第19話 勝ち方は、売れるらしい
アイデアは、
ひよりの何気ない一言からだった。
*
「ねえ、桐生くん」
「はい?」
「それさ」
ノートに並んだ数字を指差す。
「人に教えたら?」
*
一瞬、思考が止まる。
「……競馬、ですか」
「うん」
「でも」
すぐに首を振る。
「予想を売るのは、
リスクが高い」
「知ってる」
ひよりは即答した。
「だから、
“当て方”じゃなくてさ」
*
「考え方」
その一言で、
視界が一気に開けた。
*
(なるほど)
俺がやってきたのは、
予想じゃない。
・レースを選ぶ
・賭けない勇気
・資金管理
・メンタル制御
(これ、競馬じゃなくても使える)
*
帰宅後。
ホワイトボードに書き出す。
「再現できる勝ち方」
*
内容は地味だ。
でも――
地味だからこそ、
価値がある。
*
「勝率を上げる方法」
じゃない。
「負けない構造の作り方」。
*
競馬界隈は、
派手な言葉が溢れている。
一発逆転。
万馬券。
神予想。
(そこに、
俺の居場所はない)
*
あるのは――
静かな需要。
*
「教材」
「ブログ」
「講座」
ひよりが横で言う。
「全部、
顔出ししなくても
できるよね」
「……できますね」
*
しかも。
大学生。
データ。
資金管理。
(肩書き、作れる)
*
教授の言葉が、
頭をよぎる。
「説明できる成功」。
*
「ひより」
「なに?」
「俺、
やってみます」
*
「失敗したら?」
「撤退します」
即答だった。
「競馬と同じです」
*
ひよりは、
少しだけ驚いてから笑った。
「……ほんと」
「?」
「桐生くんって、
起業向きだね」
*
その夜。
俺は、
初めて“事業計画”を書いた。
売上予測。
リスク。
撤退ライン。
(賭けてない)
でも。
(勝負は、してる)
*
桐生こういちは、
ようやく気づいた。
競馬で得た一番の財産は、
金でも、予想力でもない。
負けない設計思想だ。
*
それは――
売れる。
静かに。
確実に。
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