第16話 競馬だけじゃ、足りない
きっかけは、
本当に些細な一言だった。
*
「桐生くんさ」
ひよりが、コーヒーを飲みながら言う。
「もし、競馬がなかったら
何してたと思う?」
「……考えたこと、なかったですね」
正直な答えだった。
*
競馬は好きだ。
勝てている。
でも――
一生、それだけで行けるかは別だ。
*
(前世でも、ここで躓いた)
勝てなくなった瞬間、
何も残らなかった。
*
「競馬はさ」
ひよりが言う。
「すごいけど、不安定だよね」
「はい」
否定できない。
*
その夜。
俺はノートを開いた。
競馬以外で、
自分が“使えるもの”。
・データ整理
・資金管理
・感情コントロール
・再現性のある判断
(……全部、競馬由来だな)
*
でも、だからこそ。
(転用できる)
*
投資。
分析。
情報の整理。
競馬ほど即効性はない。
でも――
安定する。
*
「ひより」
「なに?」
「少しずつ、
競馬以外も始めようと思います」
*
「……いいと思う」
ひよりは、即答だった。
「桐生くん、
“一発屋”向いてないし」
「褒めてます?」
「全力で」
*
小さく始める。
無理しない。
欲張らない。
競馬と同じだ。
*
大学の講義で、
経済の話を聞きながら思う。
(今なら、分かる)
数字の裏にある、
人の心理。
*
桐生こういちは知っている。
本当の安定は、
勝ち続けることじゃない。
勝てない日でも、
崩れないことだ。
*
競馬は、武器。
でも――
人生は、総合戦。
次のフェーズに、
足を踏み入れた。
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