放った矢が虚しく空を切った。
連行されたのは、雲を突き抜けた先にある浮遊島、天空都市『アエリア』。
そこにある豪奢な宮殿の寝室で、ヤマトが目にしたのは……。
「……う、うぅ。風が……風が触れるだけで、体が、変になっちゃうの……っ」
大きな、けれどどこか力なく垂れ下がった翼を持つ美少女――有翼人の姫、エルフィネだった。
彼女の翼は、魔力の暴走によって『超感度化』しており、空を飛ぶために必要な風の抵抗が、彼女にとっては「全身を愛撫されるような激しすぎる刺激」に変換されてしまっていたのだ。
「風が吹くたびに……私、変な声が出て……飛ぼうとすると、その、絶頂して墜落しちゃうの……っ」
頬を染め、涙目で訴えるエルフィネ。その翼の根元からは、今にも溢れ出しそうなほど濃厚な魔力の雫が滴っていた。
「(……またか。またこのパターンの呪いか!)」
ヤマトは諦めた。こうなれば、さっさと直して隙を見て逃げるしかない。
『――検知:天空の希薄な空気による「粘膜過敏」状態』
『スキル【神聖なる悦楽の再生】……いえ、本日は【天空の羽休め(スカイ・ハイ・エステ)】を起動します』
「……エルフィネ様、失礼します。翼の根元を、直接『浄化』します」
ヤマトが彼女の背中に回り込み、白く輝く翼の付け根――最も神経が集中する柔らかな箇所に指先を沈めた。
「――っ、は!? あ、あああああぁぁぁああっ!!?」
エルフィネが絶叫し、その場で崩れ落ちる。
ヤマトの指から放たれる黄金の波動が、翼の神経を一枚一枚、優しく、けれど強烈に解きほぐしていく。
「すごい……っ! 誰にも触れさせたことのない私の羽が……っ。ヤマト様の指が触れるたびに、中から、ドロドロに溶かされるみたい……っ! はぁ、あぁっ! 羽が……羽が勝手に動いちゃうぅぅっ!!」
バサバサと激しく羽ばたく翼。その風圧でヤマトの髪が乱れるが、彼は構わず、翼の裏側の最も敏感な節々を「指先」で丹念に解していく。
数十分後。
エルフィネの翼からは異常な熱が消え、健やかな輝きを取り戻していた。
だが、その代償として、彼女の瞳には「空よりも深い執着」が宿っていた。
「……あ、あは……。私、もう一度飛べる。でも……ヤマト様の指が、ここに触れていないと……もう、空が怖くて飛べないわ……」
エルフィネはヤマトの腰に抱きつき、自分の翼でヤマトを包み込んで閉じ込めた。
「逃げようとしても無駄よ。ここは高度一万メートルの浮遊島。私と一緒に、一生空の上で、私の羽を『治療』し続けてもらうわ……。もし逃げようとしたら、そのまま……落としてあげる」
(……空の上なら安全だと思った俺が馬鹿だった!)
だが、その時。宮殿の窓を突き破り、一本の「矢」と、一振りの「海賊刀」、そして「龍のブレス」が同時に飛び込んできた!
「ヤマト様、お迎えに上がりましたわ!」
「空の上まで逃げられると思ったかよ!」
地上から、各々の手段で空を飛んできたヤンデレ軍団がついに到着したのだ。
「こ、こうなったら……これだ! 【終焉を刻む指先(ラスト・ピリオド・タッチ)】!!」
ヤマトは、エルフィネの翼の最も「感じやすい節」をピンポイントで突いた!
「――っ!? ぁ、ああああああ……あへぇぇえええええっ!!!」
エルフィネは、空の果てまで突き抜けるような快楽の衝撃に、白目を剥いてその場に沈んだ。
「今のうちに……脱出だ! って、ここ高度一万メートルだったぁぁぁ!!」
ヤマトは気絶したエルフィネを抱えたまま、窓の外へと投げ出される!
果たしてヤマトに「着地」できる未来はあるのか!?
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