第25話 交渉役は、彼女だった
「私がやる」
ひよりは、
迷いなく言った。
*
「……いいんですか?」
「いいもなにも」
ノートPCを開きながら、
当然のように続ける。
「桐生くん、
交渉向いてないでしょ」
*
否定できない。
*
「向こうは、
“若い個人”だと思ってる」
「だから――」
指を立てる。
「組織っぽく見せる」
*
返信文は、
丁寧で、
少し距離がある。
*
《現在、複数案件を検討中です》
《条件次第では前向きに》
《まずは詳細をご提示ください》
*
(強い)
*
「嘘じゃないよ」
ひよりは言う。
「選べる立場に、
もういる」
*
数時間後。
返事は、
想像以上に早かった。
*
条件が、
上がっている。
*
「……引いた?」
「いや」
ひよりは即答。
「様子見」
*
次は、
制約の洗い出し。
・記事内容の自由度
・予想行為の線引き
・解約条件
・知的財産権
*
「ここ」
ひよりが指差す。
「書いた記事、
二次利用不可ってある」
*
「つまり?」
「自分の商品に
使えなくなる」
*
即、修正要求。
*
ひよりの言葉は、
柔らかい。
でも――
一切、引かない。
*
「ねえ」
ふと、
彼女がこちらを見る。
「桐生くん」
「はい?」
「これ、
仕事だよ」
*
胸が、
少し熱くなる。
*
前世では、
一人で全部やって、
全部失敗した。
*
(今回は、違う)
*
条件は、
ほぼ希望通りで
着地した。
*
「これで」
ひよりが言う。
「“小さな事業”から
“ちゃんとした仕事”に
なった」
*
桐生こういちは、
思う。
金が増えたから、
強くなったんじゃない。
一緒に考える人が、
いるからだ。
*
外部との接点は、
確かに広がった。
でも――
主導権は、
まだこちらにある。
*
次の勝負は、
この関係を
壊さずに、
どう伸ばすか。
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