第23話 刺さる人に、刺さっただけ

 異変は、

 数字じゃなく――

 メッセージから始まった。



「長文、来てるよ」


 ひよりが、

 少し驚いた声で言う。



 画面を開く。


 スクロールが、

 止まらない。



《今まで予想屋にいくら使ったか分かりません》

《初めて“賭けない日”を作れました》

《収支が、プラスで安定しています》



 派手な言葉は、

 どこにもない。


 でも――

 熱がある。



「これは……」


「来たね」


 ひよりが言う。



 翌日。


 数字が、

 静かに跳ねた。



 1日3件だった購入が、

 10件。

 20件。



 広告も、

 宣伝もしていない。


(口コミだ)



 競馬界隈は、

 狭い。


 でも――

 本当に困ってる層は、

 横で繋がっている。



「当てないのに、

 評価されるって」


「珍しいよね」



「でも」


 ひよりは言う。


「一番、

 信用できる」



 価格を、

 少しだけ上げた。


 怖かった。


 でも――

 下げなかった。



「価値は、

 安売りしない」


 教授の言葉が、

 よぎる。



 結果。


 売上は、

 倍になった。



 慌てない。


 増やさない。


 壊さない。



 やることは、

 変えない。



 夜。


 二人で、

 ベランダに出た。



「ねえ」


 ひよりが言う。


「これさ」


「はい」


「普通に、

 お金持ちへの

 道じゃない?」



 俺は、

 即答しなかった。



(まだ、

 入口だ)


 でも。


(確かに、

 道は見えた)



 桐生こういちは、

 確信する。


 これは、

 ギャンブルじゃない。


 設計された増加だ。



 収益は、

 一段、上に行った。


 次は――

 守れるかどうか。

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