第7話
「……はぁ、はぁ……。ここまで登れば、さすがにあの『ヤンデレ四天王』も追ってこれないだろ……」
標高三千メートル。空気の薄い龍族の里に辿り着いたヤマトは、岩陰で膝をついた。
だが、里の様子がおかしい。家々はなぎ倒され、周囲にはバリバリと「何かを掻きむしる」ような轟音と、甘ったるい蒸気が立ち込めている。
「……あ、あつい……。かゆい……っ。だれか、わたしの『鱗』を……剥がしてぇ……っ!!」
里の中心部、広大な神殿の境内で、一人の少女がのたうち回っていた。
彼女は龍族の巫女、リュカ。
背中には一対の小さな翼、そして腰からは立派な龍の尻尾が生えている。だが、今の彼女は異常だった。全身を覆うはずの美しい真珠色の鱗が、脱皮の不全によって中途半端に浮き上がり、新しい皮膚との間に猛烈な熱と「感度ブースト」を溜め込んでいたのだ。
「うわぁ……あれが噂の龍族の巫女か? 完全に暴走してるじゃないか!」
リュカが地面に背中をこすりつけるたび、衝撃波で神殿の柱がミシミシと音を立てる。
見守る里の老人たちは、おろおろとするばかり。
「ああ、リュカ様! 脱皮の停滞による『魔力過敏性皮膚炎』だ! 我ら龍族の爪では鋭すぎて、彼女のデリケートな新皮を傷つけてしまう……。誰か、優しく、かつ力強く、彼女の全身を『愛撫』するように鱗を剥がせる者はいないのか……!」
「(……いや、そんな都合のいい人間いるわけ――あ、俺だ。俺しかいないじゃんこれ)」
ヤマトが踵を返そうとした瞬間、リュカの黄金の瞳が彼を捉えた。
「……そこの、人間……。お前の手……なんだか、すごく『気持ちよさそう』な魔力が見える……っ」
リュカがドスン、と大地を揺らしながらヤマトの前に立ちふさがる。
彼女の体からは、脱皮前の高熱による「龍のフェロモン」が溢れ出し、ヤマトの理性を猛烈に揺さぶった。
『――緊急事態:伝説級個体の「脱皮不全」を確認。鱗の下の新皮は、通常の10000倍の感度を有しています』
『スキル【神聖なる悦楽の再生】……いえ、今回は【神聖なる剥離(エロティック・ピール)】として限定開放します』
「名前まで変わったぞ!? おい、待て、リュカ、落ち着け――」
ヤマトが彼女の肩に触れた瞬間、指先から「ドロリ」とした濃密な黄金の光が溢れ出した。
それは彼女の浮き上がった古い鱗の隙間に、ヌルリと入り込んでいく。
「――っ!? ぁ、あああああああぁぁああっ!!!」
リュカの口から、里中に響き渡るような、甘く激しい絶叫がほとばしった。
ヤマトの手が鱗の下に滑り込むたび、古い皮がペリペリと剥がれ、その下の未熟な新皮がヤマトの指の熱をダイレクトに吸い上げていく。
「すごい……っ! なにこれ、指が、触れるだけで……っ。かゆいのが、全部『気持ちいい』に変わっちゃう……っ! ああぁ、もっと……もっと奥まで指を入れて、私の鱗、全部剥いでぇっ!!」
ヤマトは必死だった。
一枚、また一枚と、リュカの首筋、背中、そして太ももの付け根のデリケートな鱗を丁寧に「治療」していく。剥がすたびに、彼女の白い肌は艶を増し、あまりの快感に彼女の尻尾がヤマトの足に絡みつき、ギリギリと締め上げる。
「あはっ……あははっ! ヤマト……お前の手……もう、これがないと、私……生きていけない……っ」
数時間後。
神殿の床には、剥がれ落ちた真珠色の鱗が山のように積まれていた。
すべてを剥き出しにされ、つるつると輝く真の姿となったリュカは、ヤマトの膝に頭を乗せ、トロンとした目で彼を見つめた。
「……決めた。私、龍の里を捨てる。ヤマトと一緒に、下界に行く。……ヤマトは私の『専属脱皮師』だもんね? もし、他の女の鱗に触れたら……その女ごと、ブレスで焼き尽くしてあげる……ふふっ」
「(龍族の独占欲、重すぎるだろ!!)」
龍の巫女に懐かれるという、世界最強レベルのヤンデレフラグ。
しかし、里の入り口からは、聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「……いたぞ! 山の頂上に、ヤマトの匂いが充満している!」(ルナリス)
「龍の里だろうが関係ねえ! 略奪だぁ!」(バルバラ)
「聖域への不法侵入……ヤマト様、お仕置きが必要ですわね」(セシリア)
ヤマトは青ざめた。
後ろには、今にも自分を飲み込もうとする龍の少女。
前には、これまでの旅で「絆(執着)」を深めた最強の女たち。
「こうなったら……これしかない! リュカ、ごめん! 【終焉を刻む指先(ラスト・ピリオド・タッチ)】!!」
ヤマトは、新皮になったばかりで最高感度のリュカの「脇腹」と「翼の付け根」を同時に刺激した!
「――っ!? ぁ、う、うそ……もう、だめぇぇえええええ!!」
リュカは目にも止まらぬ速さで全身を硬直させ、天を仰いで絶頂の果てへと突き抜けた。
そのまま幸せそうな、あまりにだらしない笑顔を浮かべて、スヤスヤと爆睡し始める。
「よし! 今のうちに……って、逃げ場がない!?」
絶壁の下からは追っ手たちが登ってきている。
ヤマトの「逃亡生活」は、ついにクライマックス(修羅場)を迎えようとしていた
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