第22話 気づけば、少し良い暮らし
変化は、
音もなく進んでいた。
*
最初は、
数字。
3,000円。
8,000円。
15,000円。
*
「増えてるね」
ひよりが、
淡々と言う。
「はい」
*
興奮しない。
それが、
一番の成長だった。
*
次に変わったのは、
時間。
*
バイトのシフトを、
一本減らした。
代わりに――
記事を書く。
分析を、
まとめる。
*
(疲れ方が、
全然違う)
*
昼は大学。
夜は作業。
でも、
前みたいな消耗はない。
*
ある日。
ノートPCが、
急に落ちた。
「……限界か」
*
ひよりが、
即答した。
「買い替えよ」
「でも」
「投資でしょ」
*
新品のノートPC。
値段を見て、
一瞬だけ躊躇する。
でも――
買った。
*
罪悪感は、
なかった。
(これは、
遊びじゃない)
*
食事も、
少し変わる。
学食から、
定食屋。
たまに――
カフェ。
*
「贅沢しすぎ?」
「してない」
ひよりは即答。
「ちゃんと稼いだ分だけ」
*
その言葉が、
心地よかった。
*
通帳を見る。
桁は、
まだ少ない。
でも――
減らない。
*
競馬と、
決定的に違う。
*
桐生こういちは、
思う。
(これが、
積み上がる感覚か)
*
前世では、
知らなかった。
*
金持ちになるって、
派手なことじゃない。
生活のストレスが、
少しずつ消えていくことだ。
*
ひよりが言う。
「ねえ」
「はい?」
「このまま行ったらさ」
「うん」
「私たち、
普通に――
勝っちゃうね」
*
その言葉に、
俺は笑った。
*
まだ、
途中だ。
でも――
もう、
戻らない。
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