第21話 最初の一円は、静かだった
通知音は、
やけに小さかった。
*
「……来た?」
ひよりが、
俺の画面を覗き込む。
「来ました」
声が、
少しだけ震えた。
*
売上。
3,000円。
*
派手じゃない。
万馬券でもない。
でも――
これは、
賭けじゃない。
*
「……現実だね」
ひよりが呟く。
「はい」
*
競馬で稼いだ金は、
いつも“風”みたいだった。
吹いて、
消える。
*
でも。
この3,000円は、
積み上がる重さがある。
*
「内訳、見よう」
ひよりは、
即座に切り替える。
「どこから来たかが大事」
*
購入者は、
匿名。
でも、
滞在時間は長い。
(ちゃんと、
読まれてる)
*
「当たる方法じゃないのに」
「だから、です」
*
一攫千金を求める人は、
来ない。
でも――
残る人が来る。
*
その夜。
二人で、
コンビニへ行った。
理由は、
ただ一つ。
*
「乾杯しよ」
ひよりが言う。
「お酒は?」
「ダメ」
「大学生」
*
レジ袋の中は、
炭酸と、
少し高めのスイーツ。
*
「これが」
俺は言う。
「最初の売上です」
「うん」
*
静かな乾杯。
*
金額は小さい。
でも――
再現性は、確認できた。
*
それが、
何よりも大きい。
*
桐生こういちは、
確信した。
このやり方なら、
増える。
焦らず、
確実に。
*
生活は、
まだ変わらない。
でも――
未来の解像度が、
一段上がった。
*
3,000円は、
ただの数字じゃない。
最初の証拠だった。
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