第17話 大学生のままで、いられる期限
講義中。
教授の声が、やけに遠く感じた。
*
「――就職とはですね」
黒板に書かれる文字。
(就職、か)
前世では、
深く考えなかった言葉。
*
単位を取って、
流れで内定をもらって、
流れで社会に出た。
そして――
失敗した。
*
(今回は、違う)
そう思っていたはずなのに。
*
ノートを見る。
数字じゃない。
理論でもない。
**「将来」**という、
曖昧すぎる二文字。
*
講義後。
ひよりと、学食で向かい合う。
「どうしたの?」
「……大学生って、
いつまでだと思います?」
ひよりは、箸を止めた。
*
「急に重い」
「ですよね」
*
「でもさ」
ひよりは、少し考えて言う。
「期限があるから、
考えるんじゃない?」
*
その通りだ。
学生は、
“猶予”がある立場。
でも――
無限じゃない。
*
「競馬」
「はい」
「投資とか、分析とか」
「はい」
「全部、
“大学生の遊び”で
済まされるの、今だけだよ?」
*
その言葉が、
胸に刺さった。
*
(肩書きは、盾だ)
今は守ってくれる。
でも――
いずれ消える。
*
家に帰って、
将来設計を紙に書く。
・卒業まで
・卒業後
・競馬との距離
・ひよりとの未来
(前世では、
書かなかった項目だ)
*
就職。
起業。
投資一本。
どれも、
正解にも、
地雷にもなる。
*
「……焦るな」
独り言が、
やけに大きく聞こえた。
*
桐生こういちは、
ようやく理解した。
今は、稼げているだけ。
でも――
生き方は、
まだ決まっていない。
*
競馬で学んだのは、
勝ち方じゃない。
引き際を考える力だ。
*
大学生でいられる時間は、
限られている。
だからこそ。
(この期間を、
一番うまく使う)
それが、
今の俺の
最大の勝負だった。
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